闘うコラム大全集

  • 2017.08.24
  • 一般公開

徴用工を第二の慰安婦問題にするな

『週刊新潮』 2017年8月17・24日号

日本ルネッサンス 第766回


7月26日、韓国で韓国映画『軍艦島』が封切られた。朝鮮問題が専門の西岡力氏は公開3日目の28日に、ソウルの映画館2か所で見た感想を次のように語った。


「ひとつ目の映画館は180席のところに107人、次の館は同じく180席のところに40人ほどが入っていました。熱狂的な雰囲気はありませんでした」


他方、7月28日付「朝鮮日報」は公開2日で155万人を動員し、初動では過去最高の滑り出しだと報じた。韓国側の宣伝の一環か。


近代日本の石炭産業の発展を知るうえで貴重な長崎県端島炭坑、通称軍艦島は、明治日本の産業革命遺産を構成する23資産のひとつとして2年前、世界遺産に登録された。


映画が、虚偽と捏造に満ちているのは予想どおりだが、そのレベルは想像をはるかに超える。たとえば徴用工は強制連行され、船底に押し込められる。下関では殴られながら下船し、窓のない貨車に詰め込まれて長崎に運ばれる。ドイツのユダヤ人に対する仕打ちを連想させるが、韓国では慰安婦問題をはじめとする歴史戦でドイツと同じ「ホロコーストの国」というレッテルを日本に貼ってきた。彼らであればこそその意図は分かり易い。


端島に着くや、男たちは牢獄のような宿舎に入れられ自由を奪われる。乏しい食事と殴打の中で重労働に駆り立てられる。事故が起きると他の坑道を守るために出口が塞がれ、朝鮮人坑夫は見殺しにされる。


家族連れで島に来た朝鮮の女性や女児は夫や父親と離され、遊郭で働かされる。反抗すれば罰せられ、全身に入れ墨を彫られる。無数の五寸釘が突き出た戸板の上に女性が転がされ血だらけで殺される場面もある。


余りのひどさに彼らは集団脱走を企て、日本人と壮絶な戦いを展開する。日本人と朝鮮人は銃で撃ち合い、火炎瓶を投げ合う。まるで戦争である。私は端島を取材したが、あの小さな島でこのような戦いが始まれば島全体が機能不全となる。石炭採掘は1970年代まで続いたのであり、そこに残った朝鮮人もいたことを考えれば、映画は荒唐無稽というより他にない。


現代韓国人の作り話


女性が五寸釘の戸板の上を死ぬまで転がされるなどの罰は軍であれ、民間企業であれ、日本の文化にはない。これは悪名高い国連特別報告者クマラスワミ氏の報告書にある北朝鮮の元慰安婦と称する人物の作り話にすぎない。


その他の詳細は省くが、彼らは映画で何としてでも日本を暗黒の国として描こうとしている。


監督、柳昇完氏は7月28日、日本側の批判に「取材した事実を基にしている」、「朝鮮人強制徴用の悲惨な実態と日本帝国主義の蛮行を描こうとした」と語っている。取材したと言いながら、日本人、朝鮮人の区別なく、共に助け合ったという旧島民の証言には、はじめから耳を貸す気はなかったのである。


このようなでたらめの映画が国際社会に流布されていくそもそもの原因は、不当な非難を浴びたとき、抗議もせず事実も説明しなかったわが国の外交にある。クマラスワミ報告には長年全く反論せずに沈黙を守り続けた。マイク・ホンダ米下院議員らの不条理な慰安婦非難にもまともに反論しなかった。


それどころか、多くの外務官僚は慰安婦問題では日本軍の強制連行や性奴隷説を信じているのではないか。だからこそ、河野洋平官房長官談話に外務省は反論しなかったのではないか。


人間は自分を基準にして物事を判断しがちだ。であれば、外務官僚は己の心の卑しさゆえに、慰安婦の強制連行や性奴隷説を受け入れてきたのではないか。日本外交の異常とも言うべき敗北主義を長年目にしてきた結果、私はこのようにさえ、感じ始めている。


こうして「日本軍・慰安婦・性奴隷」というイメージが広がり、それがいま、徴用工問題につなげられている。


韓国政府は、徴用工は強制連行で、朝鮮人労働者は不当な非人道的扱いを受けたとの立場から、日本政府に非を認めさせるべく、猛烈に攻める。非を認め、日本の蛮行を明らかにする情報センターを設置せよと要求する。


九州大学教授の三輪宗弘氏は、朝鮮人労働者の虐待、虐殺、奴隷労働が現代韓国人の作り話であることは、昭和20年の段階で一旦朝鮮に帰った労働者が再び日本に戻ろうとした事実を見れば明らかだと述べる。氏は、米国立公文書館の「Illegal Entry of Koreans」という統計データから、昭和20年段階で1万人近くの朝鮮人が日本に密入国しようとして捕まり、送り返されていたことが分かると指摘し、「奴隷労働や虐殺が行われていたとしたら、なぜ再び日本に密入国してまで戻ろうとするのか説明できない」と語る。


日本外交の失敗


ソ連に抑留された日本人が、帰国したあと再び、密入国してまでソ連に戻ろうとするだろうか。絶対にあり得ない。万単位の朝鮮人が帰国後再び日本に戻ろうとしたのは、日本での方が豊かに、そして恐らく、より平和に暮らせると考えたからではないか。奴隷労働や虐殺とは無縁の世界が日本だったということだ。


にも拘らず、なぜ外務省は日本が朝鮮人労働者を虐待したとして、そのことを発信する情報センターを作るなどと約束したのか。なぜ自ら敗北へと転んでいくのか。


世界遺産への登録は、ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告によってなされる。2015年5月、日本は8県にまたがる23施設(端島含む)のすべての登録を認めてもらえる満額回答を得ていた。しかし、外務省が「韓国の意向も尋ねなければ」と言い始めた。


世界遺産への登録は各国の思いで申請される。それを判断するのがイコモスである。イコモスが満額回答しているときに、なぜ外務省は韓国の意向を気にするのか、どうしても理解できない。


韓国が、日本の登録阻止に動いたのは予測の範囲内であろう。外務省は韓国に妥協して、登録の際、「本人の意思に反して労働を強いられた(forced to work)」と表現した。


外務省はこれを「働かせた」という意味だというが、国際社会では時効のない罪、「強制労働」と解釈される。重大な失政である。そのうえ、「日本の罪」を明確に伝えるための情報センターを作るとまで約束した。慰安婦問題も徴用工問題もすべて、日本外交の失敗から生れている。


歴史問題で日本を追及しようとする韓国や中国の悪意を日本外務省は認識すべきだ。韓国が求める情報センターを設置して強制連行があったとすることは、慰安婦問題と同じ失政を繰り返すことである。情報センターを作るなら、日本の歴史の真実を伝える情報こそ発信せよ。

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