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闘うコラム大全集

2017.12.02号
731部隊を巡る中国の対日歴史復讐戦 事実の歪曲・捏造阻止へ全容の解明を

『週刊ダイヤモンド』 2017年12月2日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1209
 


米国と中国の大きな相違は民主主義体制か専制独裁体制かとの点にとどまらない。米国は呑み込まない国、中国は呑み込む国である。米国は自国の広大な国土に満足しており、それ以上に植民地や国土を拡張しようとは考えていない。中国はすでに広大な土地を手に入れているにもかかわらず、これからも他国の領土領海を奪い膨張しようとする国である。


もうひとつ大事なのは、米国は歴史を乗り越えようとする国、中国は歴史を恨み復讐する国だということである。


他国の土地を奪う点についての米中の相違は、米国が植民地だったフィリピンの独立を認め、沖縄をわが国に返還したのに対し、中国はチベット、モンゴル、ウイグルの三民族から奪った国土は絶対に返さないことだ。3民族の国土は現在の中華人民共和国の60%に当たる。加えて中国は現在もインド、ブータン、北朝鮮、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、日本などの国土を自国領だとして奪い取りつつある。


歴史への向き合い方も米中ではおよそ正反対だ。まず私たちはさまざまな想いを込めてバラク・オバマ前米大統領と安倍晋三首相の広島、及びパールハーバー訪問を想い出すことができるだろう。他方中国は、アヘン戦争以来、帝国主義諸国に奪われ続けたという視点に立ち、中華民族の偉大なる復興として、「失ったもの」を取り戻す作業にとりかかっている。その根底をなすのが復讐の想いであり、それを可能にするのが中国共産党の指導力という位置づけだ。前置きが長くなったが、その結果何が起きているかが、今回の当欄で指摘したいことだ。


対日歴史復讐戦として仰天する非難がまたもや言い立てられ始めた。「中国日報」(China Daily)が11月13日付で、旧日本軍の731部隊が少なくとも3000人の中国人を人体実験して殺害し、30万人以上の中国人を生物兵器で殺害したと報じたのだ。


また30万人か。「南京大虐殺」の犠牲者30万人は多くの研究によって虚構であることが明らかにされている。慰安婦30万人を旧日本軍が殺害したということも、絶対にあり得ない。だが、中国共産党は右の2つの「30万人被害説」を、国を挙げて主張し、世界に広めてきた。いままた、対日歴史復讐戦として731部隊の犠牲者30万人説が持ち出された。


中国日報は、黒龍江省のハルビン社会科学院の研究者四人が米国立公文書館、議会図書館、スタンフォード大学フーバー研究室で2300頁に上る資料を発見したと報じている。


4人のうちの1人、リュウ・リュージア氏(女性)は「細菌戦における731部隊と軍の密接な関係を示す研究資料が大量に含まれている。資料には多くの英語による書き込みがある。誰が何を意味して書いたのかはこれからの研究だ」と語っている。


リュウ氏は同僚たちとこれまで7年を費やして資料を集めたそうだ。その結論として30万人が731部隊に殺害されたと主張するわけだ。


731部隊に関する資料の多くは戦後米国に持ち去られた。日本で発表された衝撃的な報告として日本共産党などが盛んに取り上げた森村誠一氏の『悪魔の飽食』が想い出される。


30万人説を早くも打ち出したリュウ氏らの研究は純粋な歴史研究というより対日歴史復讐戦の一環と見るべきだろう。中華民族の偉大なる復興を目指す習近平主席は自身の体制維持のために、進んで日本を貶める。当然、731部隊に関しても事実の歪曲や捏造が起きるだろう。それを防ぐには、日本人にとって触れられたくないテーマだとしても、研究を進め事実の全容を明らかにすることが必要だ。


このようなことにこそ、外務省に与えた歴史の事実発信のための500億円を活用することが大事である。



櫻井よしこ


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