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  • 2012.10.26
  • 一般公開

安倍晋三自民党総裁「歴史問題での慎重発言の心」

 対談を終えて第一に感じたのは、夜9時からの生放送にもかかわらず、安倍さんがとてもお元気そうだったことです。近い将来の首相就任を心に刻んでいるせいか発言は慎重でしたが、きちんとした国家観をもっていることが伝わってきました。

 自民党総裁に再就任して、秋の例大祭で靖国神社に参拝したことに、多くの人が納得しました。「日本のために戦った兵士のために国のリーダーとして 冥福を祈り、崇拝の念を表すことは当たり前で、外国にとやかく言われることはない」という安倍さんの言葉は一国のリーダーとしては極めて真っ当なものです。一方で、安倍さんは「現実問題として、日本と中国の間で様々な問題で緊張感が高まっており、それをコントロールしていくのも重要な使命となっていく」とも語りました。

 中国とどう相対していくかについて、「日本と中国の関係を見るだけではなく、地球全体を俯瞰しながら戦略を構築する必要がある。まずは日米同盟関係の再構築、当然日米首脳会談を最初に行い、強い日米関係が戻ったことを内外に示していく。ASEAN,インド、オーストラリアなどとの関係を強化していく中で、中国との関係を考えていく」と語ったのが印象的でした。

 これは安倍さんの持論でもある海洋国家連合の考え方でしょう。インド洋と太平洋における民主主義国家の交わりを深めることの重要性を説いたものです。アジアで最も進んだ民主主義国の日本と世界最大の民主主義国のインドが、戦略的連係関係を持つべきだと主張したのは、総理大臣だった時の安倍さんでした。こうした大局にたった見方を披露する一方で、歴史問題に対する安倍さんの発言は前述のように慎重さが目立ちました。

 中国は、常に日米の分断を図り、日米間に打ち込む楔として靖国参拝を初めとする歴史問題を政治的に利用します。例えば、米国に対して「米中は帝国主義の日本と共に戦ったではないか。軍国主義、帝国主義、ファシストの延長線上に靖国問題はある」という主旨の主張をします。日本がこの中国の情報戦を軽く見ることは許されません。靖国神社参拝問題が誤解されれば、実際に日米間に亀裂が生じることも考えられます。だからこそ、日本の総理大臣として靖国参拝を初めとする歴史問題について同盟国に情理を尽くして説明し、歴史問題が逆手に取られることがないようにすることが必要です。こうしたことを安倍さんは考えているのでしょう。安倍さんの慎重姿勢は歴史問題の壁をいかに乗り越えていくか、深く思いを巡らせているということだと解釈しました。

 私は期待を込めてそのように解釈しましたが、ここは実は安倍さんの踏ん張り所なのです。前回、総理だった時に靖国神社を参拝しなかったことを安倍さんは激しく後悔しました。その苦い体験を通して、より強い信念と覚悟を身につけたかどうかが、これから問われるのです。

 次に、尖閣問題についても安倍さんの考えは真っ当でした。首相に就任すれば海上保安庁及び海上自衛隊の予算を大幅に増やし、同時に日米同盟を強化すると明言したことは、弱みを見せることが侵略を招き、十分な力を備えて初めて侵略の野望を抑止することができるという国際社会の常識を踏まえたものです。

 北朝鮮に対して話し合いだけでは何も進まず、圧力を加えて初めて状況が動くのと同じです。民主党政権では尖閣諸島の防衛も日本の国防も危うさがつきまといます。けれど、安倍さんの考えが実行されれば少なくとも中国は容易には手出しできなくなるはずです。日本には本来、中国を抑止する十分な力があるのであり、私たちはそのことを忘れたくないものです。


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