闘うコラム大全集

  • 2016.10.20
  • 一般公開

韓国教授、慰安婦=性奴隷説を否定

韓国のソウル大学経済学部教授、李榮薫(イ・ヨンフン)氏が「日本軍慰安婦は単なる『軍部隊の公娼』」、「軍や警察に『不正に拉致』されたという主張は、ほとんどが口述記録であり、客観的資料としての信憑性がない」などと述べ、慰安婦強制連行説及び性奴隷説を否定した。

 

これは、韓国近現代史のネット連続講義「李榮薫教授の幻想の国」の最終回、「第12回慰安所の女性たち」の内容である。2時間超の講義は、8月22日と23日に公開された。

 

李氏は韓国近代経済史研究の第一人者といってよい。氏はこれまでに『大韓民国の物語』(文藝春秋)、『代案教科書』などの「問題作」を世に問うてきた。実証的研究に基づく著作は、いずれも日本に対して驚く程、公正で、それ故に韓国で批判された。同時に、親北朝鮮の左翼的教科書を真っ向から否定し、挑戦した『代案教科書』は驚異的多数の韓国人が読んだ作品でもある。

 

かつて私は氏に尋ねたことがある。如何にして観念論やイデオロギーの呪縛を逃れ得たのかと。氏は、自分が政治学者ではなく、客観的な数字を基に研究する経済学者であることが、イデオロギーの呪縛を回避できた理由だと考える旨を語った。

 

今回のネット講義も実証的で公正である。日本では未発表の『日本軍慰安所管理人の日記』や元慰安婦の証言など、引用された史料から見えてくるのは、挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)や『朝日新聞』の主張する「慰安婦強制連行説」や「性奴隷説」の明確な否定である。


「1938年以降に軍慰安所市場が開かれて、多くの韓国人が慰安所を直接経営した。(女性たちは)慰安婦として働くために、中国や台湾、ビルマなどで、軍部隊について移動した」「女性たちは主に『人身売買』(親がお金を貰って娘を売るなど)や『就職詐欺』の形で慰安婦になるのが一般的だった」と、李氏は率直に語っている。


働く自由、廃業の自由

 

詳しい記録が残されている元慰安婦、文玉珠(ムン・オクジュ)氏の例も引いて、女性たちは公娼制度の下で法的に営業許可を受けなければ働けなかったこと、契約期間満了時点で廃業申請すれば帰宅できたことを李氏は指摘している。文氏が自身の一代記で、「病気」を理由に廃業を申請して、日本軍の許可を得たと披露しているが、こうしたことは当時を知る人々にとっては常識である。

 

それでも性奴隷だったと言い張る人々は強弁するだろう。廃業申請が容易に許可されたはずがないと。李氏は『ビルマ戦線の日本軍慰安婦ムン・オクジュ』や前述の『管理人の日記』などの史料に基づいて、「最前線でない場合は、だいたい受け入れられた」「契約期間中に特定の区域を離れることができないというレベルで身体の自由を奪われるのは、当時の公娼制においては特別(例外的)なことだった」と語る。

 

働く自由、廃業の自由に加えて女性たちは日々の生活でも、月2回の休日と休日に勤務地を離れる自由があった。「慰安所での仕事は『高労働高収入』の産業だったので、普通の数百円程度の借金では、人身を拘束することはできなかった」と李氏。

 

ちなみに前出の文氏は、家に5000円を送り、2万6000円を貯蓄していたことで知られる。2万6000円は当時の相場で家を26軒も建てられる金額だった。

 

中韓両国は、慰安婦は日本軍によるひどい暴力の被害を受けたと主張するが、李氏はこの点も否定する。


「広く知られている『マンダレー慰安所の規則』は慰安所に出入りする将校と兵士は必ず階級章をつけなくてはならず、いかなる場合でも罵ったり暴力をふるってはならないという点を明示している」「パトロールの将校と娯楽指導官は、慰安所での軍規の徹底を厳密に実施しており、衛生的な面では毎週1回慰安婦の身体検査を実施していた」という。

 

では慰安所で軍規はどの程度まで徹底されていたのか。李氏が挙げた事例、文氏の実体験は驚きであろう。


「慰安所で、ある日本軍人が激しい乱暴をした。ムン(文)さんはもみ合いの末に、日本刀を奪い、その兵士を刺し殺した」

 

女性の方が日本兵を軍刀で殺害したというのだ。で、殺した文氏はどうなったのか。李氏は続ける。


「(文さんは)兵士の不当と自らの自己防衛を主張し、無罪になった。日本軍の軍法裁判所が無罪判決を下したのである」

 

李氏はさらに考察を深めている。弁護士の戸塚悦朗氏が考えついたとされる性奴隷という言葉はいまや世界に流布されているが、奴隷の定義は慰安婦に当てはまらない。奴隷には「法的人格」は認められないが、慰安婦には認められていたからだ。李氏はそれを次のように説明する。


良識の声の表明

 

過去の米国の黒人奴隷は殺人現場を目撃しても法廷で証言できなかった。奴隷は法的に人間ではないからである。対照的に慰安婦の立場は、文氏の事例に見られるように全く異っていた。奴隷であれば、裁判を受ける権利すらないが、彼女は自己防衛と兵士の不当を主張し、現実に無罪になったのである。従って李氏は「日本軍慰安婦性奴隷説」を見直すべきだと結論づけている。

 

朝鮮人慰安婦の数についても、氏は韓国が主張する20万人説を退け、最大でも5000人だったと根拠をあげて示し、韓国国民にざっと次のように呼びかけている。


「私たちが先進国になるためには、すべての幻想を消さなければならない。まず外交的な葛藤にまでなった歴史から解放されてこそ、本当の意味で近代人になれる」

 

李氏の指摘を肝心の韓国国民はどう受けとめたか。かつて氏はその主張の客観性と公正さ故に反日勢力の怒りを買い、「親日派」のレッテルを貼られて、厳しく糾弾された。今回、氏は、これまで以上に率直公正に歴史の真実を語っている。

 

東京基督教大学教授、西岡力氏がハングルの飛び交うネットを分析した。


「今回は様子が違います。ネットに上げてすでに50日ですが、炎上していません。昨年末の日韓合意後、韓国の対日認識が確実に変化しています。生存する元慰安婦の8割近くが、日本出資の資金を受けとりたいと表明し、挺対協など反日運動団体の影響力が落ちているのです」

 

官房副長官の萩生田光一氏は歴史の真実を共有しようとする人々に期待する。


「これまで抑制されてきた良識の声が表明されたと受けとめています。日韓双方が歴史に誠実に向き合うことで、両国はもっと歩み寄り、支え合えるはずです」

 

だからこそ歴史の真実の情報発信を強化することが重要である。

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