闘うコラム大全集

  • 2017.06.01
  • 一般公開

吉田清治氏長男、父親の謝罪碑書き換え

『週刊新潮』 2017年6月1日号

日本ルネッサンス 第755回


5月19日、インターネット配信「言論テレビ」の番組「言論さくら組」でジャーナリストの大高未貴さんがスクープを披露した。


「言論さくら組」は今年2月に発足した、物言う若手女性たちの一団が出演する番組である。私自身は若くないが、頼もしく勇気のある女性、世の中の不条理に疑問を感じ、そのことについて思い込みで判断するのではなく、まず取材して新事実を掘り起こし、それを世の中に提示する意欲と能力のある女性、そして人間として魅力的だと私が思った女性(ひと)たち8人を集めた。歴史問題をひとつの大きな柱とし、毎月、できれば特ダネで、そうでなければ独自ネタで問題提起したいと願っている。そのメンバーの1人が大高さんである。

 

彼女はこれまでに100か国以上を駆け巡って取材してきた。彼女が今回取り上げたのは、自分は慰安婦を強制連行した加害者だと名乗り出て、今日の慰安婦強制連行説を生み出す原因となった職業的詐話師、故吉田清治氏の長男である。

 

長男は、後述する決意をもとに、父親が韓国の忠清南道天安市の「望郷の丘」に建てた「謝罪碑」の文言を今年3月に書き換えた。吉田氏の元々の碑には「日本の侵略戦争のために徴用され強制連行され」「貴い命を奪われ」た朝鮮の人々に、「徴用と強制連行を実行指揮した日本人」として「潔く反省して」「謝罪」すると刻まれていた。氏は同碑を「元勞務報國會徴用隊長」の肩書きで建てた。

 

氏は同碑建立の式典で、韓国の人々に土下座し、「朝日新聞」はそれを1983年12月24日、「たった一人の謝罪」として報じた。

 

大高さんの説明だ。


「この記事も含めて朝日は吉田清治氏を大きく取り上げ、強制連行をはじめとする慰安婦問題にまつわる虚偽を国の内外に広げました。慰安婦の虚偽については90年代から指摘されていたにも拘らず、放置され続け、漸く朝日が吉田証言を取り消したのは14年8月でした。長男は、父は日本軍人として勤務した経験もなく、労務報国会徴用隊長の職位も全て虚偽だったと明言しています。慰安婦問題の元凶は父が作ったけれどその嘘は決して一人で書いたものではない。何人もの協力者、振付師、演出家がいて、そのひとつが朝日新聞だと考えています。朝日が父親の嘘を勝手に盛り上げて、梯子を外して、『はい、取り消しました。これで終わり』。それはないだろうというのが長男の気持ちでした」


父親の嘘

 

大高さんはさらに強調する。


「長男は言うのです。朝日が取り消しても、父親が韓国に建てた石碑は朽ち果てることなく、後世まで残る。こんなことは許せない。韓国の方にも失礼、日本人にも失礼。だから自分は日本人として最後までしっかりと責任を持って後始末したいと」

 

長男は、可能ならクレーン車で碑を撤去したいと願った。それが難しいとわかった時点で碑の文言の書き換えを決心し、沖縄県に住む元自衛官、奥茂治氏(69)を代理人として望郷の丘に派遣し、先の謝罪碑を「慰霊碑」とし、「吉田雄兎 日本国 福岡」と極めて簡潔な内容にした。雄兎とは吉田氏の本名である。

 

奥氏が相談を受けたときのことを振りかえった。


「あの碑は清治氏が自費で建立したそうです。であるなら、父親の嘘の碑を消し去る責任も権利も、長男である自分にあるというのです。日韓の摩擦の原因である慰安婦問題の偽りを正したいとの願いは、日韓両国を大事に思う心でもあります。私は日本人として応えるべきだと思いました。断る理由はありませんでした」

 

奥氏は新しい文言を刻んだ重い大理石の石板を望郷の丘に運び、一人で古い碑の上に、絶対に#剥#は#がれない接着剤で貼りつけた。その行動の詳細は大高さんの新著『父の謝罪碑を撤去します』に譲りたい。

 

大高さんの取材は産経新聞出版の瀬尾友子さんの尽力で単行本として来週、出版される。瀬尾さんも「言論さくら組」で語った。


「長男は『吉田家最後の人間』という言葉を繰り返しました。自分が父親の間違いを正さなければ、大理石上の嘘はいつまでも残る。だからいま、消し去ると言うのです」

 

産経新聞官邸サブキャップの田北真樹子さんが強調した。


「長男がこういう風に書き換えたことに、よくぞやって下さったと感謝します。韓国のメディアは、吉田氏の長男の意思と決断に、衝撃を受けているようです」

 

儒教では父親の権威は絶大である。伝統的に儒教の影響が強い韓国人にとって、長男が公然と父親の言動を嘘だと宣言し、父親の嘘から始まった慰安婦問題を否定したことは、相当なショックのようだ。韓国メディアがあまり報じないのは、報道すれば、吉田清治氏が本当に嘘つきだったことが韓国国民に周知徹底されるからか。氏の嘘を報じた「朝日」の記事取り消しもより広く伝わる。吉田・朝日の虚偽に依拠する韓国の挺身隊問題対策協議会をはじめとする運動体の人々の反日の根拠も揺らぎかねない。大高さんの指摘だ。


「朝日」も酷い


「韓国側は騒ぎたくないのではないですか。自分たちの反日に跳ねかえってきますから。挺対協をはじめ、彼らの最終目的は反日問題を終わらせないこと。従って、次には徴用工問題を提起するでしょう。未来永劫日本政府に謝罪させ、企業から償い金を受け取り、基金を創設して反日を続けることを考えているのです」

 

韓国も事実を見ようとしないが、「朝日」も酷い。5月22日現在、朝日はこの件を全く報じていない。吉田氏の長男も語ったように、朝日が吉田氏の嘘を内外に拡散した。その責任をも問うている長男の行動に、朝日は見て見ぬ振りか。とすれば、これ以上の無責任はない。

 

番組の最後で、元衆議院議員の杉田水脈(みお)さんが報告したことも驚きだった。フランスの大統領選挙の取材中、パリで目にとまったのが「ZOOMJAPON」というフリー雑誌だった。高倉健さんの「鉄道員(ぽっぽや)」の紹介など文化的な記事と一緒に、沖縄の基地反対運動が特集され、日本中から国民が沖縄に集まり基地は要らないと運動していると報じている。上智大学教授、中野晃一氏への取材記事の中で、日本会議批判に続いて稲田朋美防衛大臣に言及し、日本では女性は二級市民で、安倍晋三首相もそう考えている。女性蔑視を覆い隠すために、閣僚に女性を登用しているのだなどと書いている。

 

この雑誌は広告費で成り立っているが、一番大きな広告を載せているのが、NHKワールドだ。詳しくは「言論さくら組」を検索して御覧いただきたいが、こんなフリー雑誌に視聴者から強制的に徴収する受信料を充ててよいわけはないだろう。

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