闘うコラム大全集

  • 2013.01.10
  • 一般公開

特集:安倍晋三総理 対談「独立自尊!私は経済を立て直す!」

『週刊新潮』 2013年1月3・10日合併号
2013年 日本の針路を明らかにする!


安倍晋三総理(58)主導の金融緩和を市場が好感、久々に経済は明るい兆しを見せた。しかし尖閣を巡り中国に翻弄されるなど外交は劣化の一途を辿り、復興や拉致問題等の難題も山積している。新総理と日本復活への展望を語り合った。

櫻井よしこ この度は総選挙での大勝と、総理就任、おめでとうございます。

安倍晋三総理 どうもありがとうございます。

櫻井 「もう一度、日本の立て直しに挑戦しなさい」という神様の思し召しに思えます。すでに様々な仕事を始めておられますが、総理に再登板され、どんな日本を創っていきたいか、存分に伺いたいと思っております。

安倍 はい、確かに今回の総選挙では大勝できましたが、これは自民党に完全に信頼が戻ったうえでの結果ではないと自らを戒めなければいけません。2013年に行われる参院選までに成果や実績を出していかなければならず、緊張感を持った戦いが今後もなお続いていくわけです。

櫻井 その成果についてですが、安倍総理主導で日本銀行に2%のインフレ目標を掲げた金融緩和を促し、同時進行で政府も財政政策と構造改革を行う経済政策、いわゆる「アベノミクス」がすでに市場に好感されています。円高が是正され、長く低迷していた株価が上昇するなど具体的な効果が表れています。今朝、タクシーに乗ったら、運転手さんが「なんだか物事が動いてきましたね」と、なんとなく嬉しそうな声で話していたのが印象的でした。閉塞感に包まれ、塗炭の苦しみに喘いでいた日本経済が良い方向に動き始めたという実感を多くの人が共有する。それがとても大事なことだと思います。

安倍 経済においては、我々は金融政策と財政政策、それに成長戦略の3本柱で危機を突破していきたいと考えております。先の自公政権時代は、円高は是正出来ましたが、デフレからの脱却はあと一歩のところで果たせなかった。この反省の上に立って、経済政策におけるパワー不足を補うため、次元の違う政策を打ち出していこうとしています。とりわけ金融政策については、伝統的な手法にとらわれず、インフレ・ターゲットを設けて、大胆な金融緩和を行うという目標を掲げました。いろんな批判があるかもしれませんが、ご存じの通り、2%という目標を示しただけで、実際に為替は動き、株価も上昇しましたね。

櫻井 日本の株価は2008年のリーマン・ショック以降、半分ほどにまで暴落していました。もちろんどの先進国もリーマン・ショックでダメージを受けましたが、下落率は2割弱です。日本ほど惨憺たる数字に陥った国はありません。

安倍 それは民主党政権下において、政府がやるべきことをやらなかったためです。一方では、仮に株価が上がったって、一部の金持ちの利益にしかならないじゃないかと批判する方もいる。しかし、これは間違いです。なにしろ年金の運用の一部は、株式市場で行っているのですから。したがって、株価を上げていくということはとても大切なんです。たとえば、先に私が政権を担わせていただいた2006年から翌年にかけては、日経平均が約1万4,000円から約1万8,000円にまで上がりました。これによって、3兆円の運用益が出たんです。つまり、経済成長を続け、確実に株価を上げていけば、年金などの財政的な基盤も強化されていくわけで、非常に重要な点だと考えております。我々はこの経済政策で断固としてデフレから脱却するんだ、円高是正を進めるんだという強い国家意思をマーケットに示していきたい。

独立自尊の精神

櫻井 景気浮揚では、物事を前向きに捉える気持ちを持てるか否かが本当に重要ですね。小泉政権時代に経済財政担当相等として構造改革を進めた竹中平蔵さんにお聞きした話ですが、「景気」という言葉は英語にはないんだそうです。日本人はこの「景色を見る気持ち」を持っている。新生安倍政権の全体像を見て、国民の期待が膨らみ、気持ちが上向きになることが、景気を上向きにする大きなきっかけになります。その意味で国民の信頼を勝ちとれるように実績をあげてほしいです。

