元気になるメルマガ

  • 2013.01.03
  • 一般公開

2013年は、日本が戦後最大の決断を迫られる年
日本は自主独立の国造りをめざせ!

 内外に多くの課題を抱えて打ち沈んでいた日本が自民党安倍晋三政権の誕生で少し元気が出てきたと実感しています。

 元気が出始めた理由は、たとえば、行き過ぎた円高が是正され、株価が2011年の東日本大震災以前の水準まで目に見えて上昇したなどということもあるでしょう。

 株価は国際資本に大きく左右されます。日本の株式市場に外国資本が流入し株価を押し上げたことは、国際社会が新政権の打ち出した新しい方向性を評価している、つまり、新政権の目指すところは経済原理からいって合理性があるということを意味します。

 活気が戻ったもうひとつの理由は、日本政府の考え方がわかり易くなったことにあるでしょう。一般論ですが、エネルギー政策をはじめ、大きな課題について方向性が見え始めたことで仕事や暮しの見通しも立ち易くなったのではないでしょうか。

 新政権の原理原則として見えてくるのは、してはならないことはしない、するべきことはするという、至極単純ながら実は大事な価値観です。

 勿論自民党政権が信頼に値するか否かは、これから私たちが厳しく見て判断していかなければならないことですが、少なくとも、政府が何を目指しているのかは、以前よりわかり易くなりました。

 政府が目指していることのひとつの具体例が外交・国防政策の強化です。実は私は、2013年の今年は、日本が戦後最大の決断を迫られる年になると考えています。世界はいま、どの国も中国との経済関係を維持しなければならず、他方でその中国の軍拡と脅威に晒されて、安全保障、軍事面で米国との関係を深めなければ自国の存続さえも危うい状況です。日本も例外ではなく、米中との関係を各々巧みに保ちながら、他方で必死に外交・国防力を強化することなしには生き残れないと考えます。

 中国が1989年以来の軍拡で世界第2の軍事大国となり、領土拡張の野望を隠そうとしない今、日本はまず自力で領土領海と国民を守る決意を固めなければなりません。同時に米国やアジア諸国との協力を進めなければなりません。その意味で安倍政権が自衛隊と海上保安庁の予算を目に見える形で増額し、同時に日米安保条約をさらに強化する方針を明らかにしたことは正解です。

 日本だけでなく、アジア・太平洋諸国のおよそ全てが①自国の軍事力の強化に大きな努力を払う、②米国との軍事、安全保障における協力関係を強化し、緊密化する、という2つの方針を打ち出しています。



 何処に向かう?習近平新体制
これもおよそすべて、中国が剥き出しにしている野望と脅威のせいなのですが、肝心の中国は習近平新体制の下でこれからどのような方向に行こうとしているのでしょうか。具体的に中国の活動を見てみましょう。

 中国国家海洋局の「海監3隻が12月31日午後、わが国の領土である尖閣諸島の領海を侵犯しました。安倍政権が発足して初めての領海侵犯です。中国は昨年12月13日初めて航空機による領空侵犯を行い、その後も領空侵犯を繰り返しています。

 中国が日本の領海、領空侵犯を日常茶飯に繰り返し始めたのと同時進行で、中国の南シナ海への侵略も一段階上がりました。南シナ海には昨年12月以降、ヘリコプター搭載の大型巡視船「海巡21」が配備され、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国を脅かしています。

 習近平政権の政策には現在までのところ、3つの特徴が見られます。①強い中華思想、②中国共産党絶対主義、③軍事力最優先主義です。

①ついては、「5000年の歴史を持つ中華民族の復興を実現する」という表現が繰り返し強調されています。中華民族の復興の実現とは具体的に何を意味するのでしょうか。チベット、ウイグル、モンゴルの人々に、或いはその他の多くの異民族に、無理矢理彼らの母国語を忘れさせ中国語を修得させることなのか、各々の宗教を捨てさせ、毛沢東や周恩来以来の中国共産党のイデオロギーを学ばせることなのか。だとすれば、中華民族の復興とは、周囲の国々を直接間接的に中国の支配下或いは影響下に置く中華思想の復活に他ありません。21世紀のいま、中国を世界の頂点と位置づけて、その他の国々に支配を及ぼそうとする中華思想が受け入れられるはずはありません。

②中国共産党絶対主義は、たとえば国民に向けたこんなふうな説明から始まります。共産党が出現する以前の中国は諸外国の勢力によって国土を割譲されるなど屈辱の日々を生きなければならなかった。しかし中国共産党が登場して日本帝国主義勢力などの外国勢力を退けて国を守ることが出来た。従って共産党を中心軸として中国全体がまとまり、最も広範な愛国統一戦線を確立し、全ての人民が中国共産党のイデオロギー工作に従うことが肝要で、中国共産党はイデオロギーの徹底を指導し、主導権をしっかり握ることが重要だ、という論理です。習近平体制の下では、こうした主張が繰り返し強調されています。

