闘うコラム大全集

  • 2015.09.19
  • 一般公開

米国務省元高官の中国批判に驚き 中国共産党こそ歴史を修正している

『週刊ダイヤモンド』 2015年9月19日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1100
 


ペンシルベニア大学教授のアーサー・ウォルドロン氏は中国問題の専門家である。氏は中国の実態を見詰め続けた結果、中国を厳しく批判するようになる。しかし、米国における中国学会では氏の研究は歓迎されてこなかった。氏の弟子に当たる学者でさえも「親中的」になり、氏と距離を置く。

 

歴史を振り返れば米政権のアジア政策は、伝統的に驚くほど、親中的である。日本はおよそいつも中国の次の国に位置付けられるだけでなく、中国への肩入れの反動として、往々にして嫌日政策が取られてきた。

 

中国の巧みな情報戦略も米国を中国に引き付けてきた。結果として大学教授も研究者も親中的姿勢に傾いているのだ。そんな中、ウォルドロン氏が「僕は米国の学界では孤独なんだよ」と語った言葉が忘れられない。

 

しかしいま、「とうとう米国にもこんな見方をする専門家が出てきたのか」と驚きの気持ちで読んだ1本の記事がある。米国務省元次官補代理、ランディ・シュライバー氏が書いた「中国こそ歴史に関して問題あり」と題した記事だ。

 

米国人の中国批判としては、過去にこれ以上のものはないほどに率直に中国の歴史に関する姿勢を批判している。主な点をざっと列挙する。


・中国は日本を歴史修正主義だとして責めるが、中国共産党こそが歴史を修正している。


・(満州事変が起きた)1931年から(日本の敗戦の)45年までの歴史をもって中国は日本を攻撃するが、(中国共産党が中国を支配し始めた)四九年から現在までの歴史には目をつぶる。


・「大躍進」「文化大革命」「天安門事件」の犠牲者は日本軍による犠牲者の数をはるかに上回る。中国はどの国よりも多くの自国民を殺害してきた。


・米国人は靖国神社を訪れて日本の歴史観を批判するが、中国の歴史博物館を訪れても誰も批判しない。中国政府は天安門事件に全く触れず(当時学生たちの平和的デモを理解し穏便に対処した)趙紫陽氏の存在も消し去った。


・中国は対日戦争の記憶を刻み続けるための新たな国民の祝日を設けた。


・中国は日本が与えたODA(政府開発援助)について国民に全く教えていない。七九年開始の円借款は約260億ドル、技術援助は24億ドル、日本の民間企業は長年膨大な額を中国に投資してきた。2014年だけでその額は350億ドルに上る。

 

このように書き、シュライバー氏は世界が近年の歴史で「好ましい国」「信頼できる国」としてトップに挙げてきたのが日本だが、中国は日本の平和への貢献を認めない、と批判する。

 

氏は台湾にも触れて、「米国人は簡単に『台湾は中国の一部』と言うが、記録が明確な台湾の400年の歴史で中国が台湾を支配したのは10年にも満たない。中国の支配を逃れたからこそ、台湾は繁栄する経済を有し、人権を尊重し信教の自由を担保する近代的民主主義の国になった」と評価する。

 

結論として氏は、中国は米国の同盟国、友人そして米国自身に政治戦争を仕掛けていると警告し、「西側の歴史学者ら約200名が安倍晋三首相に『正確かつ公正な第二次世界大戦の記録に基づいて歴史を反省せよ』というメッセージをつきつけたが、同様の要請が中国に対してもなされるべきだ」と強調する。

 

私は米国で孤高を保ってきたウォルドロン氏を思った。同時に日本人の私たちは、一層の自信と信念を持って歴史の事実を発信し続け、日本の価値観を広げていかなければならないと心新たにした。

 

その点で非常に気になるのがユネスコに中国が登録しようとしている歴史の記憶遺産である。恐ろしいほどの反日歴史捏造が行われている。外務省、政府の強い働き掛けが直ちに必要だ。

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