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Vol.217 一般公開

最強権威が分析する安倍プーチン会談

北方領土交渉はなぜ1ミリも動かなかったか

2016.12.16 96分

 12月15日に山口県長門市で、16日には東京で安倍・プーチン会談が行われました。共同記者会見で安倍首相は、北方4島での「共同経済活動」について、日ロ双方の立場を害さない形で実施に向けた協議を始めることで合意したと述べ、(共同経済活動は)平和条約締結に向けた重要な第一歩だと強調しました。しかし、北方領土問題について言及は全くなく、領土交渉はまさに1ミリも動かなかったとみられます。
 緊急特番『最高権威が分析する安倍・プーチン会談』の中で、櫻井キャスターは首脳会談や共同記者会見についての感想を求めました。まず田久保忠衛氏(国家基本問題研究所副理事長)は「日本側に感情的な思い入れが強かったし、交渉を急ぎすぎたと思う」と述べました。木村汎氏(北海道大学名誉教授・2016年正論大賞受賞)は「日本側の完敗です。マイナスが多く、今後に禍根を残す。安倍さんの後に日ロ交渉をやるとしたらマイナスの遺産になるような踏み出し方をした」と厳しい評価を下しました。
 特番は90分にわたり、「外交」と「ロシア研究」の最高権威による厳しくも建設的な評価や意見が語られました。特番の最後に櫻井キャスターが「北方領土問題の解決はどうしたらできると思うか、日本には活路を開くだけの力と知恵はあるはずだ」と問いますと、木村氏が即座に「タイミングです」と答えました。さらに「トランプ政権を見極め、トランプと習近平との関係がどうなるか情勢を判断し、3~4年後すればロシア経済は外貨準備金が底をつき、経済制裁、原油安、ルーブル安がボディブローのように効いてきます。今年動いてしまうのは焦りすぎ、交渉学のポイントはタイミングが熟する時に前髪を掴むことです」と諭すように語りました。田久保氏は「安倍首相が対ロ政策を始めてから、トランプ氏の勝利やシリア情勢など国際情勢があまりに速いテンポで変わってしまった」と語り、国際情勢がプーチン大統領に有利な形で動いたことを指摘しました。

≪動画インデックス≫
 1.田久保忠衛氏「安倍首相に感情的な思い入れが深すぎた」
 2.木村汎氏「日本側の完敗で、これからに禍根を残す」
 3.花田紀凱氏「日ソ交渉は焦らず長期的に取り組めば良い」
 4.櫻井よしこキャスターが駆け足で説明する「北方領土交渉の経緯」
 5.日ソ交渉での安倍首相の「未来志向的な発想」は危険だ
 6.「2島先行返還論」は「2島ぽっきり返還論」
 7.エドワード・ルトワック「安倍首相はチャーチル級の戦略家」
 8.プーチンの意思を忖度して働く部下は、しばらくすると出世する
 9.今回の交渉は2島を返さない平和条約実現の第1歩に過ぎない
10.日ソ共同宣言に書いてなくとも「引き渡す」は主権付きで返すことだ
11.国際文書がヤルタ協定ならば当事国がいない合意に日本は縛られる必要はない
12.「北方4島占領」と「クリミア併合」は同じこと
13.日本のロシアへの経済制裁が形だけなら、最も強い制裁に変えるべきだ
14.トランプ政権にはトランプを含めて3人の親ロシア派がいる
15.国際情勢の大変化がプーチン大統領の交渉力をさらに強くした

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田久保忠衛

田久保忠衛
外交評論家,国家基本問題研究所副理事長

1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒、時事通信社外信部長、編集局次長を経て、杏林大学社会科学部教授。アメリカ外交、国際関係論が専門、1996年第12回正論大賞受賞。現在、公益財団法人「国家基本問題研究所」副理事長、杏林大学名誉教授。著書に『ニクソンと対中国外交』、『激動する国際情勢と日本』、『新しい日米同盟―親米ナショナリズムへの戦略』、『早わかり・日本の領土問題-諸外国と何をモメているのか』など多数。

木村汎

木村汎
北海道大学名誉教授

1936年京城現ソウル生まれ。1960年京都大学法学部卒、68年にコロンビア大学大学院に留学し哲学博士号を取得した。77年に北海道大学法学部教授に就任し、同大学スラブ研究センター教授、国際日本文化研究センター教授を歴任した。2002年から北海道大学名誉教授、拓殖大学海外研究所教授現在、客員教授。著書に『遠い隣国―ロシアと日本』、『現代ロシア国家論-プーチン外交とは何か』、『プーチン〔人間学的考察〕』、『プーチン〔内政学的考察〕』など多数。父は民法学者で京都大学名誉教授の木村常信、姉は推理小説作家の山村美紗。2016年に瑞宝中綬章受勲、第32回正論大賞を受賞した。

※ プロフィールは放送日2016.12.16時点の情報です

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