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Vol.530 会員限定

『がん征服』医師たちの苦闘

2024.07.12 47分

令和6年7月12日金曜夜10時、第530回のゲストはノンフィクション作家の下山進さんです。『アルツハイマー征服』で新薬「レカネマブ」 につながる人類の苦闘を描いた下山さんが、医療ノンフィクション『がん征服』(新潮社)を上梓しました。
下山さんは当初、出版社から手術、抗がん剤、放射線という標準療法以降の治療法の開発史を依頼されたそうですが、複雑ながん治療の取材を進めるうちに脳腫瘍のグレード4「膠芽腫(こうがしゅ)」を縦糸にすることでそれが可能になると気づいたそうです。
「膠芽腫」の平均余命は15カ月で、最凶のがんと言われるそうです。
がん治療には2000年代から2010年代にかけて標準治療に風穴をあけるブレークスルーが大きく分けて三つあったと下山さんは『がん征服』で書いています。
〈一つ目は、がんが成長するのに必要な血管を、健康な細胞に作らせる回路を遮断する「血管新生阻害剤」。
 二つ目は、がんの発する抗原に対するモノクローナル抗体をつくりそれに抗がん剤などの治療薬をのせて投与する「分子標的薬」。
 三つ目は、京大の本庶佑の発見により開発された「免疫チェックポイント阻害剤」。これは免疫を抑える役割を果たしている抗原をブロックすることで、本来T細胞がもっている免疫力をたかめてがんを退治するという方法だ。
 これらの新機軸で、膠芽腫以外の他のがんは、生存期間がめざましく伸張した。
 しかし、これら三つの新機軸の薬は「膠芽腫」における治験で全て失敗しているのである。〉
なぜ新機軸の治療法がこの「膠芽腫」には効かないのか。
「膠芽腫」があらゆるがんの中でもっとも難しいがんと言われるのは、なぜなのか。
「膠芽腫」に挑む三つの最新治療法、
①原子炉・加速器を使うBNCT、
②楽天三木谷浩史が旗を振る光免疫療法、
③「世界最高のがん治療」と礼賛されるウイルス療法、
を中心に、膠芽腫、がんを征服するために苦闘する医師たち、最新治療法について伺います。

下山進

下山進
ノンフィクション作家

1986年早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1993年コロンビア大学ジャーナリズムスクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。2020年3月より2ページのコラムを「サンデー毎日」→「週刊朝日」→「AERA」で連載中。上智大学新聞学科非常勤講師。元慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授。 『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)で、「レカネマブ(BAN2401)」の開発にいたる30年の研究史が大きな話題に。2023年8月に新章を加え文庫化(角川文庫)。他の著書に『アメリカ・ジャーリズム』(1995年、丸善)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA 、2002年)、『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。

※ プロフィールは放送日2024.07.12時点の情報です

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