新幹線をはじめとする鉄道インフラ輸出の動きが活発になってきています。日本とインドは昨年12月に行われた首脳会談で、インドの高速鉄道計画に新幹線方式を導入することを正式に合意しました。一方、インドネシアの高速鉄道事業の受注競争では、日本が先行していたにもかかわらず、中国に逆転されました。
JR東海を中心に展開しているのが米国の高速鉄道計画です。一番実現に近いのが、ダラス~ヒューストンを90分で結ぶ計画で、JR東海の新幹線システムを採用し、東京オリンピックの翌年2021年にはN700系がテキサスを走る予定です。また、東部のワシントン~ニューヨーク間は安倍首相からオバマ大統領に提案した超電導リニアで結ぶ計画が進んでいます。実現すれば日本しかできない技術を米国の人々が毎日通勤などで体験できることになります。
対談の中盤で、櫻井キャスターが「インフラ輸出が安倍政権で力強く展開されていると実感できますか」と質問しますと、葛西敬之JR東海代表取締役名誉会長は「鉄道だけで儲けるのではなく、高速鉄道は手を握るべき国との強い関係を作るツールです。国と国との関係が強化されることで貿易全般でも、安全保障でもプラスになるでしょう」と語りました。
また、櫻井キャスターが日本と中国の新幹線技術の違いを尋ねますと、葛西名誉会長は「中国の高速鉄道は2世代前の700系をベースにしており、安全性の“ゆとり”がありません。285キロを出しうる車両を中国国内では330キロの高速で背伸びをして走らせて、中国が発明したと言っている」と厳しく指摘しました。
対談後に櫻井キャスターは「鉄道事業を国家の事業ととらえているだけでなく、それを実行していることが印象的でした。米国での事業を技術者の育成、関連事業における受注の広がりに加えて、日米関係の強化、対中牽制につなげる考え方を実践なさっていることでした」と述べています。
≪動画インデックス≫
1.インド新幹線受注は日本にとってどんな戦略的意味があるのか
2.台湾の新幹線採用は鉄道事業を超えた国家戦略的な意味があった
3.インドネシア新幹線を中国は本当に実現できるか
4.新幹線N700系がテキサス州と颯爽と走る日
5.超電導リニア新幹線がWDC~NYを走る
6.東部の北東回廊は「日米同盟のショーケース」になる
7.カリフォルニア高速鉄道は欧州型新幹線が在来線を走る
8.新幹線輸出は日本の国家戦略の下支えとなる
9.日本と中国の新幹線技術を比較する
10.中国の新幹線は安全性に“ゆとり”がない
11.中国に新幹線システムを教えれば日本の足元を崩すことになる
12.世界最高の新幹線技術が輸出国側のニーズに合うとは限らない
13.インフラ輸出はアベノミクスを支える力になるのか
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葛西敬之
JR東海代表取締役名誉会長
1940年生まれ。1963年東大法学部卒、日本国有鉄道入社。1969年米国ウィスコンシン大学経済学修士号取得。1987年東海旅客鉄道株式会社発足、同社取締役。1995年代表取締役社長、2004年代表取締役会長。2005年東京大学先端科学技術研究センター客員教授、2006年国家公安委員、2012年内閣府宇宙政策委員会委員長に就任。2014年代表取締役名誉会長(現職)。著書に『未完の国鉄改革』(東洋経済新報社)、『国鉄改革の真実~宮廷革命と啓蒙運動~』(中央公論新社)、『明日のリーダーのために』(文藝春秋)など多数。2013年に正論大賞を受賞。
※ プロフィールは放送日2016.01.08時点の情報です