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【櫻LIVE】第625回:石橋文登・政治ジャーナリスト・千葉工大特別教授/有元隆志・産経新聞特別記者との対談動画を公開しました
闘うコラム大全集
- 2024.09.26
- 一般公開
部下の信頼も決断力も欠く石破氏
『週刊新潮』 2024年9月26日号
日本ルネッサンス 第1115回
自民党総裁選挙の票読みが進む。情勢は変化し続けるが、党員票で顕著な強さをみせるのは石破茂、高市早苗、小泉進次郎の三氏に絞られている。各メディアによる調査に共通するのは小泉氏の失速、石破氏の翳り、高市氏の躍進だ。
9月16日、『読売新聞』1面トップの情勢分析では高市氏が石破氏に、党員票と議員票の合計で123票の同数となり並んだ。見出しは「高市・石破・小泉氏競る」だ。高市氏の名前が一番上である。支持が同数の場合、優勢な候補者の名前を先に持ってくるのが報道の常道だ。
上位二者の争いが高市・石破両氏のそれになる可能性は低くないということだ。その場合、私は断然高市氏を推す。石破氏には日本の舵取りを託したくない。理由のひとつが拉致に関する氏の政策である。
この事案に関連して石破氏の選対本部の陣容からいやな感じが漂ってくる。長年、拉致被害者の家族の皆さんと共に活動してきた「救う会」会長の西岡力氏が語った。
「彼の選対本部には日朝国交正常化推進議員連盟(以下、日朝議連)の主要メンバーがそっくり入っています。まず、選対本部長の岩屋毅氏は2018年6月に日朝議連が再編された時の副幹事長です。選対本部の衛藤征士郎氏は日朝議連会長で、平沢勝栄氏は日朝議連幹事長代理です。石破氏本人も日朝議連のメンバーです」
右の陣容が意味するところを広く世の人々に知ってほしいと思う。日朝議連は長年、拉致問題解決の第一歩は東京と平壌に連絡事務所を置き、拉致被害者について調査することだと言ってきた。だが、拉致は北朝鮮政府による国家ぐるみの犯罪だ。日本人被害者一人一人をどこに住まわせ、何をさせるか、どう待遇するかは北朝鮮政府が決めるのである。
北朝鮮寄りの主張
北朝鮮当局は当然、拉致被害者一人一人の情報全てを把握しており、今も厳しい監視を続けている。日本人拉致被害者のことは調査しなくても彼らは全てわかっている。なのに、石破氏らは連絡事務所と調査委員会を立ち上げて調査せよと言う。北朝鮮の時間稼ぎの罠に自らはまり、彼らの意に沿う行動をしようというのだ。西岡氏が指摘した。
「石破氏らは統一戦線部工作員の影響を受けていると考えられます。統一戦線部は横田めぐみさんら8人の方が死亡したと言ってきた組織で、めぐみさんらを帰国させるつもりはない。日本側に8人は死亡と思い込ませるために、偽の遺骨まで送ってきた。めぐみさんらの奪還を諦めさせた上で、あと数人を日本側に返して拉致問題の解決としたい。その上で、わが国から膨大な額の援助を手にしたいのです」
石破氏は2018年9月の自民党総裁選挙における公開討論会で日朝間の「ストックホルム合意」(14年5月29日)に関して「(安倍政権が)これは信用ならないっていうことで、無視することになっちゃったわけです。そこから足がかりは何もなくなってしまったわけです」と、安倍晋三氏を非難した。
これがどれだけ北朝鮮寄りの主張であるか。ストックホルム合意の土台となった日朝平壌宣言を読めば分かる。平壌宣言は02年に小泉純一郎首相が訪朝し、金正日国防委員長と発表したものだ。
すでに広く知れ渡っていることだが、午前中の会談で金正日氏が拉致を認めなかった。随行していた安倍官房副長官が昼食時間中に、盗聴されているのを前提に、金氏が拉致を認めず謝罪もしないなら平壌宣言をなしにしてこのまま日本に帰りましょうと発言、すると金氏は午後の会談の冒頭で拉致を認めて謝罪した。
だが、この時の平壌宣言は肝心の拉致の件に全く触れていない。宣言に明記されたのは「国交正常化の早期実現」、日本側による「過去の植民地支配」への「痛切な反省と心からのお詫び」、日本側の「無償資金協力、低金利の長期借款供与、人道主義的支援等」である。
平壌宣言は拉致はなかったかのように位置づけ、日本が謝り、長きにわたって経済援助を続けていくということだけを謳った実に一方的なものなのだ。同宣言を基につくられたのがストックホルム合意で、それを安倍氏が「無視」したと、石破氏は非難したわけだ。
安倍氏が拉致被害者全員を奪還すると言っていることについても、石破氏は全員生存の確証はあるのかなどと迫った。安倍氏はこのとき実に的確に答えたと、西岡氏は振りかえる。安倍氏の反論はこうだった。
「日本人を拉致したのは彼らです。一体どうやって、何人拉致しているかという全貌は、私たちは分からない。はっきりと認定できているのは17人であります。死亡したという確証を、彼らは出していないわけです。日本側に渡した遺骨は偽物でした。ならば、政府としては、(全員が)生きているということを前提に交渉するのは当たり前じゃありませんか」
尊敬も評価もされない
石破氏に日本国の首相になってほしくないわけ、拉致問題解決の陣頭指揮など執ってほしくないわけは以上のとおりだ。
石破氏は安全保障に詳しい、信頼できる防衛大臣だったと評価する声がある。だが、自衛官らの間に正反対の評価を下す人々は少なくない。
03年、イラク戦争のとき、当時は防衛庁長官だった石破氏に仕えた幹部が語った。日本は輸送機C-130を3機派遣して航空輸送の任に当たることになっていた。ところが石破氏は防衛会議を頻繁に開いて細かい質問を繰り返すばかりで、トップとしての決断を下すのが非常に遅かったというのだ。
たとえば石破氏はC-130がバグダッドに着くまでに地上から攻撃を受けたらどうするのかと質した。自衛官らはミサイルや地上の火器による攻撃を自動的に察知し、攻撃を回避する手段を講じると答えた。機体の下に特殊な防弾盤をつけ、上部にはバブルウィンドー(半球状の窓)を設置してそこから攻撃を目視できるようにもした。
防衛オタクと言われる石破氏は午前中一杯、小さなことまで集中して質問する。自衛官は午後一杯かけて情報を整理して次の防衛会議に臨み質問に答える。だがまた同じことが繰り返される。
当時の幹部が言う。
「微に入り細に入り、質問はエンドレスです。それも悪いことではありませんが、指揮官は肝を据えて、最終的には自分が責任を取るという姿勢で部下の言葉を信じ、迅速に決断しなければなりません。石破さんはしかし、質問して質問して、疑って疑って決断しない司令官でした」
なぜ、そうなのかと問うと、「恐らく責任を取りたくないからだと思います」と幹部は答えた。
私の知る範囲で、防衛大臣としての石破氏を高く評価する自衛官はほぼゼロだ。自分の部下から尊敬も評価もされない人物に、国を任せるわけにはいかないだろう。
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