北朝鮮の船多数が漂着、備えを急げ | 櫻LIVE - 櫻井よしこ | 言論テレビ

闘うコラム大全集

  • 2018.02.08
  • 一般公開

北朝鮮の船多数が漂着、備えを急げ

『週刊新潮』 2018年2月8日号

日本ルネッサンス 第789回


昨年日本海沿岸で確認された北朝鮮木造船の漂流・漂着は100件、12月だけで40件を超えた。北海道、秋田、山形、青森、新潟、佐渡、福井、石川、島根、京都、鳥取と広範囲に及ぶ。今年も漂着は続いている。「特定失踪者問題調査会」の荒木和博氏の調査から拾ってみる。


・平成30(2018)年1月4日、秋田県三種町釜谷浜海水浴場に木造船の一部が漂着。


・5日 石川県白山市沖 木造船1隻。


・6日 秋田県由利本荘市松ヶ崎漁港 木造船の一部。


・7日 京都府京丹後市網野町 木造船1隻。


・8日 新潟市西蒲区間瀬(まぜ)海岸 木造船1隻。


・同日 秋田県男鹿(おが)市野石申川(のいしさるかわ)海岸 木造船の一部。


・10日 石川県金沢市下安原町安原海岸 一部白骨化した遺体1体とその15メートル先に木造船1隻。


・16日 右の木造船の中から遺体7体発見。


・21日 新潟県粟島 八幡神社から200メートルの海岸で木造船の一部、赤字でハングル2文字。


・24日 石川県志賀町西海千ノ浦海岸で木造船、傷み激しく長時間漂流したものと推定。


海洋問題に詳しい、東海大学教授でシンクタンク国家基本問題研究所(国基研)理事の山田吉彦氏が指摘した。


「12月に漂着した船は漂流時間がそれ以前の船と較べて長いのが特徴です。動力を使わず、北西風に押されて荒れる厳寒の日本海を漂いながら、破壊を免れていた船が少なからずありました。船体がしっかりしており、乗っていたのは漁民というより体格のよい男達です。生存者は42人でした。前年、或いは前々年の生存者はゼロですから、大きな違いです」


山田氏はさらに語った。


「昨年12月頃から小型船がふえています。船長12~15メートルだったのが、7~8メートルが多くなりました。悪天候の冬の日本海に乗り出すのは余りにも無謀ですが、大型、中型の船が少なくなっていると思われます」


醜悪なもがき


レックス・ティラーソン米国務長官は1月17日、日本側(河野太郎外相)から聞いた話として、昨年日本海沿岸に100隻以上の北朝鮮の漁船が漂着し、乗組員の3分の2が死亡していたこと、生き残った漁民は北朝鮮に戻りたがっていることから逃亡者や脱北者ではなく、満足な燃料を積みこんでもらうことなく強制的に冬の海に出された漁民だと推測されることなどを語っている。


朝鮮問題専門家で国基研の西岡力氏は、彼らが海に出される背景に北朝鮮の食糧不足があると指摘する。独裁者金正恩氏は2014年、軍に漁獲量を確保して、全土の育児院、小・中学校、養老院に毎日魚を届けよと厳命している。その一方で、中国漁船300隻に1隻当たり3か月200万円で北朝鮮沿岸の日本海漁場での操業権を売った。結果、北朝鮮の漁船は沿岸から遠く離れた漁場に出されているというのだ。


「今年に入って、平壌のエネルギー事情はさらに悪化し、中国からのコークスの輸入が途絶えた結果、火力発電所が10日以上停止したとみられます。コメもトウモロコシにとって代わられつつあるという情報もあります」と西岡氏。


日本が主導してきた対北朝鮮経済制裁が効果を上げているのだ。金正恩氏はその窮状を隠して、いま大博打を打ちつつある。韓国で開催される平昌五輪大会開幕前日の2月8日、平壌で大規模軍事パレードを断行する。金氏は、1948年2月8日が朝鮮人民軍創建の日だと、1月22日に突然、発表した。北朝鮮建国の日が同年9月9日であるから、北朝鮮では国家の前に軍ができたことになる。


軍事パレードで金氏は「国家核武力の完成」を宣言するだろう。核もミサイルも諦めるつもりは全くないのである。


翌日には南北朝鮮の合同チームが統一旗という奇妙な旗を掲げて平昌五輪開会式で行進する予定だ。平和とスポーツの祭典は北朝鮮の専制独裁者の生き残りを賭けた一大勝負に踏みにじられ、政治利用が極限に達するのを世界は目撃させられるのだ。


こんな開会式や五輪に騙されてはならない。この五輪は、誇りある韓国人には耐え難いであろう。国民に満足な食糧を供給することさえできない金正恩氏の醜悪なもがきにすぎない。平昌五輪への南北朝鮮合同参加が北朝鮮危機を緩和するなどとはどうしても考えにくい。韓国の文在寅政権の動向にもよるが、朝鮮半島の危機はより深まっていくと覚悟した方がいい。


「大量の難民上陸」


山田氏が警告した。


「なぜ、前例のない程多くの船が漂着しているのか。北朝鮮は日本に大量の難民を送り込もうとしていると思います。北朝鮮有事で約40万人が難民化すると考えられます。うち、10万人から15万人が日本に向かい、うち半分から3分の2が海で命を落とし、日本には5万人が漂着すると想定できます」


実に恐ろしい話だ。半分から3分の2が海で命を落とすというのは、これまでに日本に流れ着いた北朝鮮の漁船の運命をもとに推定したものだ。だが、彼らはなぜ、危険な海路で日本に来ようとするのか。


主として2つの理由が考えられると、山田氏は見る。まず、中国やロシアに逃れた場合、難民として保護してもらえる保証も、命を助けてもらえる保証もないかもしれない。対照的に、日本は国際法を守ろうと必死に手を尽くすだろう。難民に住居、着る物、食べる物に加えて、医療も施してくれると、彼らは確信している。朝鮮総連が身元引受人になれば、長期滞在も可能だ。たとえ工作員であることが見破られても、日本の刑務所は清潔で食事も医療も提供される。日本に関して彼らが恐れるものは何もないのだ。


2つ目の理由は、詳細は明らかではないが、日本には北朝鮮系団体が有する莫大な資金があり、それが彼らの目的だと、山田氏は見る。


荒木氏の警告も実感を伴う。


「数千、数万の難民の中には感染症を患っていたり、工作員としての密命を帯びている者も、必ずいるはずです。しかし、警察、海上保安庁、自衛隊も、大量の難民上陸には、到底、対処しきれません。日本は国として対処できる状況ではないということに、日本国民は気づいていない。そのこと自体が最も深刻な危機です」


昨年10月の総選挙は北朝鮮の危機に対処するための国難突破選挙だった。ならば、自民党も公明党も国会で国難突破の方法を論じよ。野党もまた、この国難を乗り越える方策を探る責任があることを自覚せよ。

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