闘うコラム大全集

  • 2017.04.08
  • 一般公開

森友学園問題で脇の甘さはあるものの社会の一隅に光を当て続けた昭恵夫人

『週刊ダイヤモンド』 2017年4月8日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1177
 


森友学園問題で首相夫人の安倍昭恵氏を国会に証人喚問すべきだと野党が主張すれば、片や自民党側は証人喚問は刑事罰に相当するかもしれない行為をした人物に対するもので、今回の事例は全く該当しない、加えて夫人は公人ではないと、反対する。

 

私は夫人の証人喚問は必要ではないが、夫人はやはり公人だと思う。

 

ファーストレディが多方面で活躍し夫を助けるのは、諸外国では当然だ。日本でも首相夫人はさまざまな役割を果たしてきた。目立つことを是とせず選挙区の守りに徹した人もいる。鳩山由紀夫氏の幸夫人や、菅直人氏の伸子夫人のように、流行最先端の装いや夫への厳しい物言いで注目された人もいる。三木睦子氏は夫の武夫首相より頼り甲斐があると評価された。

 

そうした中、昭恵夫人は際立って活動的だ。約30団体の名誉職につき、居酒屋まで経営する。その自由な活動に対して一部に批判があるのは確かだが、それでも夫人の貢献は前向きに受けとめられてきたのではないか。

 

私は夫人と親しいわけではないが、あるとき、興味深いことがあった。並んで車寄せまで歩いていたとき、夫人がポツリと言った。


「私はリベラルですから」

 

本当に短い時間の中での一人言のような発言に、私は、家庭でも保守とかリベラルとか言っているのかしらと、ふと思い、おかしくなって思わず、微笑をもらした。

 

原子力発電所反対は確かにリベラル派の立ち位置だ。だが、そんな夫人を安倍首相は国会で「信念を大事にする女性(ひと)」と語っている。首相が夫人の感性をそのまま受け入れ、大事にしている様子が伝わってくる。夫人を家庭内野党と言う人もいるが、保守やリベラルの分類など、仲良し夫婦の前では何程のものか。相補い合う要素にすればよいだけだ。

 

東日本大震災の被災地に行けば、行く先々に夫人の足跡がある。人々や日本のために行動したいという想いが伝わってくる。夫人のひたむきな行動に地元の人たちが期待しているのは明らかで、評判も頗るよい。まさに夫人の面目躍如であろう。

 

昨年5月の伊勢志摩サミットの折、オバマ米大統領(当時)が広島を訪れた。大統領は手ずから折った鶴を原爆資料館に残し、安倍首相と共に原爆死没者慰霊碑で鎮魂の祈りを捧げた。

 

12月27日には、安倍首相がハワイの真珠湾を訪れた。

 

大統領の広島訪問も首相の真珠湾訪問も、賛否両論の微妙な緊張の中で行われたが、終わってみれば多くの人々が心から安堵した。日米両国民の胸の中の、歴史の深く痛ましい傷を癒やす確かな一歩となったからだ。両首脳の行動は新たな歴史を刻む貴重なものだと、人々は感じたはずだ。

 

日米首脳による相互の鎮魂の祈りを実現させた背景に、昭恵夫人の働きがあったと思う。夫人は駐日米大使のキャロライン・ケネディ氏と信頼を育み、2人は共に泥田に入り、田植えに汗を流した。日本の原点である農耕社会、日本人の感性の源流といってよい米作文化を体験して、大使の日本への想いや理解は一層深まったことだろう。それがオバマ大統領に伝えられ、広島での祈りに結晶したのではなかったか。

 

首相訪問前に1人、真珠湾を訪問した昭恵夫人は一方で、真珠湾へと首相の背中を押しもしたことだろう。

 

森友学園問題で批判を浴びる脇の甘さは確かにある。かといって昭恵夫人が社会の一隅に光を当て続けてきたことへの評価は変わらない。今回の事例で私たちが認識したのは、首相夫人という公人の行動を支え、また大きく外れないように守る仕組みが日本にはないことだ。それをどのように作っていくのか、今回の禍を奇貨として皆で考えるのがよいのではないか。

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