闘うコラム大全集

  • 2014.06.02
  • 一般公開

日本人が明らかにすべき従軍慰安婦の真実

『週刊ダイヤモンド』   2014年5月31日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1036


私たちは自分自身と国家とをどれだけ一体のものとして考えているだろうか。天然の要塞である海に守られてきた日本人は、たくまずして与えられる平和故に、国民を守る枠組みとしての国家の重要性に思いを致すことなく過ごして、今日に至るのではないか。

幕末の安政4(1857)年、幕府の要請によって日本に海軍を創設すべく、指導に訪れたオランダ海軍二等尉官のファン・カッテンディーケが興味深いことを書き残している。

「(オランダ海軍の)艦長が1名の士官と45名の陸戦隊を率いて上陸すれば、恐らく1発の砲弾も放つことなくして、幕府の役所をはじめ海岸に面した町々は苦労なしに占領することができるであろう」、その場合、「市民は陸戦隊の上陸を、知らぬ顔で見て過ごし、幕府を窮地に陥れるかもしれない」(『長崎海軍伝習所の日々』東洋文庫)。

カッテンディーケは前段で幕末の日本の軍事力の欠落を、後段で国家の危機にわれ関せずの姿勢を貫く日本国民の、ある種の無責任を指摘したわけである。こんなことを思い出したのは、いま日本に向けられている慰安婦に関する根拠なき非難を、およそどの日本人も口惜しく思っている割に、対応が消極的だからだ。

慰安婦の強制連行や性奴隷としての扱いなどは事実ではないという日本側の主張に、朴槿恵大統領は年老いたハルモニ(おばあさん)ら生き証人がいると反論する。

だが、「産経新聞」が一連のスクープ報道で明らかにしたことは、河野談話の基となった元慰安婦16人は、継父に売られた人や、熊本など慰安所のなかった地域で性奴隷にされたなどと主張する人たちであり、到底、彼女らの証言は信頼できないということだった。にもかかわらず、朴大統領はそのような女性たちの証言こそ、日本の「強制連行」「性奴隷」が真実である証拠だというのである。

朴大統領が生きている人々の証言をそれほど信頼するのであれば、日本側も証言を出すのがよい。慰安婦の実態を知っている日本人は、まだ多く生存している。知っている人が知っている情報を出していくべきときだ。

その意味で静岡市在住の石上史子さん(92歳)のお話を紹介したい。石上さんのご主人は、新兵としてラバウルに送られ、昭和21(1946)年5月に復員した。夫から聞いた話を彼女はざっと以下のように語る。

サイゴンからの列車移動中、車内が急に騒がしくなった。女たちと女たちを連れている男の一群で、いずれも朝鮮の人たちだった。彼らは遠足のような雰囲気で、「だいぶ稼いだから、まず朝鮮の親に渡して、また、稼ぎに行きたい」などと大声で話していた。

ご主人は朝鮮語を解したために、彼らの会話を聞き取れたという。

かつて私は富山県在住の元憲兵隊員の話を聞いたことがある。彼らは慰安所での日本兵の規律を取り締まった。女性に乱暴を働く兵は厳しく罰せられたのが実態であり、彼女たちを「奴隷」のように取り扱った事実などどこにもないと、詳細に語った。

慰安所の設置は現代の価値観に基づけば決して許容されるものではない。従ってそのことに触れること自体が恥だと私たちは考えがちだ。だが、韓国や中国は事実を捏造してまで、日本を貶める。であれば、日本人の知っている慰安婦の具体例をできるだけ多く明らかにしていくことが、捏造の壁を打ち破る力になるはずだ。

石上さんは、不名誉な強制連行説や性奴隷説を聞くたびに悔しさと無念で涙する。そして「死者は語らず、語れずにしてはいけないのです」と。

同感である。慰安婦の実態を知る高齢の方々に再度ご苦労願って、ご自分の知っていることを私たちの世代に教えてほしい。

言論テレビ 会員募集中!

生放送を見逃した方や、再度放送を見たい方など、続々登場する過去動画を何度でも繰り返しご覧になることができます。
詳しくはこちら
Instagramはじめました フォローはこちらから

アップデート情報など掲載言論News & 更新情報

週刊誌や月刊誌に執筆したコラムを掲載闘うコラム大全集

  • 異形の敵 中国

    異形の敵 中国

    2023年8月18日発売!

    1,870円(税込)

    ロシアを従え、グローバルサウスを懐柔し、アメリカの向こうを張って、日本への攻勢を強める独裁国家。狙いを定めたターゲットはありとあらゆる手段で籠絡、法の不備を突いて深く静かに侵略を進め、露見したら黒を白と言い張る謀略の実態と大きく揺らぐ中国共産党の足元を確かな取材で看破し、「不都合な真実」を剔抉する。

  • 安倍晋三が生きた日本史

    安倍晋三が生きた日本史

    2023年6月30日発売!

    990円(税込)

    「日本を取り戻す」と叫んだ人。古事記の神々や英雄、その想いを継いだ吉田松陰、橋本左内、横井小楠、井上毅、伊藤博文、山縣有朋をはじめとする無数の人々。日本史を背負い、日本を守ったリーダーたちと安倍総理の魂と意思を、渾身の筆で読み解く。

  • ハト派の嘘

    ハト派の噓

    2022年5月24日発売!

    968円(税込)

    核恫喝の最前線で9条、中立論、専守防衛、非核三原則に国家の命運を委ねる日本。侵略者を利する空論を白日の下にさらす。 【緊急出版】ウクライナ侵略、「戦後」が砕け散った「軍靴の音」はすでに隣国から聞こえている。力ずくの独裁国から日本を守るためには「内閣が一つ吹っ飛ぶ覚悟」の法整備が必要だ。言論テレビ人気シリーズ第7弾!