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闘うコラム大全集

2017.08.05号
強硬姿勢の中国はじめ周囲は深刻な危機 獣医学部新設と加計学園は問題ですらない

『週刊ダイヤモンド』 2017年8月5日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1193
 


衆院予算委員会の国会閉会中審査で、民進党の櫻井充議員が参考人に、「出て行け!」と、罵声を浴びせた。


氏の暴言も驚きだが、安倍晋三首相の態度や言葉遣いが傲慢だと批判していた「識者」や評論家、ニュース番組の司会者までもが野党議員の暴言には全く苦言を呈しなかったことも驚きだった。明らかなダブルスタンダードである。


国会議員もメディアも獣医学部新設問題を岩盤規制打破の観点を置き去りにして、倒閣運動の材料であるかのように見ているのではないか。メディアや言論人の本来の責任を放棄したかのような偏向した議論に日本全体が熱中する間、日本周辺に危機が迫っている。


7月に入って中国の脅威が新たな段階に入っている。2日には中国海軍の調査艦が通常と異なるルートで津軽海峡のわが国領海に侵入した。狭い津軽海峡については全海域を日本の領海・排他的経済水域とすることも可能だ。しかし、わが国はまん中を公海として開放しており、各国の軍艦の航行を許しているが、中国艦は日本の陸地にぐっと近づき領海侵犯を続けた。


15日には中国海警局の公船2隻が対馬海峡の東側、東水道で領海侵犯を2度繰り返した。2日後、この2隻は津軽海峡の領海に2回、侵入した。


対馬東水道及び津軽海峡での領海侵犯は初めてだ。中国の意図を、シンクタンク「国家基本問題研究所」企画委員、太田文雄氏は北極海航路の開発に向けた動きだと見る。


米国、ロシアを筆頭に、北極海では凄まじい権益争いが進行中だ。中国にとって北極海航路は、欧州への航路が現在の南回り航路に比べて約半分に短縮されるメリットがある。一帯一路を掲げ、海上覇権を西太平洋、インド洋、紅海から地中海に広げる中国は、北極海航路の確保を目指している。


北極海には世界最大の島、デンマーク領のグリーンランドがあり、その東はレーガン・ゴルバチョフ両首脳会談が行われたレイキャビクを首都とするアイスランドだ。人口30万人弱の小国で中国は広大な土地を取得し、北極海を睨んだ拠点づくりを進めてきた。


北極海からベーリング海峡を下り千島列島を横切る形でオホーツク海に入り、北海道稚内北の宗谷海峡から日本海に入る。或いはベーリング海峡を下りそのまま太平洋を南下して津軽海峡経由で日本海に入る。次に対馬海峡を通って西に進めば目の前が中国だ。中国にとって津軽海峡も対馬海峡も非常に重要な戦略拠点なのである。


中国の習近平国家主席は外交、安全保障政策で力による支配を強めている。尖閣諸島については、「3・3・2の原則」(月3回、公船3隻が2時間領海侵入)と言われてきたが、現在は天候が許す限りいつでも、4隻体制で、自由に領海侵犯する状況が生じている。


中国は尖閣諸島入手が、東シナ海・南シナ海奪取と制海権確立に欠かせないと考えている。そのために尖閣諸島は絶対に諦めず、台湾も同様だろう。


その意味で、尖閣諸島海域侵入の規模と頻度を高めていることと、7月25日、台湾海峡に初めて爆撃機を飛行させたことは、関連する軍事行動として深刻に受けとめなければならない。


中国の対外強硬策は習近平主席の国内政治における闘争と密接に結びついており、今後も続行されるだろう。


目の前に中国の脅威があり、北朝鮮はいつ新たなミサイル発射、又は核実験に踏み切るやもしれない。韓国の文在寅政権は対日歴史戦争をフルに展開しつつある。


日本の周囲すべて危機である。この深刻な危機の中で、本来問題ですらない獣医学部新設と加計学園を問題視し、安倍政権憎しで歪曲報道を続けるメディアと言論人。結果として、国の行く末をも危険に陥れかねない偏向報道が、わが国最大の問題ではないか。



櫻井よしこ


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