闘うコラム大全集

  • 2016.05.28
  • 一般公開

自衛隊派遣に反対しながら護衛してもらう ピースボートに見る“矛盾”に満ちた主張

『週間ダイヤモンド』 2016年5月28日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1134


5月18日の「産経新聞」5面に掲載された写真を見て、つい書く気になった。

 

その写真とはアフリカ・ソマリア沖で海賊対策に従事している海上自衛隊に護衛されて航行する「ピースボート」(以下PB、民間の国際交流団体)の旅客船の写真だった。白い船体にくっきりと「PEACE BOAT」の文字が浮かび、手前には海自「ゆうぎり」の灰色の船体が写っている。

 

PBのホームページを見ると、広島・長崎の被爆者と共に世界に核廃絶の訴えを届ける「おりづるプロジェクト」や、日本国憲法第九条を世界に広げる「グローバル9条キャンペーン」などの呼び掛けがまず目に入る。

 

PBは、現在民進党衆議院議員の辻元清美(つじもと・きよみ)氏らが1983年に設立した。彼らは、地球一周の船旅を年に3回企画し、その他に日韓間のクルーズも主催しているとのことだ。今回の旅は4月12日に横浜港を出て西回りで世界を一周し、7月27日に神戸港に帰航するらしい。広く世界の現実を見るのは参加者にとって、とてもよい勉強になるに違いない。ぜひ、国際社会の実情をイデオロギー色の強い眼鏡を通してではなく、できるだけありのままに見てほしいと願うものだ。

 

そこでPBに問い合わせた。海自のソマリア沖への派遣に反対していたにもかかわらず、海自の護衛を受けることの矛盾をどう考えるかという質問だ。

 

PB側は、電話取材は受け付けない、質問書は書面で出してほしい、また、それを郵送してほしいという。それではこの記事を書くのに間に合わない。メールかファクスで送りたいと要請して、ファクスで受けてもらった。

 

PBの矛盾への疑問が、もう1つの衝撃的な情報への思いにつながっていった。週刊誌「AERA」の5月16日号に掲載された700人を対象にした憲法改正に関する対面式の世論調査の結果である。AERAは単に憲法改正か否かという質問から一歩踏み込んで「自衛のためなら戦争を認めるか」「自衛のためでも認めないか」と問うた。女性はどの世代も、自衛であっても戦うことは認めないと回答した人が、認めると答えた人を上回った。

 

そこでAERAは、認めないという女性たちに「他国や武装組織の日本攻撃にはどう対処すべきか」と重ねて問うている。回答には「日本には攻めてこないと思う」「外交の力で攻撃されないようにすればよい」「日本は戦争しないで米軍に戦ってもらえばいい」などが並んだ。

 

女性たちの45%はまた「戦力としての自衛隊」は認めないと答え、自衛隊に期待するのは災害救助隊としての働きであることも明らかになった。


「外敵は日本に攻めてこない」というのは無責任な空想である。「米軍に戦ってもらえばいい」という日本人に、米共和党のドナルド・トランプ氏や氏を支える幾千万人の米国人は恐らく不快感を抱き、反発するだろう。

 

女性たちが自衛戦争も認めないのは子供を産み育てる母親としての価値観だという人たちがいる。それも分からないではないが、母親としての価値観を大切にするなら、米国人の母親の思いも想像しなければならない。自国や自国民を自ら守る意思もない日本のような国のために、自分の愛する子供が戦争に行くのを、米国の母親たちが受け入れるだろうか。絶対に拒否するだろう。

 

自らは何もせず、諸国民の公正と信義にすがって命を守るというのが日本国憲法前文の精神だ。そのような精神に染まった人々の矛盾に満ちた主張は、海自の海賊対処派遣に反対しながら、海自に守ってもらうPBの姿勢に重なる。到底世界には通用しまい。

 

一夜明けてPBは船の安全運航は船会社等の専権事項で、NGOのPBには一切関わりがないと回答した。これは、だが、責任逃れというものだろう。

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