闘うコラム大全集

  • 2018.10.04
  • 一般公開

拉致解決、安倍対北外交で団結せよ

『週刊新潮』 2018年10月4日号

日本ルネッサンス 第821回


インターネットで配信する「言論テレビ」を始めて6年になった。毎週金曜日の夜9時から、原則として1時間の番組を2本ずつ放送している。9月21日は6周年記念の2時間特別番組で拉致問題を取り上げた。


横田めぐみさんが13歳で拉致されて今年で41年、お母さんの早紀江さんが語った。


「1977年11月15日、朝、普段どおりしっかり食事して、牛乳も飲んで、本当に元気に出かけました。いつものお友達が迎えにきて『きたきた! 行ってきます!』と飛んでいったのが最後です」


11月の新潟は日暮れも早い。暗くなっても帰らないめぐみさん。ありとあらゆる場所を探した。懐中電灯をかざしてまっ暗な海辺も歩いた。恐怖で足がふるえる中を、めぐみちゃんめぐみちゃんと叫び続けた。突然、煙のように消えてしまった一人娘。母は、誰もいなくなった昼間、畳を掻きむしって泣いた。海に身を投げて死んでしまいたいと思った。


そうして19年が過ぎた1996年、元共産党議員秘書の兵本達吉氏から、北朝鮮にいると伝えられた。


「生きている! 1、2年で帰ってくる!と、なぜか思いました。でも朝日放送の石高健次さんが、相手は難しい国だから、少なくとも数年はかかると言いました」


数年どころか、それから22年が過ぎた。めぐみさんの拉致からは実に41年が過ぎ、彼女はもうすぐ54歳になる。御両親も同じだけ年を重ね、父の滋さんは85歳になった。


「一時期、体調を崩しましたが、主人はいま頑張っています。私も新潟にいたときのように泣き虫ではいられません。毎日、戦いと祈りの中で今日までやってきました。国民をさらわれて41年間も取り返せない。日本がこんな国ではいけないのです」


拉致というテロ


早紀江さんは、国民を救えない日本国に対して、なぜ、救えないのかと問う。国民の心をひとつにして、安倍晋三首相の下に力を結集して救出してほしいと切望する。朝鮮問題の専門家、西岡力氏が指摘した。


拉致問題を巡っていま膠着状態に陥っているかに見えるが、それはすべて織り込み済みだ、と。安倍首相もトランプ大統領も、北朝鮮に対してこちら側の要求を全然降ろしていないから交渉が動かないだけで、動揺してはならないと強調する。


「これまでの日本のやり方では、北朝鮮との話し合いが進まないと、そのこと自体が問題だとして、日本側が要求を降ろしてきたのです。交渉の厳しさに耐えられず、まず日本が譲歩する。すると北朝鮮が少し反応する。それが何らかの進展であるかのように考える。しかし、それは全く何の解決にもつながってこなかった。大事なことは、こちら側の要求は一切、降ろさないことです」


めぐみさんの弟の拓也さんが語る。


「家族会として度々訪米し、拉致について訴えてきました。アーミテージ元国務副長官にお会いしたとき、どんな解決を望むのか、北朝鮮に決めさせるのではなく、日本のあなた方が決めることだと言われました」


国民の命を守ることが政府の責任だという原則を米国は守り続ける。拉致問題の解決、被害者をどのような形で取り戻すかは、日本人が決めて、それを拉致というテロを犯した北朝鮮に要求すべきだとの指摘は真っ当だ。拓也氏は、米政府中枢における拉致問題についての理解が急速に広がり、深まっていると感じている。


「何度も訪米して活動してきた中で一番辛かったのは、拉致問題を毎回最初から説明しなければならず、そうしてさえ何分の一もわかってもらえない時期が続いたことでした。けれど昨年9月には、殆んどの方が本質的課題を理解していました。国家安全保障会議のアジア上級部長、ポッティンジャー氏は、私が話し始めるより先にこう言ってくれました。めぐみさんをはじめ北朝鮮が死亡と宣言した8人は生きているんでしょ、横田さん御夫妻の娘に会いたいという気持ちはトランプ大統領が娘さんや奥さんを愛しているのと同じです、あなた方の辛い気持ちを必ず大統領に伝える、と約束してくれたのです」


その後、9月19日、トランプ大統領は国連総会での演説で、めぐみさんの事件に言及した。


「同盟国とはいえ、他国の一人の民間人のことを発信して下さった。世界中が改めて認識し、北朝鮮には大きな圧力となりました」と拓也氏。


トランプ政権が後押しする中、安倍首相は最終的には自身が金正恩氏に会い、拉致問題を解決する決意だ。日本が求める解決策は「拉致被害者全員の即時一括帰国」しかない。


日朝議連


この目標に向かって日本は団結しなければならない。にも拘らず、アメリカ政府高官らが拉致に関していま何をすべきかを本質的に理解しているのに比べて、日本国内には非常におかしな動きがある。日朝国交正常化推進議員連盟(日朝議連)がその典型だ。西岡氏の指摘は深刻だ。


「日朝議連が6月に会合を開き、講師に朝鮮総連の機関紙、『朝鮮新報』平壌支局長の金志永氏と田中均元外務審議官を招きました」


金氏は拉致問題は解決済みだと、田中氏は連絡事務所を設けて合同調査をすべきだと、発言したそうだ。


「石破茂氏もこの会に出席しています。朝鮮総連の幹部達は足繁く、日本の政治家の所に通って彼らの考えを吹き込んでいます。石破氏の自民党総裁選挙の公約にも、彼らの主張が入っています」と西岡氏。


 石破氏は東京と平壌に公的な連絡事務所の設置を公約に掲げた一方で、こうも語っている。

「拉致問題の全面解決がなければ、何も進展しないというものからは脱却しなければならない」


拓也氏が切り捨てた。


「このような宥和論はナンセンスであり、妨害工作でしかない」


北朝鮮は国民一人一人に番号を振って管理している恐怖社会だ。その国に連絡事務所を設けて、北朝鮮と共に拉致問題を調査するなど、拓也氏の言うとおりナンセンスだ。


拉致解決には、まだ大きな山場を少なくとも二つ踏み越えなければならない。まず、米朝間で北朝鮮の核ミサイルの廃棄を実現しなければならない。そのためには圧力をかけ続けることも必要だ。二つ目は日朝交渉である。北朝鮮はまだ、日本の世論をだませると思っている。そんなふうに彼らに思わせているのが、日朝議連をはじめとした動きである。日本人はもう北朝鮮の嘘にはだまされない。日朝議連のような考え方を断固、排除し、国民、政治家、政党が心をひとつにして、拉致被害者全員を一括して取り戻す決意を固めるときだ。

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