闘うコラム大全集

  • 2017.10.07
  • 一般公開

希望の党は議席への「欲望の党」 安倍首相は国の危機管理巡り論戦挑め

『週刊ダイヤモンド』 2017年10月7日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1201


民進党が小池百合子氏の「希望の党」に吸収される。「しがらみのない政治」「日本をリセットする」「寛容な改革保守政党を目指す」と小池氏は語る。具体的に何を指すのか不明だが、その核心は民進党代表の前原誠司氏の「どんな手段を使っても、どんな知恵を絞ってでも安倍政権を終わらせる」という言葉に凝縮されているだろう。


平和安全法制が議論されていたときに国会を取り囲み、「アベ政治は許さない」と叫んだ左翼の人々と同じではないか。そのデモに民進党は幹部以下多くの議員を送り込み、デモ隊と一緒に平和安全法制は「戦争法案だ!」「人殺しのための法案だ!」と声を上げた。それが今、小池氏と一緒になって「現実的な安全保障政策」を推進するというのは悪い冗談だ。名前は変わっても実態が同じなら、この党は「政党ロンダリング」によって生まれたと言われても仕方がない。


希望の党のもうひとつの側面は、選挙が不安な人々の議席確保への死に物狂いの執着である。自民党の内閣府副大臣だった福田峰之氏は現職の副大臣でありながら小池氏の元へ馳せ参じた。氏は過去2回神奈川8区の選挙区で立候補し、いずれも敗北して比例復活した。自民党は比例復活でしか当選できない議員、言いかえれば地元有権者から十分な支持を受けられない人物については厳しい。一応のルールとして連続2回比例で復活した議員は候補者調整の対象となる。福田氏は次の選挙では公認を得られない可能性があった。


民進党を離党した人々の中で選挙に強いのは細野豪志氏や笠浩史氏ら少数に限られる。日本のこころの中山恭子氏は自身のためでなく、浪人を続けていた御主人の成彬氏のために小池氏に合流したと言ってよいだろう。


民進党から最終的にどれくらいの議員が合流するのかは、この原稿を執筆中の現在、不明だ。しかし、前原新代表となっても少しも勢いを取り戻せなかった。離党者が続き小池氏に合流したのも選挙への不安が動機となっているだろう。であれば希望の党は議席への「欲望の党」である。


小池氏は安倍晋三首相による解散で北朝鮮危機に対応できるのかと問う。情勢をきちんと読めば北朝鮮の危機が迫っているのは明白であろう。


すでに専門家の間ではさまざまな情報が取り沙汰されている。


米国の攻撃は厳冬の寒さの中、朝鮮人民軍の動きが鈍くなる1~2月に決行される、作戦は38度線に沿って配備されている1万に上る北朝鮮のロケット砲などを一気に無力化する激しいものとなるという情報がある。


そのとき日本はどうするのか。まず、拉致被害者をどのように救出するのか。わが国にその能力はあるのか。憲法及び法律の整備は行われているのか。非常に多くの課題が残っている。


北朝鮮の有事の際には、1000万人規模の難民が発生すると言われている。中国が最も気にしているのも実はこの問題で、彼らは全力で北朝鮮難民を阻止するだろう。それでなくとも中国は少数民族の反抗という問題を抱え、国内治安対策に異常な程気をつかっている。


韓国にも多くの難民が逃れていくだろう。日本にも万単位の難民が来ると考えなければならない。中には工作員がまじっている可能性もある。その人々にどう対応するのか。


こうしたことへの準備をするのは今しかないだろう。首相は「国難突破解散」と語ったが、その真の意味は北朝鮮有事、北朝鮮の脅威に備えるということだ。


日本の危機管理は憲法の制約もあり世界一不備である。そこをどうするのかが問われている。首相はそのことを出来るだけきちんと国民に訴えるのがよい。議席がほしいだけの人々の集合体、欲望の党に堂々と論戦を挑め。

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