闘うコラム大全集

  • 2022.09.08
  • 一般公開

岸田首相の明確な意見こそ聞きたい

『週刊新潮』 2022年9月8日号

日本ルネッサンス 第1014回


安倍晋三元総理銃撃事件はなぜ防げなかったのか。日本国の歴史に残る痛恨の事件について、8月25日、警察庁が検証結果及び警護の見直しに関する報告書を発表した。50頁を超える同報告書を読んで、安倍総理暗殺事件の総括がこんな中途半端なものなのか、と憤りが湧いてくる。


報告書は「現場における警護の問題」の項で「本件結果(安倍総理殺害)を阻止することができた可能性はなかったとはいえない」とした。


また安倍総理が到着する前、奈良県警警備部警備課長が現場で「たまたま」、犯人の山上の近くにいたが不審者として認識できなかった、その時点で総理後方が警備の空白となっている状況を見ているのであるから、対応措置をとるべく指揮する必要があった。そうしていれば、「事件阻止の可能性は高かった」と書いて、奈良県警の責任を印象づけている。


現場で安倍総理の身辺を警護した4人については以下のように書いた。4人とは奈良県警の警察官3人と警視庁の警護員、つまりSP1人である。


「いずれの身辺警護員」も「被疑者(山上徹也容疑者)による接近を認識しておらず」「発砲音を銃器によるものと即座に認識するに至らなかった」、そのため「本件結果を阻止することは実際上困難であった」、しかし、身辺警護員は山上の接近に「気付いている必要があった」。


一発目の砲撃音を聞いてもほぼ全員がただ立っていたあのシーンを想い出す。


現場における前述の4人の具体的な動きも説明しているのだが、同じような内容が繰り返されている。「犯人の接近に気付かなかった」「発砲音があったが総理が銃撃されたと理解できなかった」「それはやむを得なかった」というものだ。


「やむを得ないと認められる」という記述は幾度も登場し、その度に溜息が出る想いだった。


警視庁の責任


報告書を読んで心に残るのは次の二点の主張である。➀奈良県警が安倍総理後方の警備の空白地帯を埋めておくべきだった(前述したように、これは奈良県警の責任に焦点を当てる書き振りだ)、➁奈良県警3人、警視庁派遣のSP1人の現場における状況はやむを得ないことばかりで責任は問えない。


加えて、もう一点報告書には書かれていないことがある。警視庁の責任に全く言及していないのだ。総理の身辺警護を担うSPは警視庁が派遣する。SPの訓練も全て警視庁の責任の範疇だ。にもかかわらず、警視庁による警護体制の欠陥について全く指摘がないのである。


第一に問いたいのは、安倍氏が現役の首相でなくなったからといって、SPを1人しかつけないという対応でよかったのかということだ。総理を退けばSPは2人――1日交替のため、常に随行するのは1人というのが規定だそうだ。規定であるから致し方ないと警視庁は言うのであろう。しかし、安倍氏は注目度も高く影響力も強い政治家だった。特定の勢力は安倍氏を強く敵視していた。であれば、人員配備については状況をよく見たうえで、ふやしておくべきだった。


報告書は、以降は要人警護を強化するとしたが、なぜ、あの時点で配慮していなかったのか。警視庁の姿勢を質すべきだと思う。


もうひとつ、SPの緊急時対応について、訓練は十分だったのか、という点だ。報告書はSPが対応できなかったのは「やむを得ない」と繰り返すが、身内に甘すぎないか。奈良県警の責任も大きいが、一番責任を負うべきは警視庁なのだ。


一般論で言えば日本の警察はよくやっている。しかし今回の事件は、世界のセキュリティ関係者が呆れる大失態だった。にもかかわらず、検証作業では肝心の問題に全く触れていない。十分な反省なくして日本警察の立て直しは難しいだろう。


安倍総理殺害犯の山上が統一教会への恨みに言及したことから、統一教会問題について狂騒曲とでも言うべき報道が始まった。危機管理の観点から岸田文雄首相は同問題について自身の考えを基軸にして取り組むべきだ。世論の動向に振り回されるのでは何も解決しない。


統一教会による犯罪的商行為、霊感商法は今でも続いているのか、安倍総理は被害者救済の法整備を2018年に行ったが、効果は出ているのか。国会に特別委員会を設置し、徹底的に調べさせるべきだ。


その上でメディアが過熱報道を続ける「統一教会の関連団体」と政治の関係についてはきちんと整理して論ずるべきだ。「関連」とはどういう関係なのかなど明確に定義すべきだろう。


反共新聞の誕生


立憲民主党幹事長に返り咲いた岡田克也氏が、8月26日、統一教会の「関連団体」とされる日刊紙「世界日報」の取材を受けていたことについて陳謝した。「極めて申し訳なく、残念なことだった」「当時、世界日報と旧統一教会の関係は承知していなかった」「弁解の余地はなく反省している」などと述べている。


そこで「世界日報」に質した。同紙いわく、1975年、内外を共産勢力が席巻する状況下、自由主義体制を守るという動機で創刊された。創刊時は朝毎読日経産経、5大全国紙とNHKの記者たちが社員となって紙面作りや営業に携わった。そのような日刊紙の必要性を説いたのが文鮮明氏だった。渡部昇一氏はかつて、反共新聞の誕生は評価するが、なぜ、日本人ではなく、韓国人が言い出したのか、それが残念だと語っている。


ただ、創刊時から今日まで世界日報と統一教会の間に資本関係は全くないという。編集内容も、たとえば「竹島は日本の領土」という立場をとっており、韓国に傾いているわけではないともいう。


資本面、編集面において統一教会との関係で不都合な点はない、それなのに「関連団体」とメディアで言われただけで、なぜ、関係を断ち切られるのか、と世界日報側は問う。報道の自由の侵害だと彼らは言う。岡田氏は「弁解の余地がない」と陳謝したが、本来このような陳謝は不必要だろう。


岸田首相は、「聞く力」だけでは首相は務まらないことを学ぶべきだ。自身の判断ができないために聞くのでは、日本国が漂流する。自身の考え方や判断をもっと前面に出して、国民を主導することが求められる。


安倍総理の国葬儀において、弔意表明の閣議了解を見送ったのはなぜか。世論を恐れたとの印象が残る。立派な功績を残した類い稀なる政治家への敬意と感謝を表するために国葬儀を執り行うとなぜ、言えないのか。そんなことだから支持率も下がるのであろう。


「朝日新聞」などが不条理に叩いても、安倍総理は戦い続けた。安倍総理は自分の判断を信じた。日本のためになると信じて、戦うことを決意した気概が安倍総理への固い支持を生み出していた。政治家は信念、芯を持つことが大事だ。それなしには長持ちしないと私は感じている。

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