闘うコラム大全集

  • 2014.12.06
  • 一般公開

公約で時計の針を逆回し 責任感なき海江田民主党

『週刊ダイヤモンド』 2014年12月6日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1062
 


12月14日投開票の衆議院議員選挙に向けて、各党の公約が発表された。民主党の公約を読んで、同党再生は、はるか、道遠しだと実感した。


民主党が政権を握った3年余の間、鳩山由紀夫、菅直人両首相はどの世界でも通用しない非常識な政治を行った。両氏の考え方は世界で退潮する左派陣営の空想的なリベラリズムの最たるものだった。彼らの安全保障およびエネルギー政策の欠陥はいまも、多くの負の影響を日本社会に残している。


民主党はしかし、野田佳彦首相になってようやく、左翼リベラリズムの影を引きずりながらも軌道修正を図り、少しまともな政党になりかけた。


前回の選挙で大敗し、その後分裂し、少数政党に落ちたいま、民主党がすべきことは野田路線を引き継ぎ、さらに深めることのはずだ。ところが、海江田万里代表らがまとめた今回の公約は、同党を鳩山、菅時代に戻すことを意味する。


外交・防衛の項を見て心底、驚いた。「集団的自衛権の閣議決定の撤回」をうたっている。安倍晋三首相が決断した集団的自衛権行使容認の閣議決定を「歯止めなき武力行使拡大」だとし、「それに不安が募っています」と書いてある。その上で「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」と公約した。


民主党首脳陣の頭の中はどうなっているのか。日本の海でどれほど中国が傍若無人の振る舞いをしているかが見えないのか。世界第2の軍事大国となった中国が米国の後退を好機として、南シナ海、東シナ海、さらにわが国の太平洋側でも侵略を繰り返していることは、今更指摘するまでもあるまい。


日本を除く全ての国が中国の脅威から自国を守ることを国防の要とし、自国の軍事力を強化し、他国との連携を必死で進めている。そうしたアジア・太平洋情勢の下で、東南アジア諸国、インド、オーストラリアなどは日本に大きな期待を寄せている。集団的自衛権の行使のみならず、憲法も改正して普通の民主主義国となり、国際社会共通の脅威である中国に断固たる抑止力を発揮してほしいと願っている。


国際社会が中国の脅威こそ最大の脅威であると捉えているそんなときに民主党は、日本が「他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」ことを公約に掲げるのだ。国際社会が求めている日本の集団的自衛権の閣議決定を撤回するというのだ。同党内のいわゆる「まともな保守」といわれている議員を含めて、なんと無責任なことか。


彼らは「動的防衛力の強化」もうたう。民主党政権時代に日本の国防政策として正式に掲げられたこの動的防衛力とは、自衛隊の規模を増やすことなく、必要に応じて日本各地の部隊から集め、危機に対応するというものだ。


例えば、沖縄南西諸島をうかがう中国人民解放軍が何らかの動きに踏み切り、尖閣諸島で危機的事態が発生した場合、現地の自衛隊の力だけでは不十分だ。そこで北海道も含めて各地の自衛隊を急きょ、沖縄の海に結集させるわけである。


軍事力の柔軟運用、つまり、部隊を動かすことはどの国の軍にとっても当たり前の話だが、わざわざ動的防衛力と書いた心は、自衛隊の増強なしに対応するという意味である。


11月20日、とどまるところを知らない中国の軍事力増強に米国の民主、共和両党が構成する「米中経済安保再検討委員会」が強い警告を発した。中国軍増強で、「米国の対中抑止力、とりわけ日本に関する抑止力が低下しつつある」と明記した。米国はもはや日本を守り切れないという意味だ。


そんないま、まだ、のんきに動的防衛力をうたう民主党は、明確に鳩山、菅政権時代に回帰しているといってよい。時代に逆行する政党には、日本を任せることなどできない。

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