闘うコラム大全集

  • 2018.12.20
  • 一般公開

韓国大法院判決、恐るべき反日の理屈

『週刊新潮』 2018年12月20日号

日本ルネッサンス 第832回


韓国大法院(最高裁判所)が10月末及び11月末に下した朝鮮人戦時労働者問題に関する判決書にはとんでもないことが書かれている。


「とんでもない」という意味は、単に日韓両政府が1965年に合意した日韓請求権協定に違反するというだけではない。それよりもはるかに深刻で国際法軽視の対日非難であるという意味だ。


12月7日、インターネット配信の「言論テレビ」で女性の論客5人と男性の論客1人の構成でこの問題を中心に2時間にわたって論じた。男性ゲストは、いま朝鮮問題で引っ張り凧の西岡力氏だ。


韓国大法院の判決を貫く主張は「日本統治不法論」である。日本の有志の弁護士が仮訳したものを参考に、私たちが問題にした韓国最高裁判決の最重要のくだりは以下の部分だ。


「原告らの損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権(である)という点を明確にしておかなければならない」


判決は続いてこう述べる。


「原告らは被告を相手に未支給賃金や補償金を請求しているのではなく、上記のような慰謝料を請求しているのである」


判決の他の部分には、原告らは日本で同様の裁判を起こして敗訴しているが、日本の司法判決は受け入れられない、その理由は日本の判決が「日本の朝鮮半島と韓国人に対する植民地支配が合法であるという規範的認識を前提に」しているからだと書かれている。


そのうえで、「日本での判決をそのまま承認するのは、大韓民国の善良な風俗や、その他の社会秩序に違反する」というのだ。


頑として譲らないこと


日本の朝鮮統治は不法だと決めつけ、日本側の主張は全く受け入れないというわけだ。西岡氏が指摘した。


「新日鐵住金を訴えた原告4人は募集に応じて普通に日本に来て、普通に企業で働いて、給料を貰った。未払い給料があったとしても、それらを清算する機会は戦後2回もあった。彼らは無事に帰国し、怪我もしていない。だから韓国政府も彼らには特別な支払いはしていません。しかし、日本統治が不法だったからという理屈をいま持ち出して、慰謝料が発生すると言っているのです」


慰謝料という理屈を適用すれば、およそすべてが対象となる。日本統治下で日本語を習わせられた、神社を参拝させられた、姓名を変えさせられた、精神的に苦しんだなど、何でも慰謝料請求の根拠とされるだろう。


このような要求を日本につきつける土台となる論理が日本統治不法論だ。日韓基本条約と日韓請求権協定の締結までに日韓両国政府は延々14年間も交渉を重ねた。当時も日本の韓国統治は合法だったか否かが激しく議論されたのは確かだ。互いに折り合えず交渉は長引いた。そこで双方が智恵を働かせた。


日韓基本条約第2条には「1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」とある。


1910(明治43)年8月22日は韓国併合条約の調印の日である。日本の韓国併合はそれ以前の種々の条約、協定の積み重ねで、米英露など諸外国も認めるものだった。従ってそれらはすべて国際法に適い合法だとする日本の主張は当然だ。だが、日韓の外交関係を進めるために両政府は以下の案を生み出した。


前述のように、1910年8月22日以前(中略)の条約及び協定は、「もはや無効」としたのだ。


西岡氏が説明した。


「日本側にとっては、韓国は1948年に独立した、もはや日本は韓国を併合していない、だから韓国併合の根拠だった1910年8月22日以前の条約も協定も、もはや無効になった、それ以前は合法で有効だったという意味です。他方韓国側は、『もはや』は副詞みたいなもので関係がない、だから、そんな言葉は無視して、当初から無効だったと解釈したのです」


両者の解釈が異なるときは、両国が合意した英文によって解釈することになっている。英文は日本の解釈が正しいことを示している。


韓国側の主張は不当極まるが、不当判決が出されたいま、65年の協定で請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と言うだけでは、日本側は闘いきれないかもしれない。次なる一手も二手も準備する必要がある。


まず、法律上の問題だ。キモは頑として譲らないことだ。韓国弁護団は強気で、12月4日、被告の新日鐵住金本社を訪れた。新日鐵住金側は韓国弁護団を全く相手にしなかったが、彼らは要請書を置いて帰った。損害賠償の履行方法や、賠償金の伝達方式を含む被害者の権利回復の措置について、今月24日午後までの返答を求める内容だった。


法的闘争の準備を


日本側が応じなければ、彼らは日本企業の資産差し押さえなどに着手する可能性がある。日本側も報復の差し押さえ措置など法的闘争の準備を万全にすることだ。


もうひとつは国際世論を意識した歴史戦への備えだ。日本統治の合法性とは別に、日本が朝鮮人労働者をどのように処遇していたかを事実に基づいて内外に知らせ、慰謝料要求などは筋違いであり不条理だと納得してもらえるだけの情報を十分に伝えておくことが、この種の歴史戦ではとても大事である。その点において日本側は非常に手立てが遅れていると、西岡氏は懸念する。


「現在の外交官は、当時の労働条件や賃金の支払い状況などについてよく知りません。対照的に反日勢力の側は、実は彼らは日本人なのですが、80年代から日本統治不法論を考え、その論理を磨き上げてきました。事実関係については、すべてを反日的視点から資料収集しています。これら反日日本人が韓国側に論理と資料を提供しているのです。彼らの資料は、私たちの側が集めた資料や研究の10倍はあると言っても過言ではありません。彼らの反日闘争は私たちよりずっと早くから準備されていたのです」


それでも日本の企業には、どれだけの賃金を朝鮮の誰々に支払った、朝鮮の誰々はどの募集に応じて、どのような待遇を受けたといった資料が豊富に残っている。事実こそ最も強い説得力を持つはずだ。こうした資料を早く、全面的に公開すべきだ。


これから短期間に、反日学者を除く、少数ではあってもまともな学者や研究者が、企業及び政府とも協力し、日本統治下の朝鮮人の扱いについての実態を最速で明らかにし、韓国司法の不条理を訴えていかなければならない。

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