闘うコラム大全集

  • 2016.11.03
  • 一般公開

沖縄米軍用地を中国資本が買っていた

『週刊新潮』 2016年11月3日号

日本ルネッサンス 第727回


日本の国土を外国資本が買い漁っている事実は旧聞に属する。日本政府が、自民党政権の時も民主党政権の時も有効な対策を講じてこなかったのも周知のことだ。外国資本に好き放題の国土買収を許してきた日本は異常だが、それでも沖縄の米軍用地の1割を中国人が買収していると聞けば、心底、驚かざるを得ない。

 

10月21日、インターネット配信の「言論テレビ」で中田宏元衆院議員が語った内容は、日本国の土台が浸食されているというものだった。

 

氏は国会議員だった2013年、対馬を調査して驚いた。自衛隊基地周辺の土地の殆どが韓国資本に買収され、基地は韓国人の土地にぐるりと囲まれていた。万一の時、これでは自衛隊の動きが阻止されかねない。その危機的状況に対処するべく、氏は土地売買に関して規制する法案を国会に提出した。


「私の法案は廃案にされました。それから3年、事態はより深刻です。沖縄の米軍用地の10%が中国資本に買われているのです」

 

中国は尖閣諸島を自国領だと主張し、沖縄に関しても日本の領有権に異議を申し立てる。彼らの真の狙いは、いずれ沖縄全体を中国領とすることにあると見てよいだろう。沖縄に迫る中国の脅威を実感するからこそ、わが国は日米同盟を強化すべく努力してきた。米軍への基地提供にも心を砕いてきた。

 

沖縄の米軍用地は約2万3300ヘクタール。内、国有地と県、市町村有地が約1万5700ヘクタール、残りの約7600ヘクタール、全体の約33%が民有地だ。


「この民有軍用地の約3分の1を中国資本が買い取っているのです」と、中田氏は説明する。

 

事実なら、まさしくブラックジョークではないか。中国人の所有とされる民有軍用地は2500ヘクタール強になる。坪数で756万2500。沖縄軍用地の借地料は政治的配慮も働いて日本一高い。場所によって異なるが那覇軍港なみの最高レベルの賃料なら坪1万9000円、浦添市などでは坪6000円だと、「産経新聞」の宮本雅史氏が『報道されない沖縄』(角川学芸出版)で報じている。


国土は即ち国

 

坪6000円として中国人の手に渡る賃料は453億7500万円にもなる。防衛省に問い合わせたが回答が得られなかったために、果たしてこの数字が正しいのか否か、判然としない。しかし、少なくとも百億円単位の日本国民の税金を、毎年、日本政府が中国人に支払っている可能性がある。

 

中田氏は、防衛省も中国人による軍用地の取得については知っているのではないかと語る。政府や地方自治体がこうした事実をどれだけ把握しているかについて、沖縄県石垣市議会議員の砥板芳行氏のコメントが興味深い。私の取材に対して氏は、当初こう語った。


「中国資本が軍用地を買っているとは、余り知りませんでした」

 

しかし、少し時間をかけて調べたあと、氏はこう語った。


「そのようなケースがあっても中国人は表に出てきません。しかし、注意深く情報を精査すれば、確かに中国人の動きが見えてきます」

 

中田氏が指摘した。


「竹富町が所管する離れ小島にウ離島(ウばなりじま)というのがあります。広さ1万坪の岩だらけの無人島で、水もありません。この島を中国が5億円という法外な価格で買おうとしたのです」

 

中国はこの島をなぜ買おうとしたのか。現地の人は、考えられる理由として、海上保安庁の船が尖閣諸島海域に向かうとき、海保の船の動きを逐一監視できる場所がウ離島であることを挙げた。売却話は、しかし、メディアの知るところとなって、結局、立ち消えになった。

 

砥板氏が説明した。


「いまこの島は地元の不動産業者が管理しています。安全保障上、大事な所にあるだけに監視を続けることが重要です」

 

このような水もない島を買う理由が経済的要因にあるとは思えない。どう見ても安全保障上の理由であろう。事実、島を買いにきたのは「中国国際友好連絡会」(友連会)という組織だった。人民解放軍(PLA)の工作機関と考えてよい組織だ。

 

彼らは宮古島市の下地島空港周辺の土地も買いたいと申し出た。同空港には3000メートルの滑走路がある。中国に対処するために、下地島に自衛隊の拠点をつくることが大事だという指摘は多い。それだけ重要な空港周辺の土地をPLA関連組織が買いにきたのである。

 

国土は即ち国である。国土があって、そこに人が住み、経済活動をしてはじめて国が形成される。それを守ってはじめて独立国と呼べる。国の基(もとい)である国土を、わが国は今日に至っても外国資本に買われるに任せている。1平方ミリでさえも外国人に売らないのは中国だけではない。フィリピンも外国人には売らない。なのになぜ、日本政府は有効な手を打たないのか。国政レベルの動きは信じ難い程鈍いが、地方自治体の憤りは強い。全国市長会会長代理で山口県防府市長の松浦正人氏が語る。


外国人土地法


「10月19日に、北海道旭川市で北海道市長会が開かれ、皆さん憤っておられました。地方自治体の条例だけでは、外資の日本国土買収は全く防げません。これ以上外国人に土地を買われてしまうわけにはいかないと、革新色の強い市長さんも含めて全員の意見が一致しました。来年1月中に案をまとめて、政府に強く申し入れることになりました」

 

市町村の行政は住民生活に直結する。行政の現場には山林や水源地、防衛施設周辺の土地を中国人が買い付けようと蠢く情報が入ってくる。殆どの首長は山林や水源地の所有者を説得して外国人への売却を思いとどまらせようとする。しかし、悪貨は現金でやってくる。その現金に動かされる人もいる。

 

しかし、国土を他国に売ってしまっては、もう戻ってこないのだ。にも拘わらず、日本政府が規制できずにきた理由のひとつに、95年のWTO(世界貿易機関)加盟時に外務省が犯した致命的なミスがある。

 

他の加盟国がおよそ全て、その国なりの留保をつけて加盟したのに対し、日本は無条件で加盟したのだ。だから今更、国土は外国資本に売らないとは言えないのである。当時の外務省の目は節穴だったが、現在の国会議員にもできることがある。日本には大正時代の外国人土地法がある。そこには相互主義と、国防上の観点から土地取引は制限できることが書かれてある。相手国が日本人に土地を売れば日本も売るということだ。国防上の懸念ゆえに取引を制限できるということだ。その戦前の法律を現在に通用させるための工夫をすればよいだけである。いま、政治がその工夫をしないのであれば、それは国民と国家に対する背信である。

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