闘うコラム大全集

  • 2026.08.20
  • 一般公開
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政府は小泉防衛相の警告に正対せよ

『週刊新潮』 2026年8月13・20日合併号

日本ルネッサンス 第1206回


皇室典範改正、国家情報局創設、飲食料品の消費税率実質0%への引き下げ、熊本大地震への迅速対応。高市政権の下で物事が動いていると実感する。


高市早苗首相は特別国会閉会に当たっての会見で、「反省点というのは特にございません」と言い切った。自民党政調会長特別補佐の鈴木英敬氏は「男なら絶対に言わない言葉。女性だから言えた」と論評した。首相就任以来、全力を尽くしてきたとの自信が右の啖呵につながっているのであろう。私は「よく言った。その強い心で乗り越えていけ」と応援するものだ。


これから何としてでも対処しなければならないのは日毎に圧迫度を増す中国の脅威である。7月17日の「言論テレビ」で小泉進次郎防衛大臣がざっと次のように語った。


「日本にとっては議論するのが非常に難しい課題ですが、触れざるをえないのは核です。フランスは核の増強を明確にし、フィンランドは今までの政策を抜本的に変えて核持ち込みを認めた。日本が置かれている安全保障環境は、危機感を持ってあらゆる政策をタブーなく議論し、進めなければいけない状況です」


諸国の国防大臣らと頻繁に接触する中で、小泉氏は国際社会の現実を切実に感じとっている。どの国の国防責任者も、自国に迫る安全保障上の危機を回避する決め手が核戦力だと自覚し、核の抑止力を如何に自国防衛の基盤に組み込むかに心を砕いている。国際社会の現実を知るに至った小泉氏はこうも語った。


「何か一定のものは議論してはいけないという方々の中には、今までのものを守るということが先に来て、真に日本を守るということは後に来ているんじゃないか。それでは守れない。今、日本はものすごく政策を変えています。だけど、世界はもっと速く動いている」


朝日の気にする「周辺国」


非核三原則を金看板にすれば平和が守れるという神話は疾(と)うに破綻している。国民と日本国を守るために非核三原則を見直し、新たな核政策を構築すべきなのは明らかだ。なのにメディア、とりわけ朝日新聞は小泉発言に強く反発した。7月29日の社説で小泉氏の問題提起は「熟考された提起には見えず、看過することはできない」「いま求められるのは、核への依存を深める方向ではなく、核兵器を二度と使わせないという国際規範の再構築である」と主張した。


その上で「防衛力の抜本的強化を旗印に、敵基地攻撃能力の保有や殺傷兵器の輸出解禁など、戦後の抑制的な防衛政策の転換を推し進めてきた日本が、非核三原則まで見直すことになれば、周辺国にどのようなメッセージとなるのか」と問うた。


朝日の気にする「周辺国」の筆頭は中国だろう。だが肝心の中国がこの数か月、有事を想定してわが国への着上陸訓練を行っていたことなど、朝日は決して報じないのだ。


「国家基本問題研究所」の中川真紀研究員が衛星画像及び中国人民解放軍の発表を分析した結果、5月中旬から6月22日まで約40日間、空母「遼寧」が編隊を組んで南シナ海、西太平洋で訓練を行ったことが判明した。編隊にはレンハイ級ミサイル駆逐艦、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦、ジャンカイⅢ級フリゲート、フユ級高速戦闘支援艦などが含まれていた。計170回に上った種々の訓練には、空軍の空中給油機、対日担当戦区の東部戦区海軍に属する強襲揚陸艦も加わった。彼らはわが国の離島が存在する西太平洋で空母の掩護を受けながら着上陸訓練を行ったが、それらは紛れもなく有事の際のわが国への着上陸作戦を想定したものだった。


国基研副理事長で元陸上自衛隊幕僚長の岩田清文氏が指摘する。


「新型軍国主義に向かっているとわが国を非難する中国は3日から4日毎に1発、年間100発も新たな核弾頭を製造しています。米国に並び立つ野心は明らかです。その中国軍がわが国を標的にした着上陸訓練を繰り返していた。日本国を取り巻く安全保障環境はこれほど厳しい。小泉氏の発言に異を唱える朝日新聞は、日本国民の命が大事とは思っていないのでしょうか」


こうした中、或る中国人研究者と対話し、興味深い話を聞いた。1969年10月1日、中国の国慶節の日に毛沢東は天安門の楼上に立ち、国民向けに演説をした。その後、周恩来首相以外、林彪副主席も含めて中国共産党幹部全員が北京を離れた。周恩来は防空壕に身を潜めた。理由はソ連からの核攻撃の情報だったというのだ。外交の場でソ連が米国に「中国への核攻撃について言及した」との情報が中国側に伝わり、毛沢東らは本気で恐れたというわけだ。


毛沢東に心酔


60年代末といえばソ連が突然チェコに軍事侵攻し、「プラハの春」を蹂躙した時期だ。マルクス・レーニン主義の枠組みの中で、チェコは自由化を試みていた。ソ連はチェコにおける自由化の波が東欧共産主義諸国に広がるのを警戒して軍事侵攻に踏み切った。東側陣営におけるソ連の支配維持を最優先する「ブレジネフ・ドクトリン」だ。


毛沢東らは、ソ連がこのドクトリンを中国への侵攻や共産主義体制への干渉の口実とすることを心底恐れていた。ここから中ソの決定的な離反が始まり、ニクソン米大統領の中国接近、米中の国交回復に発展していくのだが、中国側がソ連による核攻撃の情報を入手したのはそうした状況下のことだった。


毛沢東らがソ連の核攻撃は十分にあり得ると信じ、恐れた理由は彼ら自身が核使用に本質的に前向きだからであろう。中国研究の第一人者だった平松茂雄氏が、57年の毛沢東とソ連第一書記のフルシチョフの会話を『中国は日本を併合する』(講談社インターナショナル)で紹介している。


57年、ソ連は人類初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功した。ソ連はまた大陸間弾道ミサイルの発射にも成功しており、米国に対して軍事的優位に立った。このとき毛沢東は大いに興奮してフルシチョフに持ちかけたのだ。「ソ連の核兵器で米国を攻撃しよう」と。


フルシチョフは驚いて、米国との核戦争をひき起こすとして反対論を展開した。すると毛沢東は言ったのだ。「中国は人口6億人を有する。仮に原水爆で半数が死んでも、3億人が生き残り、何年かたてばまた6億人になり、もっと多くなる」と。


69年に毛沢東らがソ連の核攻撃を真剣に恐れたのは、核使用に野蛮かつ前向きな自らの考え方に基づいてのことであろう。そんな毛沢東に心酔しているのが習近平国家主席である。またロシアのプーチン大統領がウクライナへの核攻撃を真剣に検討したことは当欄でも報じてきた。


世界はまさに核の危険に満ちている。高市氏は自民党の安全保障調査会に核に関する議論、憲法改正においては9条2項削除の可能性について検討せよと、指示するときだ。

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