過去の放送

Vol.27 一般公開

「H7N9型とは別のウイルスが鳥の間で流行っていると大問題です」
 鶏48,000羽を調査し30羽しかH7N9型が見つからなかった不思議

2013.04.26 46分

 鳥インフルエンザ緊急事態に、WHOインフルエンザ協力センター長でもある田代氏は多忙を極めていました。オンエア当日の4月26日の夜もWHO電話会議が予定されており、櫻井キャスターとの書斎対談は18時30分から収録し生放送に追い込みました。

 放送日2日前の3月24日に、中国で鶏などとの接触がなかった台湾のビジネスマンが、帰国後H7N9型を発症したため、櫻井キャスターは「人から人への感染ではないのか」と訊ねました。田代氏は「人から人への感染は否定もできないが、断定もできない」と慎重でした。しかし、ウイルスが突然変異を起こし、明らかに“種の壁”を乗り越えて鳥から人への感染が起きているいま、そこからさらに発展して人から人への感染が起きることも想定しておかなければならないと警告しました。但し、「現在は、人から人への感染が起こっている状況ではない」ことを明らかにしました。

 対談の中で田代氏は大変興味深い事実を明らかにしました。「今回中国国内の市場で、生きている鶏48,000羽を調査したが、H7N9型が見つかったのはわずか30羽でした。こんな少ない数で広大な中国のあちらこちらへ感染を広げ得るのか理解できない」と語ったのです。鳥だけの感染で説明するには疑問が残り、豚、犬、ネズミなど、無論人も含みますが、鳥以外の哺乳類がこのウイルスを広げていることも否定できないと述べました。さらにもうひとつの深刻な問題として、「今回のH7N9型とは全く別に、他のウイルスが鳥達の間で増殖しているとすれば大問題である」と指摘しました。そのウイルスは2003年に大流行したH5N1であり、田代氏はむしろこちらの方が心配だと語りました。H5N1が人間界に流行れば、人類はウイルスに対して2正面作戦をとらなければならないわけで、非常に困難な状況が生まれると田代氏は警告しました。

 櫻井キャスターが「中国由来の鳥インフルエンザウイルスの日本上陸は時間の問題か」と訊ねると「すでに入ってきている可能性は否定できない。台湾で見つかったのであれば日本でも同じ」と答えました。日本の鳥インフルエンザ対策が大いに急がれます。

≪動画インデックス≫
1. そもそも鳥インフルエンザとは?
2. 中国の感染者数、死者数は氷山の一角か?
3. H7N9型感染者は高齢者と男性患者が多い。
4. 台湾感染者はヒトーヒト感染か?
5. H7N9型感染とは別に、鳥達の間でH5N1型が増殖している?
6. 日本上陸阻止の準備は何処まで出来ているか?
7. 鳥イン不エンザ感染を早期発見するためには?
8. タミフル、リレンザの効力と国内の備蓄状況は?
9. 特措法に沿っての対策準備で間に合うのか?

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田代 眞人

田代 眞人
鳥インフルエンザ研究の権威

1948年東京生まれ。東北大学医学部卒業、医学博士。自治医科大学助教授などを経て、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長、WHOインフルエンザ協力センター長。専門はウイルス学、感染症学。共著書に『感染症と戦う』、『強毒性新型インフルエンザの脅威』、『鳥インフルエンザの脅威』など。

※ プロフィールは放送日2013.04.26時点の情報です

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