闘うコラム大全集

  • 2018.10.13
  • 一般公開

南北協力の道をバラ色に描く韓国の悲劇 偏向報道が目に余る日本の韓国化も心配だ

『週刊ダイヤモンド』 2018年10月13日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1251
 


韓国の著名な言論人、趙甲濟氏がこんなことを呟いた。「韓国人の考える能力、理解力が低下しています。わが国が直面する危機について、どれだけ発信してもわかってもらえない」。


趙氏は昭和20年、日本で生まれたが、家族と共に韓国に引き揚げた。私は折に触れ、氏と対談をしたり意見交換したりしてきたが、氏が生まれ故郷の日本に対して、好意とわだかまりを混在させていると感ずることがある。


日本へのわだかまりは、韓国への思いの深さと朝鮮民族としての誇りと背中合わせなのだと感ずる。その趙氏が、韓国人の考える能力が劣化していると、日本人の私に語ったことに、痛ましさを感じずにはいられなかった。


なぜ、彼はそのように言うのか。それは彼らの祖国、大韓民国を消滅に追いやってしまうかもしれない政策を文在寅大統領が次々に実施しているにも拘わらず、韓国民がそのことに気づかないからだ。言論人として、趙氏がどれだけ警告を発しようが、韓国民はそんなことにお構いなく、文氏に高い支持を与え続けているからでもある。


文氏の支持率は、氏が南北朝鮮首脳会談を行い、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との親密な関係を宣伝する度に上がってきた。まるで北朝鮮のメディアであるかのような韓国のテレビ局や新聞社は金、文両氏の笑顔と抱擁を大きく報じ、南北協力の道をバラ色に描き、民族統一の夢を抱かせる。しかし、二度行われた首脳会談の合意、「板門店宣言」(4月27日)も「平壌共同宣言」(9月19日)も決してバラ色ではない。むしろ一方的に北朝鮮に有利で、韓国の悲劇を招く内容だと断じてよいだろう。


4月の板門店宣言をより具体化し、強調したのが9月の平壌共同宣言だが、その中で最も重要視されているのが、南北間の軍事的敵対関係の解消である。そのために彼らは軍事分野に関する合意文書を別に作成し、10月1日、早くも実施に移したのだ。


なんと、非武装地帯(DMZ)や板門店の共同警備区域(JSA)で地雷の除去を始めたのだ。20日以内にすべての地雷を取り除き、それから5日以内に監視所や火力兵器を撤収し、10月末までに完全に非武装化する。さらに11月からは軍事境界線の上空を飛行禁止区域とし、この一帯での軍事演習はすべて取りやめるともいう。


朝鮮問題専門家である西岡力氏が警告した。


「韓国側が一方的に武装解除するのに対して、北朝鮮側はミサイルも核も基本的に保有したままです。北朝鮮は軍事境界線に沿ってすくなくとも長距離砲340門を配備済みです。首都ソウルは十分射程の範囲内です。これまで韓国軍は情報監視能力を備えた哨戒機を飛ばし、北朝鮮側の不穏な動きをキャッチしてきました。必要なら精密打撃能力を誇るミサイルで攻撃可能な態勢が整っていました。しかし哨戒機の飛行をやめるわけですから、万が一、北朝鮮が攻撃をかけてきても分かりませんから、防ぎようもありません。北朝鮮には哨戒能力はまったくないのですから、一方的に韓国側が譲って、ソウルを明け渡すわけです」


こんな状況が眼前に出現しているのに、なぜ韓国の国民はおかしいと思わないのかと、趙氏は嘆くわけだ。氏は韓国人の考える能力を問題視したが、実は韓国メディアの発信する情報の偏りこそが問題だ。韓国のメディア界は偏向報道の見本のような状況に陥っている。正恩氏が恰も心優しい優れた指導者であるかのような報道しかしない。北朝鮮の脅威も伝えないために、韓国人は事実を認識できないのだ。


私は韓国情勢を心配しながら、日本の現状についても同様の危惧を抱く。日本のメディアの目に余る偏った報道で日本が韓国化しつつあるのではないかと、心底心配だ。

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