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Vol.564 会員限定

アベノミクス 「今井尚哉証言」への反論

2025.03.14 45分

令和7年3月14日金曜夜10時、「花田編集長の右向け右」第564回のゲストは元内閣官房参与の本田悦朗さんです。本田さんは内閣官房参与として安倍晋三内閣で「アベノミクス」を遂行に注力しました。
ところが、安倍内閣で首相秘書官と首相補佐官を兼務した今井尚哉氏(現・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)が、月刊誌『中央公論』3月号の対談で本田さんらを「反大蔵省軍団」と名指しして次のように語っています。
〈正直に言うと私の最大の仕事は、反大蔵省軍団との対決でした。たしかに日銀の金融緩和は必要で、まずそれで景気を回復させなければ安倍さんの宿願なんて実現不可能です。けれど財政規律やプライマリーバランスを無視した主張をする人々、具体的には内閣官房参与の本田悦朗さんや、菅内閣で内閣官房参与になる高橋洋一さんといった面々に、安倍さんが引きずられないようにする。それが私の役目でした。〉〈安倍さんはもちろん積極財政派ですが、元々自民党の社会部会長として社会保障問題と向き合っていた人ですから、国家財政に限界があることもわかっていたと思いますね。悪い表現ですが「太らせてから巻き上げる」、景気を良くして税収を上げるという考え方だったと思います。
 消費増税を好ましくは思っていなかったはずですが、19年に10%にすることについて、安倍さんに迷いはなかった。菅義偉官房長官には「増税して選挙に勝てるか」と何度も怒られましたが、安倍さんが本田さんや高橋さん、党内でいえば西田昌司さんや高市早苗さんと同様の考えであれば、私ではなく菅さんに乗ったはずです。〉(以上、今井尚哉氏、『中央公論』3月号より。対談は牧原出・東大先端科学技術研究センター教授とのもの)
安倍元総理自身は、『安倍晋三 回顧録』で次のように語っています。
〈──民主党政権をどう見ていましたか。
 民主党政権の間違いは数多いが、決定的なのは、東日本大震災後の増税だと思います。震災のダメージがあるのに、増税するというのは、明らかに間違っている。高橋是清蔵相は昭和金融恐慌時、モラトリアムで債務の支払いを猶予し、200円札を大量に刷って安心させようとしました。増税は真逆でしょう。
 そういう思いから、浜田宏一エール大名誉教授、本田悦朗静岡県立大教授、高橋洋一嘉悦大教授、岩田規久男学習院大教授といった経済の専門家に会って何度も議論しました。また、第1次内閣で経済産業副大臣だった山本幸三氏にデフレ脱却の勉強会の会長を頼まれて、勉強会を発足させました。
 そうした中で、日銀の金融政策や財務省の増税路線が間違っていると確信していく。そこでアベノミクスの骨格が固まってくる。こうやって安倍政権は、産業政策のみならず金融を含めたマクロ経済政策を網羅することになるのです。極めて珍しい内閣だったと思います。〉〈政策面では、アベノミクスを支えてくれた経済学者の存在は不可欠でした。浜田宏一エール大名誉教授、本田悦朗静岡県立大教授、高橋洋一嘉悦大教授ら、いわゆる「リフレ派」といわれた人たちが、しっかり理論武装し、私の主張をバックアップしてくれました。財務省や財政再建派の議員と対峙する上でも、高橋さんたちは大きな役割を果たしてくれました。〉〈財務省と、党の財政再建派議員がタッグを組んで、「安倍おろし」を仕掛けることを警戒していたから、増税先送りの判断は、必ず選挙とセットだったのです。そうでなければ、倒されていたかもしれません。〉(以上、『安倍晋三 回顧録』中央公論新社)
本田さんは自身のXに「私の主張は総理の意志に基く」等と投稿、続けて次のように投稿しました。
〈今井尚哉氏曰く、「財政規律を無視した主張をした本田の様な反大蔵省軍団から、安倍総理を守るのが私の役目だった。」唖然。デフレから脱し、経済成長をしなければ、財政は維持できない。我が国をかくも長期間不況に陥れた最大の責任者は今井氏であった。経済学に無知な人が総理に助言することは危険。〉(3月1日、本田悦朗氏のX投稿)
本田さんにアベノミクスとは何か、「今井証言」への反論、安倍総理の消費増税への考えをお伺いします。

本田悦朗

本田悦朗
元内閣官房参与

1955年和歌山県生まれ。1978年、東京大学法学部を卒業後、(旧)大蔵省に入省。財務省・外務省や国際機関での勤務を経て2012年退職。12年から静岡県立大学教授、内閣官房参与(マクロ経済政策担当)などを歴任、16年6月からスイス駐箚特命全権大使、19年退職。安倍内閣の経済アドバイザーとして、日本経済低迷の原因となっているデフレからの脱却のための政策パッケージ「アベノミクス」の遂行に注力した。現在、TMI総合法律事務所顧問、(公財)国家基本問題研究所理事・企画委員。京都大学大学院客員教授。著書に『アベノミクスの真実』(幻冬舎)。

※ プロフィールは放送日2025.03.14時点の情報です

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