闘うコラム大全集

  • 2018.12.13
  • 一般公開

日本は既に移民大国、入管法の厳格化を

『週刊新潮』 2018年12月13日号

日本ルネッサンス 第831回


国内の人手不足解消のために即戦力となる外国人労働者の受け入れを進めるべく、出入国管理法が改正される。政府与党は、同改正案は野放図に外国の人材を受け入れるためではなく、これまで殆ど管理できていなかった外国人労働者を管理するためだと説明する。


具体的には外国人労働者を「特定技能1号」と「特定技能2号」に分類し、1号は上限5年間働いて、より高度の日本語能力や専門技術を達成したと、省庁が定める試験に合格することにより認定されたら、特定技能2号に「格上げ」してもらえる。資格が1号のときは配偶者や子供を呼び寄せることはできないが、2号に昇格すれば家族を呼び寄せ、事実上日本に永住できるようになる。


野党の一部は、2号に分類される人々は「結局移民になる」と批判するが、与党や維新の会は、1号から2号に進むには厳格な資格審査があり、2号の資格が取得できるのは全体の5%程にとどまる見込みだと説明する。


また入国在留管理庁を新設し、人員をふやすことで出入国管理がより効果的に行われるとも説明する。現在、日本で働く外国人の中から、驚くべきことに毎年6000~7000人規模の「行方不明者」が出ている。


技能実習生或いは留学生として来日する人々の内、膨大な数の人々が消息不明なのである。彼らは日本のどこかに潜んで生活しているはずだが、法務省は追跡できていない。この「無法」状態は、彼らにとっても日本にとってもよいはずがない。これからは追跡調査もできるようにしたいというのが、入国在留管理庁新設の理由のひとつだ。


私の手元に西日本新聞の連載が書籍化された『新移民時代』(明石書店)がある。留学生や技能実習生の実態が具体的事例で説明されており、現実の深刻さが伝わってくる。


75万人に上る事実上の移民


たとえば殆ど日本語能力のない学生が、日本語資格証明書などの偽造書類を提出して諸国の中で一番働ける日本に留学する。留学生は週28時間労働まで合法である。しかし留学に係る借金の返済や、家族への仕送りのために、多くの留学生はもっと働かなければならない。というより、最初から出稼ぎ目的の留学生は少なくない。


もっと働くために彼らが活用し始めた方法が難民申請だ。審査結果は半年から1年後に出るが、その間にフルタイムで働ける特定活動の在留資格が得られる。申請が却下されたら異議申し立てを繰り返し、特定活動の資格で働き続ける。その間に就職できれば就労ビザに切り替える。こうして彼らは事実上の移民となる。


無論、名目どおりに大いに学ぶ留学生もいる。だが、留学生や技能実習生の実態は日本における外国人受け入れの無防備さを示している。


実は日本はこの他にもっと深刻な外国人問題を抱えている。シンクタンク「国家基本問題研究所」が12月3日、緊急政策提言として発表した75万人に上る事実上の移民の存在である。国会での議論もメディアによる報道もないまま、法務省の匙加減ひとつでこの20年間に急増した、一般永住者の問題である。


日本の永住者は右の一般永住と特別永住の2種類に分かれる。後者は戦前日本が朝鮮半島や台湾を統治していたという特別の事情から、日本に居住していた朝鮮半島や台湾出身者に、まさに「特別に」与えた在留資格だ。彼らには選挙権はないが、その余の事については日本人とまったく同等の権利が与えられている。


大きな潮流として、彼らは、3世4世になるに従って日本に帰化したり、日本人との婚姻で日本国籍を取得したりして減少し、その数は現在33万人程だ。


問題なのが前述の一般永住者である。1998年に9万人だったのが、20年間で8倍以上の75万人にふえた。国基研研究員、西岡力氏の調査によると、中国人が最多で25万人、次にフィリピン人の13万人、ブラジル人11万人、韓国人7万人と続く。


一般永住者は歴史的に日本と特別な関係にあるわけではない。にも拘わらず、特別永住者同様、選挙権がないだけで日本国民と同じ権利を与えられている。滞在期間は無制限で、働く権利も働かずに生きる権利もある。政治活動も全く自由だ。


日本には北朝鮮の金正恩委員長に忠誠を誓う在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)があるが、彼らは日本で多くの権利と自由を保障されていながら、法を破り官憲の捜索を受けたりする。日本人を拉致した独裁国の北朝鮮を賛美し、歴史問題では事実を歪曲して日本を非難する勢力を支えもする。一般永住者の3分の1を占める中国人が、中国版朝鮮総連のような組織を作ることも、現行法では可能なのである。


中国人留学生が集結


一般永住者が急増した背景に橋本龍太郎内閣の下での規制緩和の流れがあった。98年、法務省が入管法22条の解釈を変えたのである。それまでは一般永住の許可要件は日本で20年間、社会のよき一員として暮らした実績が必要とされた。これがいきなり10年に短縮され、さらに特別の技術を持っている人材は5年で是とされた。この件は国会で審議されたわけでもない。メディアで公に議論されたわけでもない。法務省の行政判断によるものだった。その結果、誰も気づかない内に事実上の移民が75万人にふえた。繰り返すが、その3分の1が中国人である。


中国政府は2010年に国防動員法を定めたが、控えめに言ってもこれはかなり危険な法律である。有事の際、在外中国人は中国共産党政権の命令に従わなければならないと定めている。ここまで言えば、多くの人の脳裡に北京五輪の聖火リレーが長野県を通過したときの事件が蘇るのではないか。


その年、チベットの人々は中国共産党の弾圧の凄まじさを世界に訴えようと考え、日本の支援者も思いを共有し長野に集った。するとあっという間に4000人規模の中国人留学生が集結し、五星紅旗が林立したのだ。彼らはチベット人や日本人支援者を取り囲み、ひどい暴力を振るったが、この大量動員は驚くべきネットワークを中国大使館が作り上げていて初めて可能だったはずだ。


中国共産党は外国で自国民を一気に集結させ、暴力行為に走らせるのだ。中国政府はその後、先述の国防動員法を整備した。このような法律に縛られた中国人一般永住者が自衛官を上回る数、日本に存在する。そのことの意味の深刻さを私たちは知るべきだ。


現在審議中で10日にも成立する出入国管理法改正案には、一般永住者の資格要件に関する付帯決議をつけるべきだ。「入管法22条の厳格な運用」を書き込み、法務省の行政判断を以前の在日歴20年に戻すべきである。

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