闘うコラム大全集

  • 2013.08.29
  • 一般公開

呉善花氏、入国拒否の蛮行を悲しむ

『週刊新潮』 2013年8月29日号
日本ルネッサンス 第571回


日韓関係が険悪である。日本側から見れば理解し難い理由を掲げて日本非難を強めるのが朴槿恵政権だ。日本は韓国の反日理由を分析し、間違っても韓国に好かれようなどと思ってはならない。一目も二目もおかれる強くしっかりした国として、筋を通さなければ問題は永続する。

韓国人の理不尽さを振り返ってみよう。安倍晋三首相が震災被災地の宮城を訪れ、航空自衛隊の機体番号731の飛行機に乗ると、細菌部隊に結びつけて感情を爆発させ、広島、長崎への原爆投下は神の懲罰だなどと大手新聞の論説委員が書いた。

日本政府が8月1日、初めて実施した竹島問題の世論調査を発表すると、韓国政府は調査自体を「挑発」だと抗議した。竹島問題への日本国民の関心を高めたのも、これまで如何なる行動もとりたがらなかった日本政府の重い腰を上げさせたのも、李明博前大統領の不法上陸を含む韓国側の行動だったことを彼らは考えない。竹島には8月13日、韓国野党の国会議員12名が、14日には与党議員ら約40名が不法上陸し、さらに問題を煽っている。

韓国の最高裁判所は昨年5月、日本統治時代に戦時徴用された韓国人らに個人補償の請求権を認め、日韓基本条約の戦後処理の枠組みを根幹から崩しかねない決定を下した。

7月28日、サッカー東アジア杯で韓国人サポーターがスポーツの政治利用は禁止されているにも拘わらず、「歴史を忘れた民族に未来はない」と書いた横断幕を掲げた。

メディア、政治、司法、国民が国をあげて常軌を逸した反日に走る韓国が7月27日、今度は、評論家で研究者の呉善花氏(日本国籍)を理由も告げずに入国拒否した。改めて呉氏にその顛末を聞いた。

私がキャスターを務めるインターネットテレビ、「君の一歩が朝を変える!」(以下「君の一歩!」)で呉氏が語ったのは8月16日だった。氏は5月末にも「君の一歩!」で、悪化する日韓関係について語っている。

「7月27日11時すぎ甥の結婚式で仁川空港に着いたら別室に入れられ、1時間半待たされました。結婚式は午後3時、急がないと、と言っても、調査中と言うばかりです」

「マスコミが言論を封殺」

氏は6年前、盧武鉉政権時代に、実母の葬儀参列のために韓国に戻ったときも入国拒否を言い渡された。そのときは葬儀参列以外の言動はしないと誓約させられ、日本外務省の努力でやっと入国できたという。

「今回も同じかと思う一方で、同時にいまのこの時代にまさか、自分の言論活動が理由で入国拒否はないだろうと思っていた」と告白する。

呉氏が一筋の希望を抱いたのは今年3月と4月末には韓国を訪れ、問題なく入国出来ていたからだ。ところが今回は違った。それにしても、なぜ、突然の入国拒否なのか。

「説明はありません。私は見ていないのですが、NHKがこの一件を報道し韓国当局に理由を質したら、個人のプライバシーで答えられない、但し本人には説明済みと答えたそうです。強制送還は上の命令だという現場職員の言葉を除けば、私にはなんの説明もありませんでした」

氏はA4の紙を渡され、署名を迫られた。理由の欄が空白で、署名はしなかったが、あとで見ると、入国不許通知書と書かれていた。

「本当に寂しい」と氏は言う。

「日本はこれだけの韓流ブーム。韓国は近代化し、経済が発展し、表面的には日本と大差がないと、日本人には思われています」

が、実態は異なるというのだ。

「盧武鉉時代、韓国は強烈な反日、親北朝鮮でとんでもない政策をとりました。私の言論活動は親日的とされ入国拒否と言われました。李大統領時代は入れました。ところが再び入国拒否です。朴政権は盧政権と同じということになります」

朴大統領に一体なにが起きているのか。その答えの一部が今回の事件に対するマスコミの反応から見えてくる。驚くことに、彼の国のマスコミは今回、入国拒否をした韓国政府でなく、被害者の呉氏を批判した。

「政府に物を言うべきなのに、私への批判の声しかありませんでした。自由な言論あってこそのマスコミです。でも韓国ではマスコミ自体が言論を封殺するのです」

政権基盤が不安定な朴大統領は反日政策でメディアの支持を得て、政権安定につなげたいと考えていると氏は分析する。この風土の中で、氏はますます孤立するのか。日本の朝鮮半島統治を冷静に評価することは、それほど許されないことなのか。

今回、氏の年来の友人、自由な言論を大切にする立場の学者や記者から励ましの連絡はあったかと問うと、「全くありませんでした」と、答えた。「本当に寂しい」という一言に深い孤独感が詰まっている。


反日ではなく「侮日」

「ずっと前には、たとえば、日本統治時代のことを、正しい歴史認識に基づいて伝えた人たちがいたのですが、全部、社会から抹殺されました」「(日本統治の前向きな評価は)一部の学者の論文としてはありますが、大衆的な広がりをもつ次元では、そのような学問はしてもいけない、伝えてもいけないことに、暗黙の内に、なっています」という。

学問や言論の自由がない国に真の発展はあり得ない。政官民あげての韓国の反日は具体的にどこまで突き抜けているのか。呉氏が語った。

「安倍首相=悪魔という感じで報じられています。日本相手だと仏像を盗んでも悪いことにならず、むしろよくやったという評価になります」

この歪んだ感情は反日以前に、実は「侮日」であり、そのような感情は李承晩大統領以降の反日教育で育まれたと氏は見る。

古代朝鮮は高句麗、新羅、百済時代、すでに中国から漢字や仏教を学び、輝ける文明・文化を有していた。それらを日本に教えてやった。日本はそのお陰で文明国になっていながら、秀吉の朝鮮侵略、近代日本の35年間の統治があった、許せないという考え方だと、氏は解説する。

「元々朝鮮民族が優越しているという意識が根底にあります。なのに自分たちより低水準の日本人にしてやられたことが許せない。ですから反日の前に侮日感情があるのです」

厄介なことに優越感と劣等感は往々にして表裏一体である。その整理がつかない中で侮日から反日への流れが形成されている。日本はこうした点を冷静にとらえ、侮られない強い基盤を作ることの大事さを認識しなければならない。

新日鐵住金が戦時徴用訴訟で敗訴の場合賠償に応じる意向だと、8月18日、「産経新聞」が報じた。この種の筋を通さない解決法こそ、侮日反日を助長する結果になる。新日鐵住金は日本の国益のためにも、ここで筋を通すべきなのだ。

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