闘うコラム大全集

  • 2023.01.12
  • 一般公開

令和5年、日本人は賢く強くなろう

『週刊新潮』 2023年1月5・12日号

日本ルネッサンス 第1031回


ウクライナ侵略戦争はプーチン露大統領が戦争遂行を諦めるまで止まない。2022年末のゼレンスキー・ウクライナ大統領の訪米を受けて、米国はウクライナを敗北させない構えを一段と強化した。ウクライナ戦争を終わらせる道はプーチン氏を敗北させ、停戦に追い込む道だ。


ウクライナ戦争が長期化し、プーチン氏が凋落する中で、中国の習近平国家主席は22年10月に事実上の終身皇帝の地位を固めた。その直後から、国際社会の舞台を駆け巡り始めた。10月末以降11月中旬までに習氏が会った首脳はベトナム、独、米、仏、蘭、南アフリカ、豪州、韓国、セネガル、アルゼンチン、スペイン、インドネシア、伊、フィリピン、シンガポール、日本、ブルネイ、ニュージーランド、パプアニューギニア、チリ、タイなどである。


一連の首脳会談はさながら盟主習氏が各国の朝貢を受けるかのような設定で行われた。習氏が満面の笑みを浮かべて待つ会見場に各国首脳が喜びの表情で入り、習氏に歩み寄り握手をする。


そうした演出の下、習氏は諸国を、取り込むべき国と警告すべき国に巧みに仕分けし、あらゆる分断を企んだ。カナダに厳しく独に優しくして先進7か国(G7)を分断し、米英に厳しく豪州への姿勢は軟化させた。AUKUS(豪英米)体制にヒビを入れたいためだ。中国の最終目的は米国を主軸とする陣営内に不協和音を作り出し米国の影響力を殺ぐことだ。


そうした中、中国の神経に障ったのが、岸田政権が12月16日に発表した安全保障に関する3文書だった。戦略3文書は、まだ不足の面や制度的な欠陥が目立つとはいえ、本質において安倍晋三元総理が唱えた「日本を取り戻す!」という精神を表したものだ。国際情勢の厳しい現実から目を逸らして、国際社会を善意と友情の殿堂であるかのように見做してきた戦後日本の在り方を、本質的に変える画期的文書だ。


憲法前文に示された「平和を愛する国際社会」は存在しないと事実上、明記し、日本国は現実を見ることを重視すると宣言した。軍事力強化に向けての諸施策は、日本国は戦力を持たないとし交戦権を否定した9条2項と真っ向から対立する。


「侵略国」「言動を慎め」


中国は日本のこの変貌振りと防衛費対GDP比2%目標を余程不快に思ったのであろう。同日の記者会見でわが国を「侵略国」と呼び、「言動を慎め」と命令した。翌17日には中国人民解放軍(PLA)が沖縄南方の海上で空母遼寧を舞台に大規模軍事演習を展開してわが国を恫喝した。戦略3文書を発表しただけでこの反応だ。日本がまともな普通の国になるために軍事力をさらに強化し、憲法改正をも実現しようとすれば、習政権は必ずもっと強い恫喝作戦に走るだろう。


しかし習氏の足下はなんと脆弱なことか。増え続けるコロナの死者を満足に弔うこともできない。コロナ対応のさらに向こう、中国共産党の支配そのものに根源的な疑念を抱いた若者たちの白紙運動はいつ再び巻き起こるか、誰も予測できない。形の上で永久独裁政権を作ってみたものの、絶対権力者の習氏に退陣を迫るという驚愕のデモが、第一波だけで終わる保証はない。人間の心に閂(かんぬき)をかけて永遠に黙らせることなどできはしない。


それでも習氏は世界を従わせ、中国共産党の色に染め上げたいと切望する。共産党の鉄の規則は米国の自由主義に優ると確信し、米国に替わって覇権を打ち立てようと目論む。中国に従いさえすればあらゆる悪徳に目をつぶってやるという姿勢で弱小国家のリーダー達を腐敗の沼地に誘いこむ。汚職も裏金も国民弾圧も反対者の殺害も、中国共産党と習氏への忠誠さえ示せば黙認される。


そんな中国になびく貧しい国々の、国家観も誇りもない指導者たちは少なくない。従って中国支持の国は数の上ではふえていくだろう。だからと言ってその先に生まれる中華の価値観に染まった社会や国を大人しく受け入れるわけにはいかない。この局面で、心を決めて戦わなければならないのだ。


中国が最大限警戒し、敵視する米国はどうだろう。彼らは深い分断に悩んでいる。富、宗教、人種、性、教育などあらゆる面でアメリカ社会は分断され、アメリカ建国の精神さえも否定する極左リベラルの価値観が広がっている。バイデン氏は2年前、アメリカの分断を埋めると公約して大統領に就任したが、分断は逆に深まっている。それでもその米国が西側の自由主義陣営を支えている現実は否定できない。


世界最強の米国はこれまでに日本円で3兆円近くをウクライナ支援に充てた。ロシアに向き合い、中国を最大の挑戦と位置づけて経済戦争を展開中だ。中国との対決姿勢は民主・共和両党が共有する米外交の堅い基盤である。


国土防衛の強い意志


米中露のせめぎ合いの中で、日本の担う役割は私たちが考えるよりはるかに大きく重い。日本が米国の側に立ち、或いは欧州諸国との協調を深め、自由主義世界に対する専制独裁の中露の挑戦を抑止するのは当然の責務だ。


だが、米国と協調する、或いは欧州と力を合わせるにも、私たちは世界の国々と較べて歪(いびつ)な日本国の構造を修正できずに今日に至っている。憲法のことだ。自衛隊の手足を縛り、自衛隊を通常の軍隊ではない枠内にとどめる憲法ゆえに、わが国は国防についてはさまざまな面で周回遅れの状況にある。


ウクライナ国民はプーチン氏の侵略に必死で抗っている。戦況がさらにロシア不利に傾けばプーチン氏は核使用に踏み切りかねない。それでもウクライナ人は戦っている。


中国はロシアよりも賢く、習氏がプーチン氏と同じことをするとは思いたくない。しかし、万が一、そうなったら私達はどうするのか。ウクライナ人と同じように戦って国を守れるか。この問いから目を逸らすことは、日本の大人として無責任だ。


今回の戦略3文書はそんな危機を招かないために日本の軍事力を最速で強化するものだ。中国に軍事侵略させないために最大級の抑止力、つまり軍事力を構築する計画である。


戦争は起こさせた時点で、当事国にとって敗北なのである。国民の命を奪われ国土は荒廃するからだ。だから戦争は起こさせてはならない。そのために、戦争を仕掛ける国や民族にはこれ以上ない程明確に意志を伝えなければならない。日本国に手を出す者は許さない、阻止する、反撃する、追い返す、と。日本国と国民は国土防衛の強い意志を持っており、決して屈しないと、事ある毎に明確に伝えることが大事だ。


その上で、言葉を裏づける力が要る。そのための軍事力であり、戦略3文書だ。だがそれだけでも不十分だ。周回遅れの日本を他の国々と同じ水準に引き上げるために、是非ともしなければならないのが憲法改正である。令和5年の最重要の課題だ。

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