闘うコラム大全集

  • 2018.03.10
  • 一般公開

世界で進む“中国対民主主義”のせめぎ合い 価値観守るには国民全体の力が必要に

『週刊ダイヤモンド』 2018年3月10日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1222
 


過日、高須クリニック院長の高須克弥氏に会った。チベット亡命政府がロブサン・センゲ首相の来日に合わせて開催したレセプションでのことだ。


テレビのCMでお馴染みの高須氏が「昭和天皇独白録」原本をオークションで落札し、皇室にお渡しすると発表した。そんなことで氏は愛国の人なのだと、私は感じていた。


その人物が同じ会場にいた。自己紹介したら、漫画家の西原理恵子さんを紹介してくださった。「週刊新潮」の一番最後の頁で佐藤優氏のコラムと合わせて「まさる&りえこの週刊鳥頭ニュース」を描いている人だ。


後日、高須氏恵贈の『炎上上等』(扶桑社新書)で、氏にとって西原さんがとても大切な人だということがわかった。「サイバラ、サイバラ」と呼んでいつも一緒だ。


そんなことも書いてある本からは邪気のない人物像が浮かんでくる。相手が強くても筋は曲げない。たとえば高須クリニックの患者の半分以上が中国人だそうだ。金持ち中国人は日本の土地や建物だけでなく、若さも美しさも買って帰る。高須氏は彼らをVIPルームに通す。すると、皆一様に「凍りつく」。何故って、そこには、氏がダライ・ラマ法王にお会いした時の写真がたくさん飾られているからだ。


それでも気分を害して憤然と席を立つ人はいない。皆、喜んで手術を受けるという。愉快な話ではないか。


私の不勉強でこの本を読む迄知らなかったのだが、高須氏はこれまでずっとチベットを支援してきた。理由は中国に「いちばんやられている」からと、明快だ。だから氏は氏のやり方でチベット問題に関わってきた。チベットにもっと多くの人たちが注目して、その酷い状況を知ることが、何よりも大事だと信じて行動してきた。


世界ではいま、価値観の闘い、中国対民主主義陣営のせめぎ合いが進行中だ。習近平国家主席は、3中総会で国家主席の10年任期制を撤廃し、毛沢東のように終身、権力の座に居座るつもりのようだ。強い反対論もあるが、そうした意見は中国共産党に押さえ込まれ、新聞からも、ネットからも削除されていく。かといって、中国人が心底、終身主席制という時代錯誤の専制独裁に納得することはないだろう。国民の不満は解消されず、むしろ高まるばかりだ。解決の道は強硬策しかない。習氏はあらゆる分野で締めつけを強化し、対外的にはより巧妙でより激しい攻勢に出るだろう。


国内で狙われるのはチベット人、ウイグル人、モンゴル人ら「少数民族」であり、対外的には日本であろう。そんな中国の攻勢には、賢く強く備えて、私たちの価値観を守り抜かなければならない。それは政府だけではできない。国民全体の力が必要である。


賢い国民が自らの力で国を守るのが民主主義制度の特徴で、一党独裁政治との大きな違いである。だからこそ、真っ当に国を愛する民間の力が大事、人材が大事なのである。高須氏はいま、チベットの人材育成に力を貸している。インドのモディ首相が毎年チベット人学生をインドの大学の医学部に受け入れており、その学生たちを高須氏が奨学金で支えているそうだ。


「毎年5人ずつ支援していけば、いつか僕がフリーチベットの医学の父って呼ばれる時がくるかもね」と氏は書く。是非、そうなってほしいものだ。日本でもすでに千葉工業大学がチベット人学生を奨学金で受け入れている。麗澤大学にも来年春にはチベット人留学生たちが来る予定だ。


日本の民間人の力はすばらしい。賢く勇気ある民間の人々や大学、その他の組織の力を結集すれば、中国共産党の理不尽さに負けることはない。小さな国々の未来を担う人材育成に手を貸すことは、私たち日本人が日本人としての自分を磨くことなのである。

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