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闘うコラム大全集

2017.09.21号
北の危機、小野寺防衛相が語る

『週刊新潮』 2017年9月21日号

日本ルネッサンス 第770回


朝鮮労働党機関紙、労働新聞は9月9日の北朝鮮建国69周年の記念日に「わが国は水爆や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する核強国だ」と1面で報じ、力を誇示した。


予測し難い金正恩氏の脅威を日本はどのようにとらえておくべきか。小野寺五典防衛大臣は8日、「言論テレビ」で、わが国はすでに相当数の北朝鮮の弾道ミサイル、ノドンの射程内に入っていると指摘した。ノドンが最初に日本海に撃ち込まれたのは1993年5月末だった。今月3日の核実験の約四半世紀も前から日本は北朝鮮の射程内にとらえられていることを、改めて認識したい。


先の核実験の威力を、防衛省は最終的に160キロトンとした。広島原爆の15キロトンの10倍以上だ。


「北朝鮮の通常戦力は第二次世界大戦時の中古みたいな兵器が主で、だからこそ、一点豪華主義で弾道ミサイルと核に集中的に資本投下してきた。移動式発射台も手にし、どこからいつ撃ってくるかが把握できない。危機は深まっています」(小野寺氏)


北朝鮮はいまや世界が認める最も危険な核保有国だ。それにしても彼らの核開発の速度はあまりに速くないか。彼らの最初の核実験は2006年10月、規模は0.8キロトンだった。


以降10年間で5回実験し、16年9月に10キロトンになった。ところがこの1年で160キロトンに到達した。そう指摘すると小野寺氏は述べた。


「核は1950年代、60年代に急速に開発されました。中国も10年もせずに水爆を保有しています。その意味では北朝鮮が急激に開発能力を高めたというより、追いついてきたということです。米露のメガトン級核に比べれば北朝鮮の核は大きなものではありません」


北朝鮮の能力を冷静に見よということであろう。だが、かつて中国は北朝鮮の核開発を助けていた。真剣に北朝鮮抑止を考えているのか、いまも疑わしい。だからこそ、彼らが北朝鮮の危険なゲームに手を貸しているのか否かを明らかにしなければならない。小野寺氏は答えた。


「元々、スカッドミサイルを含めて、ミサイル技術の原型はソ連製の模倣だと言われています。他の国から部品が入っている可能性もあります」


中国の邪まな意図


中国関与の可能性を尋ねると、詳しい内容は話せないが欧州の要人たちに次のように伝えると語った。


「核技術は世界を巡って広がり、いま北朝鮮の手に入っている。ここできちっと止めておく必要がある」


「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が9月7日に報じたのが留学生を介しての核技術拡散の危険である。国連安全保障理事会は昨年、北朝鮮の国民に核やミサイルなどの専門的教育を施すことを禁じたが、現在も数百人の北朝鮮科学者が国外に留学中で、多くがハルビン工業大学など、中国の大学や研究所に在籍しているという。


中国は国際社会の合意に反して現在も核技術を拡散しているということだ。だが、そんなことはいまに始まったことではない。中国による技術の拡散は30年以上前に遡る。1982年鄧小平政権が、イスラム圏とマルクス主義を信奉する社会主義独裁国に核と弾道ミサイル技術を拡散すると決定したのである。


原子炉建設の秘密合意をアルジェリアと結び、CSS-2ミサイルをサウジアラビアに売り、リビアや北朝鮮にも核技術を与えた。とりわけパキスタンの核開発は熱心に支援した。新疆ウイグル自治区、ロプノールでパキスタンのために核実験まで代行してやった。


小野寺氏が指摘した北朝鮮へのソ連の援助も確かにあった。たとえば1986年に稼働した5メガワットの原子炉はソ連が燃料棒を供給して完成させた。だが、北朝鮮が本格的な核・ミサイルの開発に突入し得たのは鄧小平の決定ゆえである。こうした事実は、たとえばレーガン政権下で国家安全保障会議のスタッフを務めた核の専門家、トーマス・リード氏らも公表済みだ。


北朝鮮が核を有し、北朝鮮をコントロールできるか否か、不透明で危険な状況に世界が陥ってしまった背景には、米露の圧倒的な軍事力を牽制しようとして、北朝鮮などに技術を拡散した中国の邪(よこし)まな意図があったのである。


リード氏は、北朝鮮を炭鉱のカナリアにたとえる。中国の意図を見極める上で非常に有用だからだ。中国に北朝鮮の核開発をやめさせる真剣さがあるかどうかは、中国が彼の国にどう対処するか、その行動によってはっきりするという意味だ。


この原稿を執筆中の現在、国連安保理緊急会合はまだ開催されていない。石油輸出禁止を含む最も強い対北制裁を決議できるのか。中国は拒否権を行使するのか否か、中国の本気度が見えてくるだろう。


小野寺氏は、しかし、あくまでも発言は慎重だった。ロシアには言及しても中国の名は口にしない。そのことが逆に、中国の判断が如何に決定的な意味を持つかを示していると思うが、どうか。


神々に感謝


日本はこの危機の中でどのようにして国、国民、そして拉致被害者を守るのか。すでに日本はノドンの、韓国はロケット砲の射程内にとらえられている。アメリカはICBMだ。小野寺氏が語った。


「北朝鮮が完全に射程におさめているのは日本と韓国です。こういう状況下で、日韓両国ともアメリカに頼らなくてはならない。武力行使も含めて全ての選択肢がテーブルの上にあるとのアメリカの考えは一貫しています。アメリカの核抑止の中に入っているのが日米の安全保障です。いまは何よりもこれが揺るぎないことを確認し続けるのが、政治家の仕事です」


さらに氏は語った。


「前に防衛大臣だったとき、特定秘密保護法を通しました。テロ情報を含めて世界各国から情報を貰う際、これを絶対に漏らさないという法的枠組みです。国会審議では野党やメディアから相当批判されました。しかしいま、日本が信頼され情報共有ができているのはこの特定秘密保護法のおかげです」


平和安全法制に反対して国会を十重二十重に取り囲んだ人々が、北朝鮮のミサイルに日米連携で対応せよと要求していることに関して、氏はこう述べた。


「強い反対があっても、時間が過ぎてみると、成程、必要だったんだと納得してくれる。戦後日本はこの繰り返しですね」


民進党の議員や朝日新聞に聞かせたいコメントである。


氏は、防衛相として毎日、一日が無事に終わったことを神々に感謝して、明日も平和を守るためにしっかり警戒監視をしていこうと念じながらひと月が過ぎたと語る。平和を守るためには、祈りと共に備えが必要なのだということを国民の私たちが提言しなければならない。



櫻井よしこ


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