安倍 分かりました。先の安倍政権時代には、金融の量的緩和のおかげもあり、名目GDPが513兆円に増え、税収も51兆円まで数兆円増加した。しかし、そんな中、2006年の前半に日銀は金融の量的緩和をやめてしまったんです。デフレ・ギャップが埋まったという判断からです。しかし、その後、デフレ・スパイラルに陥り、日本経済は閉塞状況から抜け出せなくなった。もしあの時にインフレ・ターゲットを導入していれば、まだ物価上昇率が足らなかったわけですから、量的緩和は続けられていました。そうすれば、GDPは名目が実質を逆転し、デフレ不況からも脱却出来ていたのではないかと悔やまれてなりません。

櫻井 06年のことは本当にそうでしたね。一方で、物価だけ上昇して、給与が上がらず、ハイパー・インフレになるかもしれないと危惧する声もあります。そうならないように対処できますか。

安倍 それを心配する声があるのは承知しています。しかし、かつて物価目標を設けた国でハイパー・インフレに陥ったところは世界中、探しても一つもないんです。なぜなら、当然、リミットの目標を超えれば、日銀が引き締めに入って、物価を抑制しますから。それができないなら、中央銀行は要らないですよ。

櫻井 なるほど、政策および独立性の両方において日銀問題は非常に重要ですね。ところで、民主党政権を振り返ると、その根本的な欠陥の一つは、バラマキによって、国民の政府への依存心を強めたことです。自分で難局を切り開く気持ちを後退させてしまった。

安倍 経済においても、社会保障においても依存心を強くする政策でした。かつて私が政権を運営していた時より、今は労働者人口が140万人も減ってしまった。その一方で、生活保護受給者は増え続けて200万人を突破し、これにかかる費用は4兆円近くにまで膨張してしまいました。やはり独立自尊の精神が欠如していますね。

櫻井 外交でも独立自尊の精神こそ、非常に重要ですが、いかがでしょうか。

安倍 まさにその通りです。この精神を持っている国には、どこの国も尊敬の念を抱く。しかるに民主党政権にはそんな矜持がなかった。何の戦略もないまま、徒に日米同盟を悪化させ、対中国、対韓国関係においては、非常に低姿勢で臨んだにもかかわらず、結局、どれもうまくいかなかった。

櫻井 尖閣を国有化したのに、民主党政権は何もできませんでしたね。この間、中国には領土や領海、領空侵犯までしたい放題、されてしまった。歴代の自民党政権も本質的に尖閣問題を放置してきた。安倍政権はこの中国の横暴にどう対処しますか。毅然とした態度で臨んでもらえるのでしょうか。

安倍 民主党政権では非常に腰を低くして、中国に対応していましたが、それで結果は逆になった。中国に進出している企業や店舗が中国人に襲われ、焼き討ちに遭ったり、日本人が危害を加えられる事態に発展しましたが、言語道断で、お互いに絶対やってはいけないことです。お互い価値観が違いながら、一衣帯水の関係にある日中が、何かと問題を抱えるのは仕方がない。でも、こういう時に、外務省の人たちは黙って嵐が過ぎ去るのを待とうとしがちです。結果として嵐は過ぎ去らない。いよいよ激しくなって、何度も襲ってきます。だから、譲れない点は譲れないとはっきり相手に伝え、戦略的にきちんと我が国の意見を表明することが肝要なんです。

櫻井 靖国参拝も、他の国からするなと言われたから、しないということはあってはならないことです。相手と真剣に話し合い、こちらの主張を少なくとも論理的に理解させて、総理が靖国を参拝できる状況を作るのが、外務省の本来の役割です。それなのに他国の価値観に従って、外交を推進しているように見えます。安倍総理はどうお考えですか。

安倍 前回の総理在任中に靖国を参拝できなかった事は痛恨の極みだと申し上げました。やはりお国のために一生懸命働き、尊い命を失った英霊たちに国のトップが崇敬の念を表明するのは当然のことで、どの国のリーダーもそうしています。

