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Vol.194 一般公開

民主主義の隙を狙う中露独裁国家の野望

欧州は秩序崩壊でも、アジアは求心力で結束

2016.07.08 58分

 イギリス「EU離脱」の衝撃は、ヨーロッパ各国に波及し「自国第一主義」の風潮が強まり、第2次大戦後の世界秩序が緩やかに崩壊を始めているように見えます。経済面でも、日米欧の銀行株が急落しており、イタリアなど金融機関の不良債権が膨らみ、欧州危機の再発が懸念されています。
 対談の中で興味深かったのは田久保忠衛氏が紹介したレーガン元大統領の特別補佐官だった人物が描いた『繁栄の代償』(the price of prosperity)という本の紹介です。豊かになった国は出生率が減り、移民や難民を利用することになる。移民が来るとその国の労働者は不安を感じ、政府は福祉にお金を出す。愛国心はだんだん薄れ、民族間の摩擦が起こるという内容です。まさに米欧の現在の状況を明快に言い当てています。
 この民主主義の混乱ぶりを高笑いしている2人の指導者がいます。ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席です。民主主義が必ずしも良い結果を残さないという事実は、独裁国家にとっては好都合で、力ずくの無法行為を誘発し、より危険な方向に進む可能性も出てきました。壊れ始めている自由主義の世界秩序を守り抜くことができるのでしょうか。
 櫻井キャスターは「民主主義国家と独裁国家のせめぎあいは、1党独裁の強権主義を発動できる側が効率よく戦える。世界の地殻変動で潮目が変ったロシアや中国などの動きに、日本や米国も何をするべきかを考えなければならない」と問題を提起しました。田久保氏は「戦後やってきたインターナショナリズム、同じ価値観を共有する国々が同盟を見直して、新しい同盟にねじを締め返す作業が必要だ。その中で日本は憲法のマントに隠れて何もしませんではなく、存在感を示す方向を参院選の課題にしたらと思う」と憲法改正への意気込みを語りました。櫻井キャスターも「ヨーロッパ各国はナショナリズムが強まり、バラバラの方向で動いて遠心力で離れようとしている。反対にアジアは中国に対しASEANの小さな国々が集まり、地域安全保障の枠組みで求心力を強めていくことが不可能でない」とアジアの中で日本が取り組む方向を示しました。

≪動画インデックス≫
 1.NATO創設時の精神「米国を入れ、独を抑え、ソ連を閉め出せ」
 2.離脱派リーダー・ジョンソン前ロンドン市長は必ず復活する
 3.ハース氏の指摘した「民主主義国に共通した現象」はトランプ氏の主張と同じ
 4.先進国の「繁栄の代償」は豊かさ→少子高齢化→人手不足→移民増大→異民族間の摩擦
 5.「内向き」民主国家と「外向き」独裁国家
 6.南シナ海仲介裁定を「紙くず」と言った戴秉国元国務委員の変貌の背景
 7.世界秩序の崩壊を前に、日米欧はタガを締めなおす時
 8.ヨーロッパは崩壊する遠心力、アジアは結束する求心力
 9.ウクライナでも南シナ海でも既成事実を積み上げた国が勝つ
10.ドイツにもロシアとの衝突を避ける敗北主義が広まる
11.キャメロン去り、オバマ消え伊勢志摩サミット後に残るのは安倍首相
12.日本が世界で指導力を発揮すべき時が来た

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田久保 忠衛

田久保 忠衛
外交評論家,国家基本問題研究所副理事長

1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒、時事通信社外信部長、編集局次長を経て、杏林大学社会科学部教授。アメリカ外交、国際関係論が専門、1996年第12回正論大賞受賞。現在、公益財団法人「国家基本問題研究所」副理事長、杏林大学名誉教授。著書に『ニクソンと対中国外交』、『激動する国際情勢と日本』、『新しい日米同盟―親米ナショナリズムへの戦略』、『早わかり・日本の領土問題-諸外国と何をモメているのか』など多数。

※ プロフィールは放送日2016.07.08時点の情報です

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