闘うコラム大全集

  • 2017.12.16
  • 一般公開

資金潤沢なNHKの受信料判決に失望 立法府を動かすには国民の意識が重要に

『週刊ダイヤモンド』 2017年12月16日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1211
 


12月6日、最高裁判所大法廷がNHKの受信料について初の判断を示した。一言でいえば、判決には失望した。


テレビを所有していながら、受信料支払いを拒否していた男性に、NHKは受信料を請求できるか、受信設備を持ったらNHKと契約しなければならないと定めた放送法64条1項は合憲か、が争われていたケースだったが、寺田逸郎裁判長は「表現の自由を実現する放送法の趣旨にかなう。NHKが受信料を請求することは合憲」と判断した。「テレビを設置したからといって、NHKと受信契約を結ばなければならないのは、契約の自由を侵すものだ」という原告側の主張は完全に退けられたわけだ。


これでNHKは、テレビを設置する人々全員に受信料を請求、徴収することが可能になる。私のようにテレビはあるが、NHKは見たくない、或いは事実上見ていない人々も、支払いを法的に迫られることになる。


原告男性の代理人の一人、高池勝彦弁護士は、インターネット配信の「言論テレビ」で12月1日、NHK受信料制度の欠陥についてこう語った。


「公共の福祉という視点では、サービスはそれを求める人が要求するとき、サービスを供給する側は承諾しなければならないというのが基本です。たとえば、私が家を建てたとします。水道が要ります。水道会社は私の要請に応じて、水道を引かなくてはいけません。ところがNHKのやり方は、私の家に井戸があって豊富な水が湧きでているため、水道は要らないと断っているのに、絶対に水道を引けと要求しているに等しいのです。NHKの手法、それを支えている放送法の精神は、あるべき姿と逆です」


現在NHKは年間売り上げ(受信料など)7547億円、民放の、たとえば日本テレビの3054億円に較べると、2.5倍である。民放よりもはるかに潤沢な資金がある。


NHKの受信料について今年3月29日に、東京地方裁判所がビジネスホテルチェーン大手の「東横イン」に19億円余の支払いを命じた判決は見逃すことができない。


NHKは東横インに、全客室分の受信料を払え、過去2年間の3万4000室分の未払い料金を払えと要求していたが、裁判所はNHKの主張をほぼ全面的に認めたのだ。


NHKの新たな受信料大獲得作戦に通ずる右の支払い要求の原理は、ホテルや旅館に対しては、テレビを備えている客室毎に受信料を徴収するというものだ。


言論テレビで作家の門田隆将(かどたりゅうしょう)氏が次のように語った。


「いま受信料は地上波とBSで合わせて月額3590円です。旅館とホテルを合わせて現在約160万の客室があります。各々テレビがついている。NHKはその全室から月額3590円を取ろうと言うのです。これは年額689億円になります」


NHKは強欲だ。今回の裁判の原告側代理人の一人、林いづみ弁護士が警告した。


「今回の最高裁判決はテレビについてですが、今後インターネット端末にもこの理論が適用されれば重大な影響がでます。時代に合う徴収のあり方はもはや立法の問題だと私は考えます。国民がどう考えるかが重要です」


最高裁は「表現の自由」と「知る権利」の重要性を指摘した。ならば問わなければならない。NHKは放送者として国民の知る権利を真に満たしているか、と。彼らは放送の公正さを規定した放送法四条を全く満たしていないと、私は強調したい。NHKの偏向報道振りは加計学園問題の事例からも明らかだ。放送の公正さを求めるには、やはり立法府を動かすしかない。それには私たち国民の意識が何よりも大事だと実感する。

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