闘うコラム大全集

  • 2020.03.19
  • 一般公開

武漢肺炎、制圧に向けさらに力を尽くそう

『週刊新潮』 2020年3月19日号

日本ルネッサンス 第893回


小中高全校休校などの緊急措置はいつ解除できるのか。武漢ウイルスとの国を挙げての戦いについて、3月9日、政府の専門家会議は、あと10日間、19日頃まで「大規模イベントの自粛など感染防止措置は続けてほしい」と、呼びかけた。


加藤勝信厚労大臣も専門家会議の意見を踏まえて、15日を目途に次の段階を示す方針を発表する予定だ。


現在までの所、日本と日本国民は頑張っている。初動段階で対策が遅れたことは否めない。しかし、クルーズ船を除けば、3月10日時点で日本の死者は9名、感染者は530名だ。他方、イタリア、フランスの死者は各々463名と30名、感染者は四桁台である。米国の有力紙「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)は日本の対応が悪いと批判したが、米国での死者22名も感染者754名も日本のそれを超えている。数字で見る日本の対応は一応評価に値するのではないか。


但し、問題はこれからだ。私たちは武漢ウイルスの蔓延を防げるのか、その瀬戸際に立たされている状況に変化はない。これからもう少しの期間が本当に頑張り時だ。国民全員が協力し合い、とりわけ、感染した場合の危険が大きいお年寄りや基礎疾患のある人たちを守りきることが最重要課題だ。まさに私たちの力が試されている。


そこで強調したい。こういう時こそ、全てのエネルギーと時間を前向きに活用しよう、と。不平不満や文句を、前向きの提言に変えていこう。不平不満は往々にして不毛の結果しか生まない。文句ばかり言う人は人の心を打たず、従って他者に前向きの動きを促すこともできない。その一例が元外務審議官の田中均氏ではあるまいか。


厳しい政権批判


氏は3月9日、BSフジの「プライムニュース」で政府の全校休校措置を批判した。大事なのは子供よりも高齢者への措置だというのだ。


前述のように高齢者のリスクは高い。従って氏の指摘は正しい。しかし、周りを見ると、お年寄りを預かる各種施設や病院はすでに対策をとっている。2月の早い段階で外来の見舞いを断り、家族でさえも会えなくなっているケースが圧倒的だ。


田中氏は安倍晋三首相の一連の措置は不適切で、説明責任を果たしていないと再三批判したが、私は釈然としない想いでそれを聞いた。氏は安倍首相にお年寄りのための施策を打ち出すよう前向きに提言すればよいだけだろう。すでに多くの手が打たれてはいるが、不足の分は補われていくに違いない。氏の不平だらけの姿勢からは物事を前に進める力は生まれてこないのではないかと思う。そして私はつい、昔のことを思い出す。


小泉純一郎政権当時、氏は外務省アジア大洋州局長として、北朝鮮の代理人である「ミスターX」らと非公式に30回近く交渉した。2006年頃、安倍氏は日朝交渉の全記録を読もうとしたが、2回分が欠落していた。欠落部分について質された田中氏は「私は知らない」と答えたが、その2回分の記録の中に、日朝国交正常化に当たって1兆円規模の経済協力資金を提供するとの重要な合意が記載されていたのではないかという疑念が持たれている。「知らない」で済まされるような事案ではないが、氏は未だに説明責任を果たしていない。このような人物だから、安倍首相が不信感を抱き氏を重用しなかったのは当然であろう。


田中氏がいま武漢ウイルスの件でとりわけ厳しい政権批判を展開しているのにはこうした背景も、或いは影響しているのかと、考えてしまう。少なくとも、氏の非難一方の論調からは、武漢ウイルス禍に力を合わせて戦おうという今、日本に必要な前向きの力は感じられない。


立憲民主党の枝野幸男氏も蓮舫氏も同様だ。両氏は居丈高に首相の措置を非難するが、インターネット上の「Dappiさん」の国会分析を見ると、彼らこそ反省が必要だと思えてくる。Dappiさんは各党がどんな質問にどれくらいの時間を費やしているかを円グラフにした。


それによると、1月27日から30日までの間、立憲民主党は衆参両院で国会質問時間の58%、約6割を「桜を見る会」の質問に当てているが、これは共産党と共に突出している。さらに2月17日の衆議院予算委員会では、3時間1分の質問時間の全てを「桜」に費やした。


2月17日は政府のチャーター機第5便が到着しててんやわんやの日だった。しかし、立憲民主党はそんなことは全く気にしないのか。ひたすら「桜を見る会」を追及した。国民の命を脅かす武漢ウイルスへの危機感はあったのか、疑問である。


中国ベタ褒めのWHO


ようやく武漢ウイルスに取り組む姿勢を見せ始めたのはよいが、立憲民主党も田中氏も反対のための反対、批判のための批判に終始するのでなく、もっと与党に協力したらどうか。3.11の大悲劇が発生したとき、当時野党だった自民党は全面的に民主党政権に協力した。


武漢ウイルスに関して、眼前のマスクやトイレットペーパーも大事かもしれないが、政治家、とりわけ首相は同時にもうひとつの大事なことに目を向ける必要がある。日本国の危機管理だ。


中国は武漢ウイルスは中国発ではないという、黒を白と言いくるめる虚偽宣伝を展開中だ。「人民網」は3月8日、中国の新たな感染者は4人にとどまり、全員が海外からの輸入症例だと報じた。彼らは、中国は「人類運命共同体」の理念で「世界保健機関(WHO)や国際社会と情報を共有し、感染の世界的拡大を防いできた」と主張する。WHO事務局長のテドロス氏は「中国の講じた大規模な感染予防・抑制行動によって世界はより安全になった」、国連事務総長のグテーレス氏は「中国国民は正常な生活を犠牲にすることで全人類に貢献した」と各々称賛した。


中国ベタ褒めのWHOに、中国政府は7日、2000万ドルの寄付を発表したが、資金力で国連を自家薬籠中の物としつつ、いまやウイルスを持ち込んだのは米国だとの情報さえ流布している。ウイルス抑制に成功した中国と失敗した日本という対比も強調する。


武漢ウイルスを含めて中国渡来の少なからぬ禍で、最も直接的な影響を受けるのがわが国だ。だからこそ、中国と助け合うにしても日本は虚偽宣伝に負けないよう情報発信能力を高め、自らの国益を守らなくてはならない。国際社会で生き残るには、日本をきちんと理解できる味方が必要であるから、情報発信が鍵となる。


加えて、緊急時において「要請」どまりになってしまう現在の政府権限ではウイルス対策は機能しない。政府に強制力を持たせるべく法を整備し、根拠を憲法に定めるべきだ。

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