闘うコラム大全集

  • 2017.07.29
  • 一般公開

日本こそ劉暁波氏の人権問題について中国政府に厳しい意見を言うべきとき

『週刊ダイヤモンド』 2017年7月29日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1192
 


7月13日、ノーベル平和賞受賞者で中国の民主化運動の精神的指導者、劉暁波氏が死去した。中国を愛する故に最後まで中国にとどまって闘った劉氏の死を、深く悼みたい。


中国当局が劉氏の末期がんを発表したのが6月26日、それからひと月もたたない死亡だった。中国への厳しい批判が相ついだのは当然だ。劉氏がそこでの治療を望んだドイツは、ガブリエル外相が劉氏のがんはもっと早く発見されるべきだったと批判し、英国もフランスも、劉氏の海外での治療を許さなかった中国を、明確な言葉で非難した。


日本政府は菅義偉官房長官が14日午前の記者会見で「心から哀悼の意を表し」「引き続き高い関心を持って、中国の人権状況を注視していく」と語った。菅氏は「詳細は差し控えるが、さまざまなルートで日本政府の考え方を中国に伝えていた」とも語ったが、これは日本政府が中国側に、劉氏の海外移送や治療について、最大限の支援を申し入れたことを指すと思われる。


萩生田光一官房副長官の説明だ。


「中国からはドイツより、日本の方がずっと近い。移送の際の劉氏への負担は、日本が引き受ける方がずっと少ない。われわれが支援を申し入れたのは当然ですが、中国政府は、何もしてもらうことはありませんという素っ気ない回答でした」


弾圧に苦しむ人々のため、最大限の支援は当然である。日本政府が支援を申し入れたことは評価したい。しかし、支援申し入れも劉氏の死を悼む言葉も、なぜこうも控えめなのか。


また日本国全体の反応の何と鈍いことか。国会では野党は7月20日現在も加計学園問題に拘り続けている。同問題は、前愛媛県知事の加戸守行氏が7月10日に国会で行った証言で、事実上、終わっている。


しかし、「朝日新聞」「毎日新聞」、NHKなどが、ニュースで加戸氏発言をほとんど伝えないために問題の本質は理解されていない。メディアは加計問題の政治利用にかまけて中国の人権問題など二の次ではないか。


日本の国会と米国の議会の相違も際立つ。シンクタンク「国家基本問題研究所」企画委員で福井県立大学教授の島田洋一氏の指摘だ。


「下院外交委員会のクリス・スミス議員(共和党)は自らが委員長を務める小委員会で在米の中国民主活動家らを招いた公聴会を14日に開催しました。共和党のエド・ロイス外交委員長、民主党のナンシー・ペロシ院内総務も出席して、劉暁波氏の死が超党派の重大関心事であることを印象付けました」


「さらに死去前日の12日には、テッド・クルーズ上院議員(共和党)が本会議場で演説し、『北朝鮮の独裁者金正恩氏ですら、北朝鮮で拘束されていた米国人学生、オットー・ワームビア青年を最後に故郷へ帰した。習近平氏も同程度の人権感覚は示せるはずだ』と演説し、劉暁波夫妻の即時出国を求めました」


翻って日本では、野田聖子衆院議員を団長に、与党の女性国会議員団9人が12日、即ち劉氏の危篤が報じられた日に中国の招きで訪中した。深刻な人権問題として、劉氏の一件を取り上げずに済むタイミングではなかろうに、野田氏らが取り上げた形跡はない。こんな意識の低さで政治家が務まるのか。


米国が国際社会でOdd man(のけ者)視され、求心力を失いつつある一方で、中国が米国に取って代わる動きを見せている。


基本的人権や自由の尊重、民主主義の擁護の価値観と明確な戦略を掲げて、世界の秩序を維持してきた米国が後退するいま、日本への期待は価値観の擁護者としての役割だ。


日本こそ他のどの国よりも劉暁波氏の件について中国政府に厳しい意見を言うべきときなのである。

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