 実は中国共産党軍が日本軍をはじめ外国勢力を退けたというのは事実ではありません。日本が中国から引き揚げたのは、無論あの大東亜戦争に敗れたからですが、日本を敗戦に追い込んだのは、第一義的に米国です。中国共産党軍とは殆ど戦うことはありませんでした。中国軍とは確かに戦いましたが、それは蔣介石率いる国民党軍であり、中国共産党軍は日本軍との戦いを避けてひたすら逃走するばかりでしたから、戦いようがなかったのです。

 習近平体制は胡錦濤、江沢民両体制同様、共産党と人民解放軍(PLA)の力を実態以上に大きく力強く見せようとし、また、その果たした役割を正当化しようとしますが、そうした言説は必ずしも真実ではありません。

 共産党を絶対視し、その指導の下で初めて中国は安定し、繁栄するのだと主張する習近平体制はPLAの充実にも非常な力を入れる構えです。
 
最後に③です。中国共産党は海と宇宙とサイバーに並々ならぬ資金と人員を割いてきました。昨年11月の第18回中国共産党大会でも「海と宇宙とサイバー」への注力の重要性が強調されました。そのときに2020年までに中国人民解放軍は「高度な機械化と情報化という歴史的任務」を達成すると謳い上げました。

 ちなみに中国は中国だけが利用する独自の宇宙ステーションを2020年までに完成させる予定です。2030年までに月に基地を作る予定です。月面上の基地と独自の宇宙ステーションを保有して、月と地球の間の宇宙空間に覇権を確立しようという目論見です。そうすれば通信、サイバーの闘いを有利に展開することが出来ます。この分野において米国を凌駕することも出来ると考えているのです。

 前述した第18回共産党大会で一連の強気な計画を発表する際に重要点として指摘されていたのが、「平時において軍事力を積極的に活用する」「軍事闘争への備えを絶えず広げ深める」「軍事闘争への準備を最優先する」という事柄です。

 平時、つまり平和の状態において軍事力を積極的に活用するというのです。有事でもなく戦争でもない状況で、中国は軍事力を積極的に活用すると宣言しているのです。このことの持つ意味の怖ろしさを私たちは自覚しなければなりません。

 「軍事闘争への準備を最優先する」というのは、習近平氏自身が昨年11月、次期指導者に選ばれた直後、共産党中央軍事委員会拡大会議で語った言葉です。習近平体制の下で中国はあくまでも軍事力の強大化を進めて中国の望む領土、領海、権益などを手に入れようとするだろうと考えておくべきです。


 米国の見る2030年の世界
 米国家情報会議(NIC)の報告書『世界の激流2030』が描く未来図を見てみましょう。国際社会にとってあらゆる面で中国の動向が鍵になること、従って中国への対処が各国のこれからの命運を左右することを強調したうえで、中国についてNICは以下のように描写しています。

 「経済及び政治における根本的な改革は行き詰まり、腐敗と社会不安が経済成長を低下させる。政府は不満を外に向けるためにナショナリズムを煽り対外強硬策に出る」

 また、中国の軍事費が2025年までに米国の軍事費を上回る可能性があり、2030年までには、中国の軍事費は日本の9倍から13倍になるという、神保謙慶応大学准教授が発表した統計もあります。

 このような世界情勢の下で、諸国、とりわけアジア太平洋地域の国々がまず、自国を守るための軍事力強化に心を砕き、予算と人員をふやしていることは繰り返し指摘したいと思います。それだけでは不十分なので、米国への安全保障上の依存が高まっているのです。

 しかし、自国の安全保障を他国の軍事力に頼る体制はいつまでも続くものではありません。現に前述の米国のNICの報告書は、2030年までに、「米国は内向きになる。米国民は米国が国際社会のリーダーシップをとりその負担を担うことに消極的になる」と予測しています。国際社会の秩序維持に米国のお金と労力を使うよりも、アメリカ自身を強い要塞国家にして米国民だけを守ってくれればよいという考えが生じると見ているのです。

 米国にはかつてモンロー主義という思想がありました。米国は他国の事柄には干渉せず、ひたすら国内問題にのみかかわるという内向きの姿勢がモンロー主義です。米国が内向きと外向きの周期を繰り返してきたことは米国の外交史を辿ると明らかです。従って、NICの予想は考えられないことではないのです。心しておかなければならないと思います。

