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闘うコラム大全集
- 2018.12.08
- 一般公開
日本文明の核であり続けてきた皇室と天皇 民族の記憶に刻まれた伝統を大切にすべきだ
『週刊ダイヤモンド』 2018年12月8日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1259
11月27日、都内で「天皇陛下御即位三十年奉祝委員会の設立総会」が開かれた。政府を代表して菅義偉官房長官が「憲政史上初の、天皇陛下のご退位と皇太子殿下のご即位」に向けて、万全の準備を整えると語り、政財界、言論界からも藤原正彦氏らが、御代替わりについての思いを語った。
江戸時代の光格天皇以降、譲位による御代替わりは今上陛下が初めてだ。今上陛下は30年間、国民と触れ合い、戦跡地を訪れ、国民に勇気を与え慰めをもたらして下さっている。各地へのおでましがどれ程多くの人々の心をあたたかく包んで下さったことか。互いに労り合いながら行幸啓を続けられる両陛下には、深い感謝の念を抱かずにはいられない。
日本の長い歴史の中で、皇室と天皇は日本文明の確固とした核であり続けている。恵まれないときもあったが、皇室は常に権力ではなく権威として、日本国の揺るぎない基盤であり続けた。日本が危機に陥る度、皇室が中心になって、国民をまとめ、国を守り通してきた。明治維新のときや大東亜戦争の終戦時に果たしたお役割が記憶に残る事例である。
直近では、東日本大震災のときの天皇陛下の「お言葉」を思い出せばよい。1000年に一度の大災害に打ちひしがれていた国民は、「お言葉」によってどれ程元気づけられたことか。
このような天皇のお役割とその意義、国民の心にもたらす「効果」は、お一人お一人の天皇のお力だけから生まれるものではないだろう。天皇の背景に長い歴史があって、初めてお言葉に万人の心に訴えかける力が生まれるのではないか。
皇室は、早くも聖徳太子の時代、つまり七世紀初めには貧しい人、親のいない子供たち、身寄りのないお年寄りのための救済施設を造っていた。それらは聖武天皇の后、光明皇后の力によって施薬院、悲田院となり、病と貧困に苦しむ民の救済施設として定着し、やがて全国に広がった。その善き伝統は、平成の現在も藤楓協会として連綿と続いている。
天皇と皇室が民の幸福と国家の安寧のために祈り続けて下さっているお姿が、長い歴史を通して浮かび上がってくるのが日本であり、このような背景が日本民族の記憶に深く刻まれているからこそ、天皇陛下のお言葉は、国民の心にスッと沁み込んでくる。大切にするべきはこうした伝統である。
皇室の伝統と価値観は紛れもなく日本の神話と一体化したものだ。御代替わりの儀式は、これら神話の時代の伝統にのっとるのがよい。昭和天皇崩御のときの「大喪の礼」では、反皇室の人々が憲法20条3項を盾に、政教分離と称して、儀式の簡略化や変更を求めた。だが政教分離は宗教に対する圧迫や干渉を禁じているのであり、政治に一切の宗教色を持たせてはならないという意味ではない。そもそも神話の時代からの伝統を宗教だと断じて切り捨てること自体、間違いである。200年振りの御代替わりの儀式は、大喪の礼のときよりもまともに伝統を踏まえるべきだと考える。
もうひとつ大事なことは、今上陛下に残り数カ月の内に、靖国神社にご親拝いただくことだ。春や秋の例大祭で陛下は勅使を靖国神社にお遣わしになっている。しかし、30年間にわたる平成の御世で、一度も陛下ご自身が靖国神社にお運びにならないとは、どういうことかと思う。
幾百万の兵は、日本国に殉じた命である。彼らの霊が眠る靖国神社には、いまや、首相も真榊料で済ませ、閣僚の誰一人参拝せず、天皇のご親拝もない。このようなことでは、日本国は長く持つまい。御代替わりの前に、天皇、皇后両陛下のご親拝をお願いし、その道を開くために、安倍晋三首相以下、全閣僚の参拝を実現すべきだと考える。
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