闘うコラム大全集

  • 2026.04.09
  • 一般公開
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日本の国益は米・イスラエル支援だ

『週刊新潮』 2026年4月9日号

日本ルネッサンス 第1190回


風雲急を告げるとは今の状況を言うのだろう。トランプ米大統領は中東に追加部隊を送り続けており、佐世保基地からは強襲揚陸艦「トリポリ」が、沖縄県のキャンプ・ハンセンからは第31海兵遠征部隊が到着した。さらに米海軍の強襲揚陸艦「ボクサー」も、陸軍第82空挺師団も投入されると見られる。


イラン側は、強硬派の中の強硬派と評されるガリバフ国会議長が3月29日、「我々の軍隊は、米地上軍を打ちのめす為、待ち構えている」との声明を発表した。


他方、サウジアラビアを筆頭に湾岸諸国もイランへの軍事攻撃に踏み切るとの見方が強まっている。サウジは当初、使わせないとしていた国内の基地、キング・ファハド空軍基地の使用を米軍に許可した。サウジ外相は「湾岸諸国が(イランの攻撃に)反応できないという見方は誤りだ」と語っており、皇太子はイランへの抑止力を再確立するため徹底的に戦うよう、米国に強く迫っている。


サウジ、UAE、カタールなどが米国、イスラエルと共に参戦する可能性が否定できない一方で、すでにイエメンのフーシ派がイラン支援で参戦した。ロシアと中国は陰に陽にイランへの支援を継続中だ。


イスラエルが3月18日、ホルムズ海峡の北、世界最大の内陸の海、カスピ海を攻撃したのはプーチン氏への強い警告だっただろう。カスピ海はプーチン氏が自由に悪事を働くことのできる海だ。ウクライナへの侵略開始以降、2023年だけでプーチン氏はこの海を経由してイランの砲弾30万発超、弾薬約100万発を手にしたと米紙WSJは報じている。今もロシアはカスピ海経由でイランの無人機、シャヘドなどを手に入れ、食糧などを与えている。また米艦船や戦闘機の位置情報も与え、対米戦を扶(たす)け続けている。


戦略上の大失敗


確かなことは戦線の広がりがとまりそうにないことだ。トランプ大統領は米・イラン間の交渉は「極めて順調だ。間もなく合意する」と言う。だが、万が一、不首尾に終わり、米・イスラエルの地上軍が投入されれば、戦争の長期化が予想される。その時わが国はどう対処すべきか。選択肢は三つだ。⓵米・イスラエルを支える、⓶米国とイランの仲介を試みる、⓷イランを擁護する、である。


後述するように⓷は論外だ。⓶は少なからぬ「識者」が唱える主張で、わが国とイランは特別の関係にあるから、話し合いができる、というものだ。特別の関係とは何かと問うと、イラン石油を真っ先に買いつけた実績、及びずっと買い続けている実績だという。だが、その絆はどれだけ強いのか、ホルムズ海峡と経済を人質にして国際社会の混乱を狙う革命防衛隊と本当に話し合えるのか、私は疑問に思う。国益上、わが国の取るべき道は⓵しかないのである。


3月27日、駐日イスラエル大使、ギラッド・コーヘン氏をシンクタンク「国家基本問題研究所」に招いた。イランとの軍事紛争について語る前に、コーヘン氏が問いかけたことが印象的だった。氏は1994年6月を記憶しているかと尋ねたのだ。


当時、北朝鮮の金正日氏は核兵器製造に至るウラン濃縮を進めていた。西側の度々の警告を無視する北朝鮮に、クリントン米大統領は爆撃を加える決意を固めつつあった。


そこにカーター元大統領が介入し、話し合いでの解決を提案した。平壌訪問と金日成主席との会談で、北朝鮮は米国の要求を全て受け入れ、核開発中止を誓約した。見返りに西側諸国は軽水炉建設、エネルギー及び食糧などの支援を与えた。


それから30年余り、現在北朝鮮は核弾頭50発、日本を狙う中距離ミサイルを50基、米国を視野に入れた大陸間弾道ミサイルの性能を高めてもいる。私たちは騙されたのであり、核保有を決意した国を交渉で阻止することはできないということだ。


台湾有事の際、中国は必ず、ロシアと北朝鮮に陽動作戦を要求すると考えてよいだろう。核を持つ三つの独裁国がわが国を取り囲んでおり、米軍とて三正面作戦はできない。北朝鮮に核保有を許したのは戦略上の大失敗だった。


もうひとつ大使が語ったのは如何にして国民を救うかだった。23年10月7日、イランが支援するテロリスト勢力、ハマスがイスラエルを襲い、約1200人を殺害し、251人を拉致した。イスラエルはハマスの拠点を徹底的に攻撃し、2年余りかかったが最後の1人まで人質全員を取り戻した。ご遺体となって帰ってきた人もいたが、それでも全員を取り戻した。その時イスラエルの人たちは黄色のリボンを外した。


私の胸には今もブルーリボンがある。拉致被害者全員が帰国するまで、決して拉致を忘れないという誓いのリボンだ。しかし13歳で拉致された横田めぐみさんは61歳になった。イスラエルは2年余りでリボンを外したが、私たちは50年近くたっても、ブルーリボンをつけ続けている。こんな国であってはならず、軍事力を含めてあらゆる力を行使して、国民を守り、取り戻せる日本になるべきだと強く思ったことだ。


中東全域に核が広がる


革命防衛隊に支配されるイランは60%に濃縮したウランを440キロ保有するところまで行った。濃縮度を90%に上げれば核兵器ができる。その直前で、イスラエルと米国はイランを攻撃した。


革命防衛隊はイスラエルを地球上から抹殺すると公言してきた。先述の10月7日の暴挙に見られるように彼らはハマス、フーシ派などのテロリスト勢力を使ってイスラエルに代理戦争を仕掛けるのだ。


イランに核を持たせた場合、核は当然、テロリストの手に渡るだろう。またイランの核保有にはサウジ、UAE、トルコなどが即時反応して彼らも核を入手するだろう。中東全域に核が広がる。そんな事態は絶対に避けたい。


主たる武器装備はあらかた破壊されたと言われるが、3月20日、イランはインド洋のディエゴガルシア島にある英米の軍事基地に向けてミサイル2発を発射した。1発は手前に着水、1発は米軍のSM―3ミサイルで撃墜された。これまでイランのミサイルの飛距離は2000キロ内だったが、ディエゴガルシアまでは4000キロ以上だ。彼らは確実に飛距離を延ばし、欧州諸国、さらに米国をも狙う力をつけつつある。WSJは3月24日の社説で「彼らがミサイルをふやし距離を延ばし精度を上げる前に、トランプ氏が行動を起こしたのは正しかった」と書いた。


トランプ氏への好悪は横に措いて、日本の国益とは、米国に強くあってもらうこと、中露イラン北朝鮮(CRINK)に国際社会の主導権を渡してはならないということだ。その為に、米国とその戦略に出来得る限りの貢献をするのがよい。

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