 NICの報告書にはこのような予測も書かれています。「米国は米国に直接被害を及ぼす紛争を除いて、国際紛争を鎮める戦いに入っていくことを自制するようになる。しかし、米国は(テロなどの)非政府組織の脅威が高まるにつれ、最終的に、独裁国家とも同盟しながら国際社会の秩序回復に務めるだろう」

 一言でいえば、現在と近い将来は兎も角、国の安全保障を米国に頼りきった形で考え続けるのは、日本にとって、とても危ういということです。基本はあくまでも自国で自国を守る気概と実力を養わなければならないということです。


 中国経済も日本なしでは生き残れない!
 これからの国際社会の形を決定するもうひとつの要因、経済を見てみましょう。2025年には中国の経済成長が世界の経済成長の3分の1を占めると予測されています。まさに、これからの地球社会では中国そしてインドが世界経済を牽引していく役割を担います。

 インドは私たちと同じく民主主義制度の下での経済原理に従う国です。経済を、経済原理を超えて他国を力尽くで従わさせる力として用いることはないと考えてよいでしょう。他方中国は、尖閣諸島周辺の日本の領海を犯した漁船突入事件のときのように、いきなりレアアースの輸出を制限し、或いは輸出入の規制を強め、或いは大規模暴動での日本企業への懐打ちを黙認する国柄です。

 そのような国があと10数年で世界経済を牽引する立場に立ち、軍事費においても米国を抜いて世界一になることが予測されているのは、日本とアジア諸国にとって大いに深刻です。だからこそ、日中経済関係の本質をよく見ておくことが大事です。

 アジアの国々にとって中国は最大の貿易相手国です。日本にとっても同様です。日本の場合、対中輸出は日本全体の輸出の23・3%を占めます。約4分の1を中国に買って貰っているわけですから財界人を筆頭に日本の多くの人たちがひたすら日中関係に摩擦を起こさないように、言いたいことも言わず、すべきこともしないでいるのは周知のとおりです。

 でも、関係というものは、どんな場合も一方的なものではなく、相互的なものです。貿易も同じです。そこで中国から日本への輸出入を見てみましょう。

 中国の輸出全体に占める対日輸出は7・8%、他方、輸入は11・2%です。中国は日本に輸出するよりも、もっと多くを日本から輸入しているということです。

 で、この輸出入の差が何を意味するかといえば、中国が日本から中間財を大量に買い付けているという意味です。中間財を部品と言い換えてもよいでしょう。つまり、中国は優れた日本の部品なしには製品をつくれない、中国の製造業は日本なしには立ち行かないということです。勿論、日本経済も中間財を買ってくれる中国がいて成り立っています。日本が中国を必要としていることは確かですが、中国も日本を必要としているのです。

 また現在、日本の企業2万社が中国に出ています。2万社で1000万人の雇用を生み出しています。他方中国の大学卒業者で失業中の人は700万を超えています。この数字もまた中国がどれだけ切実に日本企業を必要としているかを示しています。


 日本は自信を持って成すべきを成せ!
 私の強調したい点は、経済関係において、日本だけが中国なしでは生き残れないなどと萎縮するのは間違いだということです。日中は互いに必要としているのであり、一方的に日本が弱気になる必要はまったくないということを肝に銘じておきましょう。

 そのうえでさらに頭の隅に入れておくべきことがあります。中国は自らの腐敗を正すことが出来ないだろうということです。中国の国の制度が、たとえば司法が共産党の支配下に置かれるなど、腐敗を正す形になっていないこと、上から下まで中国共産党のおよそ全員が凄まじく腐敗していることなどから、共産党に自浄能力はないと断言できます。腐敗の凄まじさを国民に知らせないために情報を規制していますが、中国のネット人口は5億人を超え6億人に迫っています。情報の完全な遮断が出来るはずはありません。

 加えて、これまで国民の不満を吸い上げてきた経済成長が止まっています。8%の成長がなければ貧しい農民たちへの分配が十分でなくなり社会不安が高まるといわれてきましたが、あと数年、遅くとも2020年までには中国の経済成長は5%如何に落ちると分析されています。

 共産党一党支配を守るためにはこうした問題を解決しなければなりませんが、解決は極めて難しいのです。だからこそ、対外的強硬政策を打ち出すと言われているのです。中国の未来展望には黒い影がさしていると言ってよいでしょう。

 私たちの住む世界の現状はこのように厳しい状況です。その中で、日本が国として存続し、国民の生命と国土、領海を守り続けるには、本当に自主独立の精神を固い基盤として、するべきことをひとつひとつ確実にこなしていかなければなりません。

 安倍政権が、経済と景気の復興にとどまらず、日本国の立て直しにこそ、全力をあげなければならないゆえんです。


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