櫻井 それが出来て初めて日本はまともな国になれますし、国民は日本のために力を尽そうという気持ちにもなれますね。

なぜ「国防軍」が必要か

櫻井 韓国では女性の朴槿恵さんが大統領になります。前任の李明博大統領が竹島上陸を強行し、日韓関係は悪化、朝鮮半島への中国の影響力が強まっていくかに見えます。高まる中国の脅威の前に、アジア太平洋諸国は史上初めて激しい軍拡の時代に入っています。この事態に対し、安倍総理は従来とは違う方向性を打ち出しています。早くからインドとの戦略的関係の重要性を強調なさったように、日本が海洋国家であることを明確にしました。そして日本の海を守るため、海上保安庁を強化し、巡視船など船舶数を増やす。自衛隊の人員や装備、予算も拡充すると仰っています。これらは他の東南アジア諸国もインドも「もっと早くやってほしかった」と、強く要望していることです。

安倍 確かに中国の軍事力だけが突出して、パワーバランスが崩れると、結果として不安定化して、紛争が起りやすくなります。それを崩さないようにするため、日本は日本の役割を果たさなければいけない。そのために総選挙では憲法を改正し、自衛隊を国防軍にすることの必要性を訴えました。

櫻井 国防軍創設には随分批判もありましたが、ナンセンスです。

安倍 そうなんです。これは憲法9条を改正し、現に存在する実力組織を国防軍として定め、シビリアンコントロールも明記するというものです。むろん集団的自衛権の行使も可能とします。自衛隊は国際社会においてはジュネーヴ条約上、軍隊として取り扱われる。そうしなければ権利を失い、たとえば相手国に捕まった時、捕虜として認められず、ただの人殺しとされてしまうんです。「自衛隊を国防軍にするということは、戦争することを前提にしているんですか」と愚かな質問をする人達もいました。なにもこちらから戦争を行うのではなく、攻められた時に対抗して、国民や国土を守らなければいけないでしょう。そういう人には「防衛しなくていいんですか」と言いたい。たとえば、暴漢が家に押し入ってきて、自分の娘や息子をナイフで刺そうとしたら、必死に子どもたちを守って、相手を殴り飛ばすでしょう。治安の悪いところに住んでいて、いざという時に備え、日ごろから体を鍛えている人に、「それは暴漢が襲ってきた時に、相手を殴ることを前提にしているんですか」と訊くのと同じですよ。

櫻井 そもそも自衛隊は英語にすると「セルフ・ディフェンス・フォース」で、国防軍は「ナショナル・ディフェンス・フォース」。「隊」も「軍」も同じ「フォース」です。自衛隊が軍とは違うなんて主張は、国際社会では全く通用しません。安倍政権では、かけ声だけではなく、実際に国防軍創設の実現に向け、歩を進めていただけますか。

安倍 私は自衛隊の諸君に対し、立法府の一員として責任を感じています。彼らが何を嫌がるかというと、海外に出て行った時に、他国の兵士から「お前たちは、『セルフィッシュ・ディフェンス・フォース』だ」とからかわれることなんだそうです。要は、利己的に自分たちだけを守っていると思われている。これに対し、隊員の諸君たちは、「私たちは地域の平和のために命をかけている」という自負がある。だから、セルフという文字を外して、名前を変えてほしいという気持ちが強いんです。だから私はこれをナショナルに変えて、国防軍にしたいと考えているんです。

櫻井 北朝鮮による拉致問題についてもお聞かせください。民主党政権は松原仁担当大臣を置きながら、野田佳彦前首相自ら、松原さんとは異なる人脈を使って交渉しようとしたという確度の高い情報があります。同じ政府内でバラバラの動きをするようでは成果は望めず、結局、何も進みませんでした。いま被害者家族の総理に対する期待感には高いものがあります。

安倍 北朝鮮の体制が変わり、金正恩政権になりました。父親と違い、本人が直接、拉致に関わっていないわけですから、そこに交渉の上でチャンスはある。とはいえ、やはり父親の判断を否定しなければなりませんから、一筋縄ではいきません。私はこの数年、新たに科されなかった圧力をもう一度かけていく必要があると思います。アメリカとともに行う金融制裁などは効果があったんです。こうした金融封鎖に果敢に挑戦して、「拉致問題を解決せよという日本の要求を受け容れざるを得ない」と判断させていきたいですね。

