闘うコラム大全集

  • 2014.05.24
  • 一般公開

農家の“復権”を図るために寄生虫のJA全中を解体せよ

『週刊ダイヤモンド』 2014年5月24日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1035


全国農業協同組合中央会(JA全中)は長年にわたって農家の寄生虫のようだった。農家を助け、繁栄に導き、日本の農業の国際競争力を高めることが農協の存在理由であるにもかかわらず、彼らはその役割を少しも果たさず、日本のコメ農業の衰退をもたらした。

政府の規制改革会議がJA全中の影響力を抑制する農業改革案をまとめたが、農協の根本的改革はJA全中関係者はいざ知らず、個々の農家を含めた多くの国民の思いであろう。

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏がインターネットの「言論テレビ」の番組で、巨大化した農協がもたらす「害毒」を指摘した。氏はまず、現在のコメ農業をめぐる政策の根本的な矛盾をこう指摘した。

「1995年に食管法が廃止され、減反政策で農家に補助金を払い、コメ以外の作物を作ってもらっています。コメの供給量が減って米価も消費者の負担も高止まりという悪循環の中で、日本のコメ農業は本来手にすることができる繁栄を逃しているのです」

山下氏が指摘する統計を私たちはしっかり頭に刻み込むべきだろう。減反政策に毎年5000億円使われているのに加えて、消費者として、高い米価のために毎年6000億円分、余計な支払いをしているのだ。計1兆1000億円で支えるコメ産業の生産額は毎年1兆8000億円にすぎない。なんという無駄なお金の使い方か。

このような非生産的な制度を頑として守り続けようというのが農協である。

「農協は農家のための組織のはずですが、いま農協加盟者の半分以上が准組合員、つまり農業にほとんど無関係のサラリーマンなどです。なぜ農家でもない人たちを大量に農協に入れるのか。農協が営む銀行、生命保険、損害保険事業など、幅広い事業の客として取り込んできたのです」

農協は預金量において三菱東京UFJ銀行に次ぐ第2のメガバンクに発展した。農協以外の金融機関には、生保や損保の兼業は許されていない。農協に与えられた特権が際立つではないか。

「それだけではありません」と山下氏が力を込める。

「巨大組織の農協は、例えば肥料で全国八割のシェアを持つなど農業分野で独占力を発揮していますが、協同組合という理由で独禁法の適用を除外され独占を続けています。法人税率もおかしい。一般企業の25.5%に対して農協は19%。一般の株式会社の株主配当は課税されますが、農協組合員向けの配当は損金と見なされ課税されません。事務所や倉庫の固定資産税も、農協には課税されません」

農協は特権の塊である。農協の下で減反政策が維持され、日本のコメ農業は小規模化と衰退の坂を転げ落ち続けている。農協は農家を材料にして自らの生き残りだけを考える組織になったのだ。こんな農協の解体が急がれるが、山下氏が示した図が印象的だった。

それは規模が小さい農家ほど60キログラム当たりのコメの生産費は高く、規模が大きいほど、生産費は安くなるという至極当然の事実を示すとともに、コメ生産による収入が規模拡大化で急激に大きくなるカーブを示していた。20ヘクタール以上の生産農家は優に年収1400万円を超える計算である。

農家には自信を持ってほしい。農協に頼らずとも、必ず、日本の農家は生き残る。それどころか、素晴らしい力を付けていく。オレンジを自由化してもミカン農家はつぶれず、デコポンなどの新品種を生み出した。サクランボは佐藤錦という芸術品のような品種を生み出し、生産量は自由化前より5割も増えた。

農協、とりわけJA全中を解体して日本の農業を元気にする。安倍晋三首相が果敢に挑むこの改革を、農家こそ応援して、1日も早くTPPに参加すべきなのである。

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