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闘うコラム大全集
- 2025.05.08
- 一般公開
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自民党再生へ、萩生田氏の決意
『週刊新潮』 2025年5月1・8日合併号
日本ルネッサンス 第1144回
4月18日、自民党元政調会長の萩生田光一氏が「言論テレビ」で語った。
「先日、高市(早苗)さんとゆっくり食事をしました」
高市氏は「めちゃくちゃ元気」で「闘う気力は全然衰えていないと感じた」という。2024年9月の自民党総裁選挙での反省点や感じるところを話し合ったそうだ。
別の日、雑誌『正論』で萩生田氏は元経済安全保障担当大臣の小林鷹之氏と対談した。氏は「安倍さんから『小林鷹之っていいよ』と言われた、つまり面倒見ろよという話だった」と振りかえる。
萩生田氏は小林氏が前回の総裁選に勇気を出して出馬したことを高く評価しつつ、こうも語った。
「政権を担うなら経験値はひどく大事。なので今とにかくブルペンで投げ込んでくれと言っています。次の総裁選に出るか出ないか、今決める必要はない。自民党に小林鷹之ありと、皆が知ってくれた。だから、いつでも試合に出られるように準備しておくべきだ、と言いました」
その上で「今度は3人で集まろうねと、そんな話をして」いるそうだ。
周知のように萩生田氏は、自民党執行部によって「役職停止1年」に処せられ、昨秋の衆院選挙では公認もされなかった。苦しい選挙を無所属で勝ち上がったが、自民党に戻ることを許されず、一時的に「会派」に属することになった。そして4月3日、役職停止が解けた。
安倍晋三総理と共に活動していたそれまでの日々と較べて、この1年間は想像できない程自由な時間があった。自分を見つめ、多くのことを考えることができた貴重な日々だったという。それは本当に大事な時間であったに違いない。萩生田氏をずっと観察してきた立場から、何かが変わった、と感ずる。失礼な言い方かもしれないが、ひと回りもふた回りも成長した印象である。
「反石破」「反自民」
役職停止期間の終了で、萩生田氏に石破茂首相降ろしの狼煙を期待する声がある。萩生田氏が語る。
「ここで私が批判しても何も始まりません。私は自民党を自ら傷つけるつもりはないです。私は石破さんみたいに自民党から出たことないですから。苦しい時も、地方議員として、自民党再生のために頑張りましたので、そこは根っこが違うと思っています。私は誰がリーダーでも自民党を支えますよ」
萩生田氏は党内民主主義で選んだ石破氏を自らの手で引きずり下ろす考えはないと明言した。リーダーの出処進退は自分で考えることであり、政権選挙である衆院選で大敗北したにもかかわらず、続投を決意した石破氏にはそれなりの覚悟があるはずだというのだ。
安倍、麻生太郎両氏、古くは宮澤喜一氏にも、選挙での敗北を理由に辞任を迫った石破氏だが、自らの大敗北には頬被りだ。この厚かましさに耐えきれない自民党支持者は、半年前は「反石破」だった。しかし今は「反自民」である。
4月時点で石破内閣の支持率は23.1%、不支持率は51.2%に跳ね上がった。それでもオールドメディアは石破氏の無為無策を糾弾せず、逆に持ち上げる。朝日やNHKなどは石破氏の奇妙な親中感やリベラル志向を好ましいと考えているのであろう。野党第一党の立憲民主党も石破内閣の続投で6月の都議選、7月の参院選を有利に戦えると見て不信任案提出を曖昧にしている。
自民党には残された時間はない。都議選の前に石破氏を辞任させられなければ都議選、そして参院選での大敗北は免れない。またもや大敗北しても、石破氏は立民などと連立を組んで生き残ろうとしかねない。
そうした中で、旧安倍派、とりわけその中心人物である萩生田氏の動向に関心が集まるのは自然な流れだ。衆議院で60人を擁する最大派閥であった安倍派は昨年10月の選挙で20人に激減した。とはいえ、彼らは安倍氏の提唱した外交、経済、日本国のあり方などを支える価値観を引き継いでいる。彼らが再びその力を発揮できれば、世界大混乱の荒波を乗りこえ、日本が国際社会で重要な役割を果たす道を切り拓けるはずだ。
萩生田氏は約3か月前、言論テレビで日本立て直しには保守の大同団結が必要だとし、志を同じくする人々をつないでいく接点になれるのであれば自分がなると語った。大同団結に向けての動きで、高市、小林両氏に関してはすでに触れた。で、自身についてはどうなのか。
「僕は策を弄して総裁を目指すつもりは全くありません。しかし日本国のために本当に命がけでやれることがあるのだったらやる。ブルペンで投げ込みはしないけれど、肩は壊れていてもいつでもマウンドに立つと言ってきました」と、笑った。
日本の名誉
覚悟を語った萩生田氏の目に、石破外交はどう見えているだろうか。総理特使として訪米した赤澤亮正氏は「格下も格下」の自分にトランプ米大統領が会ってくれたと大感激してみせた。日本国代表が「格下の格下」だとへり下る。赤澤氏は日本の名誉をどう考えているのか。
萩生田氏が語った。
「この訪米にはすごく大事な意味があります。世界で一番最初に交渉する日本が出した結論が、同じような状況に陥っている他の数十の国々にも影響を与えます。日本だけうまくいけばいいという発想でなく、世界に向けた関税政策がどれほどアメリカにとってマイナスか、世界の国々との間で何が問題なのか、しっかり狙い球を絞ることがトップバッターの日本の使命だと思います」
安倍氏とトランプ氏の友情を対話の土台とし、大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希3選手らの活躍も含めた日米の収支を、自分なら語ると氏はユーモアを交えて言う。またトヨタなどの日本企業がアメリカで生産する製品はアメリカの製品として輸出され10.8兆円をアメリカにもたらしている。加えて日本はアメリカの人工知能の使用料に6兆円を支払っている。これらを合わせると、日本の対米貿易は黒字でなく赤字になる。
こうしたことを取り混ぜてトランプ氏に説き、同時に価値観を共有するEUなどの同志国、高い関税をかけられているアジア諸国を如何に包摂していくのかについて、リーダーシップを発揮しなければならないのが、今回の訪米の最重要の意味だったと萩生田氏は強調した。
中国の習近平国家主席はこの時期にベトナム(関税46%)、マレーシア(24%)、カンボジア(49%)を歴訪し、彼らとの連携を深める姿勢を見せた。萩生田氏は、実は日本こそが外務、経産両大臣らが手分けしてこれらアジア諸国を訪れ、扶(たす)け、信頼を築くことが大事だったと指摘する。
自民党には安倍外交の下で経験を積んだ人材が少なくない。石破首相がそうした人々の力を結集して米国に臨んだら、格下の格下などと卑下することもなかっただろう。自民党再生に向けた萩生田氏らの動きが加速することを願うものだ。
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