櫻井 震災復興についてもお尋ねします。これも民主党政権によって、「人任せ」の傾向が強まり、福島県の復興が遅れていると思います。震災以降、私はボランティアで福島を訪ねています。避難生活の方々は本当にお気の毒です。ただ、福島市や郡山市で避難生活を強いられている人には、政府の支援に加えて東京電力から1人月額10万円の補償が出ます。所得税もかかりません。このような援助に依存し続けると、故郷に戻って生活を立て直そうという気持ちになかなかなれないのではないかと、被災地の人々自身が真剣に心配しています。私も実は同感です。警戒区域の指定が解除されて、帰れる故郷がある人は、戻って生活を立て直すことこそ大事です。援助はそのような自立を促す方向で行い、生きたお金の使い方をしてほしいと願わずにはいられません。依存心ではなく、自立心を促す援助と補償が、いま何よりも必要だと思います。

安倍 そうですね。復興が遅れているのは、復興庁のあり方にも問題があると思っています。東京で物を言うのではなく、まず現場に赴いて、市町村レベルに出て行き、復興に立ち上がろうとする人々と共に取り組むという姿勢が必要です。補償についても、東電任せではなく、最終的には国が責任を持ち、もっと前面に出て行くべきだろうと考えています。

櫻井 国が責任を持つということを、言葉だけで繰り返し、殆どの施策を現地に任せたのが民主党で、住民の国への不信感もそこから生まれています。ですから、言葉だけでなく、復興の具体策を通して被災地の人々に復興にかける国の意思を実感してもらうことが大事ですね。放射線の除染も問題です。私はかねがね、「年間1ミリシーベルト以上を除染対象値とする」と定めた民主党政権の非科学的な方針が復興を遅らせていると批判してきました。

安倍 櫻井さんの仰る通り、「1リシーベルト」という基準が一人歩きしてしまいました。

櫻井 1ミリシーベルトが安全か危険かの限界線と誤って捉えられています。私たちは普通に生活していて、自然界から年間1・5ミリシーベルトの放射線を、レントゲンなど医療から4ミリシーベルト、食べ物からも0・5ミリシーベルトを受けています。それなのに、すべて1ミリシーベルト以下になるまで除染するというのは非現実的というほかありません。このせいで、本来なら帰れる故郷があるのに、怖くて戻らない人たちがたくさんいます。地域復興を徒に遅らせた民主党政権の責任は本当に大きいです。

2番ではなく世界1の国へ

安倍 いずれにせよ、日本が抱える諸問題を解決するには、国力を上げていく必要がある。そのためには、やはりまず第一に日本経済の再生が急務です。先ほど、金融緩和と財政政策をセットで行うと申しました。この財政政策は、公共投資による財政出動になります。世の中の評判は必ずしも良くありませんが、民間の投資、消費を引き出し、雇用を生み出すため、国民の安全を守るための未来への投資を行いたい。

櫻井 加えて規制緩和等による成長戦略も必要ですね。

安倍 はい。その一例として医療分野が挙げられます。我が国の医療技術は世界に展開出来る力があるのに、薬事法などの規制が厳しくて、医療機器や薬は世界の最高水準には達していない。潰瘍性大腸炎という難病を患っている私が再び総理の座に就くことを可能ならしめた「アサコール」という薬も2009年にようやく認可されたもの。これは他の国より十数年も遅れているんですよ。なぜなら治験の段階で一度、「薬効なし」という判断が下されたからだそうです。私には劇的に効果があり、他の多くの患者もこの薬に救われているのに不思議な話です。それに我が国が誇る、ノーベル賞受賞者の山中伸弥・京大教授のiPS細胞・再生医療に関わる薬についても然り。日本ではまだ3つしか創られておらず、それに比べ、他の国はたくさん創薬していると聞きます。それも規制や税制上の問題ゆえです。他にもこういう分野があり、それらを網羅的に見直していきたいですね。

櫻井 国際社会での競争力は即ち教育力です。子どもから大人にいたるまでの教育改革にも取り組み、日本再生を推進してください。期待しております。

安倍 ありがとうございます。我々は民主党政権と違い、「2番」ではなく、「世界1」を目指しますから。あらゆる分野で世界1になることによって、日本を復活させます。

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