闘うコラム大全集

  • 2017.09.16
  • 一般公開

日本も周辺国も事態は戦後最大の危機 国防力強化と憲法改正に取り組むべき

『週刊ダイヤモンド』 2017年9月16日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1198
 


3日に断行された北朝鮮の水爆実験には世界が驚き、広島の原爆の約10倍という凄まじい威力だったことに多くの日本人は恐怖心を抱いたことだろう。


北朝鮮の労働新聞は、水爆を着弾させずに高空で爆発させ、広大な地域に電磁パルス(EMP)攻撃を加えることも可能だと報じた。中国など大国が秘密裡に備えているこうした悪の極みの能力を、これみよがしに喧伝するのは、逆に金正恩氏の恐怖心の裏返しか。


「統一日報」論説主幹の洪熒(ホン・ヒョン)氏は、EMP攻撃は米国のトランプ政権を刺激せずにはおかないと警告する。EMP攻撃は直接人間を殺害するものではないが、コンピューターシステムなどのハイテク装置を麻痺させて社会の機能を全面的に喪失させる。飛行場の管制機能は失われ、電気、ガス、水道などのインフラ機能、病院を含めた民生を支える生活機能全ての喪失で、米国では約400万人の犠牲者が出るというシミュレーションさえある。


「こんな許容できないことまで口にしたからには、北朝鮮のレジームチェンジが始まると思います」と洪氏。


韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官(大臣)は9月4日、国会の国防委員会で金氏の暗殺を担う「斬首部隊」を12月1日に創設するとし、現在それに向けての「概念を確立中」だと語った。


暗殺部隊創設は朴槿恵前大統領のときから始まっていた。韓国国防省は今年7月には平壌攻撃の仮想映像を公開しており、宋氏は12月の部隊創設に伴い、即、戦力化が可能だと述べた。


しかし、韓国政府の斬首作戦の目的は何だろうか。文在寅大統領は年来の主張、さらに大統領就任以降の言動から考えて親北朝鮮の基本は揺らいでいない。「低レベルの」という条件付きではあるが、南北朝鮮の連邦政府を作ると明言してきた。自由と民主主義の韓国風の国家より、北朝鮮風の朝鮮民族のナショナリズムを強調する社会主義的価値を基本にした統一への動きだと思われる。金氏殺害後に、文氏の下で作る統一朝鮮像は想像しにくいが、必ずしも私たちが歓迎する自由な国家にはならないと思える。


中国は韓国の斬首作戦にどう対応するか。彼らにとって最大の悪夢は北朝鮮の崩壊である。北朝鮮の人々が難民となって押し寄せ、中国の民族問題に火をつけ、内政に混乱を生じさせることを中国は最も恐れている。


崩壊した北朝鮮に親米政権が誕生することも中国はどうしても避けたい。従って韓国が斬首作戦に出るとき、中国はどこよりも早く介入しようとすると見るべきだろう。


金氏排除後、中国は北朝鮮を中国寄りの国として影響下にとどめるために、全力を尽くすはずだ。結局、中国にとって、北朝鮮という国を崩壊させず、現状を保つことが大事なのだ。


一方、米国では斬首作戦という激しい言葉は使われてはいないが、「金氏除去」、removeという言葉を用いての議論は盛んである。北朝鮮の核は許容しない、核とミサイル完成の日より前に、金氏を除去する。そのためにより強い政策を、という主張だ。


しかし制裁はこれまで機能せず、今もそうだ。そのことを米国が公に認めるのは、そう遠い先のことではないだろう。そのとき、米国もまた、金氏斬首に猛然と動くと見ておくべきだ。


国防長官はじめ安全保障問題担当補佐官、首席補佐官らトランプ政権中枢を占める軍人出身の要人たちはあくまでも慎重だが、世論調査では対北軍事攻撃を半数以上の人々が支持している。トランプ大統領がこのような世論に乗らないという保証はない。


日本も周辺の国々も事態は戦後最大の危機の中にある。日本国民を守り、国を守るにはどうすべきか、他国に頼りきりではだめなのだ。国防力の強化と憲法改正の2つの課題に取り組むことだと思う。

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