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Vol.564 会員限定

核抑止論は破綻しているという「甘さ」

“核廃絶”だけで中露は「核増産」を止めない

2023.08.11 66分

≪櫻井よしこの対談後記≫
 広島、長崎で各々の市長がアメリカの拡大抑止を脱しなければならないという演説をしました。佐藤さんは、そのようなことは蛮勇を振るうにすぎないと語り、高橋さんは、アメリカが絶対的優位を失った結果、日本も台湾も、拡大抑止に頼ることが出来なくなる可能性があることを論じました。
 ヨーロッパとアジアにおける状況は、根本的に異なる点が在ります。ヨーロッパでは旧ソビエトの圧倒的軍事力を牽制するために、米国を筆頭にNATOは核の抑止力に頼りました。
 アジアでは、アメリカの圧倒的海空力に対抗するために、中国は35年かけて、通常戦力を拡大し続けてきました。そしていま、中国は核戦力の急速な拡大にも努めています。結果として、アメリカの通常戦力が追いつかず、アメリカ自身が核に頼らざるを得ない状況が生まれつつあります。
 すなわち、ヨーロッパにおいてはロシアが負けないために、核を使うオプションを維持し、アジアではアメリカが負けないために核を使うオプションを振りかざす、という状況が生まれかねないのです。
 ただし、アメリカ側に核を使う意思がなければ、日本も台湾も見捨てられます。そのような方向に事態が少しずつ、向かいつつあるのではないかという深刻な危機について、今夜は話しました。

≪対談で語られた論点≫
 1.広島と長崎市長が語る核抑止論の破綻の「甘さ」
 2.中朝露の核連携に米は同盟国をどう安心させるか
 3.国際社会での3つの核の考え方
 4.核にメリットがあると考える中朝露をどう変えるか
 5.アメリカの拡張抑止が破綻、頼れない時代が来る
 6.米国は34年前の核弾頭が一番新しい
 7.核は作らず、持たず、持ち込ませず、考えもせず、議論もせず
 8.中国の通常戦力のレベルアップは要注意
 9.核を使わない米国は日本、台湾を見捨てないか
10.安保3文書は「絵に描いた餅」にならないか
11.麻生副総裁「戦う覚悟だ」抑止力強化を訴える
12.ウ軍と露軍は激しい戦闘が続き「決戦」状態

佐藤正久

佐藤正久
参議院議員

1960年福島県生まれ。1983年防衛大学校卒業、陸上自衛官として国連PKOゴラン高原派遣輸送隊初代隊長、イラク先遣隊長、復興業務支援隊初代隊長などを歴任。2007年に退官し、同年参議院議員(全国比例区)に初当選、2012年防衛大臣政務官、外交防衛委員会理事、自民党参議院政策審議会副会長。無意不立(国民の政治への信頼なくしては国が成り立たない)が座右の銘、風貌から「ヒゲの隊長」として親しまれている。著作に『ヒゲの隊長のリーダー論』、『守るべき人がいる』、『ありがとう自衛隊 ヒゲの隊長が綴る日本再興奮』など。

高橋杉雄

高橋杉雄
防衛研究所防衛政策研究室長

1972年神奈川県生まれ。1997年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。2006年ジョージワシントン大学大学院修了。1997年より防衛研究所。1998年より2001年まで防衛省防衛政策局防衛政策課研究室、2008年より2016年まで防衛省防衛政策局防衛政策課戦略企画室兼務。核抑止論、日本の防衛政策を中心に研究。主な著作に『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛』(並木書房、2020年)(共編著)、『「核の忘却」の終わり:核兵器復権の時代」』(勁草書房、2016年)(共編著)、China’s Strategic Arsenal: Worldview, Doctrine, and Systems (Georgetown University Press, forthcoming) (『中国の戦略的能力:世界観、ドクトリン、システム』(共著)(ジョージタウン大学出版より2021年出版予定))

※ プロフィールは放送日2023.08.11時点の情報です

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