闘うコラム大全集

  • 2017.11.11
  • 一般公開

ユネスコ巡る日本外交は3連勝も中韓との歴史戦争はまだこれから

『週刊ダイヤモンド』 2017年11月11日

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1206
 


久々にほっとするニュースだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の国際諮問委員会(IAC)が、中韓両国等9カ国15団体が「世界の記憶」として共同申請した慰安婦資料の登録の見送りを10月31日、正式決定した。


彼らの申請資料は2744点、慰安婦を「強制連行の被害者」「性奴隷」ととらえて日本を非難するものだ。


2年前、中国によって「南京大虐殺」が登録された。30万人もの大虐殺が存在しなかったことは、学術的研究によってすでに明らかだ。にもかかわらず、中国は登録に成功した。


当時の日本の外務省もユネスコの担当省である文部科学省も寝耳に水で、虚を突かれた隙に登録申請は進んだ。


だが非常におかしいのは、今日に至るまで、何をもって「30万人大虐殺の記憶」とするのか。目録のみで資料が全く開示されていないことだ。


日本側の開示請求に中国側は応えない。恐らく、中国側の主張を支える資料はないのだろう。では、なぜこんな正体不明の、「日本軍は南京で大虐殺を行った」という大スローガンだけが、根拠も存在さえも明らかではない形で登録されたのか。ユネスコの「世界の記憶」登録制度に深刻な欠陥がある、と考えて日本政府は対策に乗り出した。これが南京事件登録のあと、つまり2年前のことだ。


日本側は、直接南京事件や慰安婦問題に触れることなく、人類が共有すべき貴重な記憶が、政治的に偏ったり、利用されたりしてはならない、政治利用されがちな案件では必ず当事国全ての意見を聞き、当事国全ての理解が得られるまで登録しないという点を柱に主張を展開した。


働きかける対象を、ユネスコ全体を取り仕切る執行委員会に絞った。執行委員会は日本の趣旨をよく理解し、全会一致で日本の制度改革案を決議して受け入れた。これが10月18日だった。執行委員会は、ユネスコの事務局長以下、「世界の記憶」登録を直接決定するIACの上部組織である。


日本が執行委員会というユネスコのトップ組織に働きかけたのは正解だったが、逆に見れば時間がない中ではその選択しかなかったとも言える。


どの申請資料が「世界の記憶」に値するのかを第一段階で審査するのは登録小委員会だ。14人で構成されるが、全員がアーキビスト、公文書の記録や保管の専門家であり、歴史問題についての専門性は全くない。


登録小委員会は審査の結論をIACに提出する。IACにも14人の委員がいるが、歴史問題の専門家はおらず、議論は全て非公開である。彼らが登録小委員会の勧告をそのまま受け入れる事例が多いため、決定的に重要なのが登録小委員会だと言われている。


中韓両国は長年この2つの委員会に働きかけていた。彼らは反日情報の拡散、浸透に努め、中国は南京事件登録に成功した。その間のユネスコ事務局長はイリナ・ボコバ氏、ブルガリア出身の共産党員、名うての親中派だ。


日本は巻き返しに出たものの、次の登録までには2年しかない。登録小委員会やIACの計28人の委員に個別に働きかける時間も人材もない。そこで執行委員会に的を絞った。トップでは日本の正論は受け入れられたが、親中派の共産党員のボコバ氏が最終決定権を持つのだ。日本側は手に汗を握る思いで見詰めていた。そして成功した。


外務省、民間の専門家、有志団体が一体となって反撃した成果である。


慰安婦資料登録の阻止、制度改革の実現、次期ユネスコ事務局長の座を中国に与えずフランスを勝たせた。日本外交の3連勝だ。やれば出来るではないか。これは、しかし、安倍晋三首相が明確な旗を立てたから可能だった。政治主導の重要性と共に、中韓両国との歴史戦争はまだこれからだと強調したい。

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