闘うコラム大全集

  • 2017.03.23
  • 一般公開

左翼政権誕生で予想される韓国の近未来

『週刊新潮』 2017年3月23日号

日本ルネッサンス 第746回


3月10日、韓国の憲法裁判所は裁判官8人の全員一致で朴槿恵大統領弾劾を決定した。大統領と怪し気な友人女性とのスキャンダルから発した問題のように見える政変の根は、深い。自由主義と共産主義の死闘が韓国で展開されているのであり、大統領弾劾は大韓民国終焉への第一歩が踏み出された瞬間にも見える。

 

形容しようもない朴大統領の悲劇、それが大統領を弾劾した韓国の未来と重なって見える。

 

次期大統領はルールによって60日以内に選出される。目下、最有力候補は世論調査で30%以上の支持を集める文在寅(ムン・ジェイン)氏だ。韓国の民心は激し易いため、選挙当日まで現在の世論の動向がそのまま推移するという保証はない。だが、仮に文氏が選ばれた場合、韓国は短期間に北朝鮮化すると考えた方がよい。

 

文氏の親北朝鮮・親中国ぶりはこれまでにも報じられているが、改めて氏の考えを、➀日米との関係、➁北朝鮮との関係、➂共産主義信奉者か否かの3分野にわけて追ってみる。

 

まず➀である。弾劾から2日が過ぎた3月12日の記者会見で、氏は選挙を意識してか、従来よりソフトな表現に後退していた。氏の本音がよりよく見えていたのが昨年12月15日、ソウルのプレスセンターで行われた外国特派員協会主催の会見での発言だ。氏は高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題は次期政府に委ねるべきで、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直しも表明した。安倍晋三首相と朴大統領が取り交わした慰安婦問題に関する合意についての氏の基本的立場は「破棄」である。

 

米国防総省のデービス報道官は3月10日、指導者の交代は珍しくないとして、「THAAD配備は米韓両政府の合意事項で、合意に従って取り組みを継続する」と述べた。韓国言論界の重鎮、趙甲濟氏は次期政権の出方次第では、米韓関係の悪化と米軍撤退もあり得るとし、「THAAD配備を否定すれば韓米同盟は瓦解する。それは北朝鮮が最も喜ぶことだ」と警告する。


連邦統一政府

 

日本にとっても危機は深刻である。幕末に開国した日本は国際社会の力学の下で、日清、日露の戦争を戦った。朝鮮半島を、中国(清)とロシアが窺い、日本への脅威も明白だったからだ。現在の韓国の混乱は、共産主義勢力が、韓国という自由と民主主義の国の実権を握って北朝鮮化し、中国と結び、やがてわが国にも迫りくるという構図につながりかねない。

 

その意味で➁の検証が非常に重要である。文氏の北朝鮮政策は、北朝鮮に呼びかけて連邦統一政府を作るという驚くべき内容だ。南北朝鮮が同等の立場で連邦政府を樹立し、一定期間を経て真の統合を成し遂げ、最終的に朝鮮民族がひとつの国を取り戻すという考えである。

 

この考えの最初の提唱者は金大中氏だった。2000年6月、氏は金正日氏と南北首脳会談を行った。金大中氏が金正日氏にひれ伏し、裏金5億ドル(約550億円)を贈って実現した首脳会談だ。北朝鮮べったりの金大中氏が提唱した連邦政府構想は、北朝鮮にとって実に好都合だと、金正日氏が次のように語っていたことが、脱北者の証言で判明している。


「南北が同等の立場で連邦政府を樹立すれば、韓国側連邦議員の半分は親北朝鮮だ。一方、わが方の議員は全員、北だ。すべての政策は3対1で我々の思いどおりになる」

 

文氏は南北朝鮮の海の境界線である北方限界線(NLL)の見直しにも言及する。朝鮮半島西側に広がる黄海上の境界線、NLLを北朝鮮は認めず、さらに南に独自の海上軍事境界線を一方的に設定した。北朝鮮はNLLを越えて軍事活動を展開し、韓国の哨戒艦・天安を撃沈して延坪島を攻撃した。

 

同海域は北朝鮮工作員の韓国侵入の格好のルートでもある。文氏は北朝鮮の主張を反映してNLLを見直すと共に、国家保安法も撤廃すると語っている。国家保安法は共産主義を禁止し、北朝鮮工作員を取り締まるための法である。つまり、韓国が北朝鮮と戦う際の法的支柱を文氏は撤廃するというのである。氏が北朝鮮の手先だと非難される理由のひとつがここにある。

 

では、文氏は韓国で法的に禁じられている共産主義者なのか。この点の検証が➂である。韓国学中央研究院名誉教授の梁東安氏は、共産主義の戦略・戦術研究の第一人者と評されている。

 

梁氏が重視するのが文氏の自叙伝である。たとえばベトナム戦争におけるアメリカの敗北とベトナムの共産化に「喜悦を覚えた」と、文氏は記し、中国の文化大革命は否定していないという。日本統治時代の共産主義者で金日成の下に馳せ参じ、労働相を務めた金元鳳に対し、「心から最高級の独立有功者勲章をつけて差しあげたい」と書いているそうだ。また文氏は、これまた北朝鮮追従の甚しかった盧武鉉政権で秘書室長として活躍したとき、韓国大学総学生会連合(韓総連)の合法化を支持し、全国教職員労働組合(全教組)も擁護した。


左右双方の「決意」

 

韓総連は金日成の主体思想に心酔する学生団体で、後に、統合進歩党を作る推進力となった。6人の議員を有するまでになった統合進歩党は朝鮮半島有事の際、北朝鮮と呼応して韓国内から革命を起こすための実行計画を作成していたことが露見し、解散させられた。全教組は日教組よりも尚、過激な左翼団体である。

 

文氏が政権を掌握すれば朝鮮半島情勢の激変は避けられないことが見えてくる。だからこそ先の趙氏は危機感を募らせ、弾劾決定当日に「憲法の名の下に行われていても弾劾は承服できない。憲法裁判所は果たして憲法の精神を守ったのか」と厳しく問うた。氏を筆頭に韓国の保守勢力は納得せず、街頭に出て、弾劾決定に抗し続けると主張する。

 

憲法裁判所の決定を民衆デモという、いわば暴力で覆すことを正当化できるのか。立法、行政、司法の三権が正常に機能しない場合、大韓民国の憲法は国民が立ち上がる権利、「国民抵抗権」を認めている。今回の大統領弾劾は国民抵抗権を行使すべき事案だと、保守派は主張する。

 

左翼はどうか。文氏は自叙伝で、「最も強烈に主張したいのは、韓国政治の主流勢力を交替させるべきだという点だ。大清算、大改造、時代の逆転、歴史の変革だ!」と叫ぶ。

 

加えて「憲法裁判所が朴大統領弾劾を棄却すれば、次は革命しかない」とも語っている。

 

左右双方の「決意」を聞けば、韓国の政治がタダではすみそうにないことが伝わってくる。私たちは隣国の情勢が如何に切迫しているかを認識し、政府はあらゆる事態に備えアメリカとの協力を密にすべきときだ。

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