元気になるメルマガ

  • 2013.04.15
  • 一般公開

美しい日本の海を守るには

 
日本人が気づかない足下の海を襲う中国船の脅威

 4月13日の土曜日、福岡県博多で開催された九州市民大学に行って
きました。昼夜にわたり4,000人近くの人々に講演しました。

 私の語ったのは「この国の未来、私たちの出来ることはなにか」とい
うテーマでしたが、講演の中で、聴きに来て下さった人たちに急遽アン
ケートをしました。「あなたは、同じ九州の長崎県五島列島の玉之浦港
に、昨年268隻の中国漁船が押し寄せたことを知っていますか」と質
問したのです。すると殆ど全員が「知りません」のところで挙手をしま
した。

 五島列島は美しい豊饒の海に浮かんでいます。けれど、人口は減り続
けています。玉之浦港は福江島にありますが、港周辺の人口は多くはあ
りません。そこに去年4度にわたって、前述のように268隻の中国船
が押し寄せたのです。たとえば7月18日には106隻の船がきました
。そのときの乗組員の合計は3,000人を超えていました。彼らが大
挙して上陸したりすれば、多勢に無勢、どうすることも出来ません。地
元の人々がびっくりする以前に脅えていたのは当然でしょう。

 このような異常事態を、同じ九州の人たちが殆ど知らないのです。い
えいえ、九州の人たちだけでなく、日本人の殆どが知らないのです。な
ぜって、殆ど報道されていないからです。報道したのは地元の長崎新聞
くらいのものではないでしょうか。私はこの件を東海大学の山田吉彦教
授を介して知りました。

 山田教授は現地に足を運んで詳細な調査をしたのですが、玉之浦の状
況をこう語りました。

「玉之浦港に中国船が大挙押し寄せ始めたのが2007年です。その年
は計189隻でした。翌08年が85隻、09年は135隻、10年が
267隻、11年は1隻も来なかったのですが去年から又、やってくる
ようになり、これまでで最多の268隻が押し寄せたのです」

 一昨年は1隻も来なかったのが昨年になってまた、押し寄せるように
なったわけです。ところがやってきた中国船の様子を見て、山田教授は
非常に驚いたといいます。

「なんと全ての船が新造船に替わっていたのです。それ以前の旧式のオ
ンボロ船は1隻もありませんでした。新造船でトン数も格段に増えてい
ました。小さい船で100トン、大きいのは500トン級です。写真を
撮ってきましたが全て同じ仕様です。アンテナもその他の装備も十分に
近代的で、単なる漁船ではなく、情報収集に必要な装備と機能を備えて
いるのが明らかです」

 写真を見ると、山田教授の語ったようにどの船も同じ型で、船体の塗
料まで同じ色です。立派な出立ちの各船には幾本もの五星紅旗がはため
き、それが島の港一杯に並んでいます。

 山田教授は、これらの船が帯びている使命のひとつは日本や米国の潜
水艦の動きを探ることではないかと指摘します。海中にのびる音波探知
装置で日米の潜水艦の動きを探る能力を各船が備えていると見るべきだ
というのです。

 地元の人たちがある日、夜が明けて港に行ってみると赤い旗を立てた
船が港を埋め尽くしていたというのが玉之浦港で起きたことでした。こ
れでは地元の人たちが脅えるのも無理はありません。


日本周辺の海の守り

 さて、これらの中国船に対して日本側の守りの体制はどうなっている
か。信じ難いほどに手薄です。再び山田教授が語ります。

「100隻以上の中国船に日本の海保の船が1隻か2隻ついていても、
どうにもなりません」

 ちなみに五島列島を守る海上保安庁の分署には2隻の船しかありませ
ん。1隻は350トン、もう1隻は25トンで、中国漁船よりはるかに
小さいのです。

 中国漁船は天候不順を理由に入港してきましたが、日中中間線からは
るかに日本側に入り込んでいる五島列島になぜ「避難」してくるのでし
ょう。目的のひとつに山田教授の指摘する偵察があるでしょう。対日恫
喝の意図もあると見るのが妥当でしょう。さらに日本の港への出入りを
繰り返すことで、急変事態の際には容易に日本の港の奥深くにまで入り
込むことが出来ます。

 日本側はこうした中国側の戦略全体を視野においた海の守りをこそ考
えなければなりません。私たちは尖閣諸島という個々の島に注意を奪わ
れ続けていますが、中国側は尖閣は無論のこと、日本を取り囲む海全体
を面として捉えています。日本の海を守る闘いを、個々の島の問題に矮
小化してはならないということです。


中国の傍若無人

 とりわけいま注意が必要なのは彼らが海洋侵略の意図も露わに、傍若
無人の動きに出ていることです。習近平総書記は全国人民代表大会の最
終日の3月17日、閉幕に当たって「人民解放軍は戦争に打ち勝つ“強
軍目標”に基づき、国家主権と安全、発展の利益を守らなければならな
い」と語りました。全世界が注目する全人代で「戦争」を語るのは異例
中の異例です。いざとなったら中国は戦争に打って出る、そのときには
必ず勝つ、勝てる軍隊を構築すると宣言したとも解釈出来ます。

 かつて世界は帝国主義の下にありました。強い軍事力を持つ国が当た
り前のように弱小国を攻め、力によって勢力を拡大し利益を得た時代で
す。けれど人類ははるか昔にその時代を卒業しているはずです。もはや
どの国も帝国主義に戻って力まかせの外交をしようとは考えていません
。例外が習近平主席の君臨する中国です。習主席の言葉は、中国がいま
だに暴力的な帝国主義の水準にとどまり続けていることを示しています
。四半世紀以上連続して前年度比で軍事費2桁の伸び率を達成するとい
う異常な軍拡で、中国は強大な軍事力を手にしました。その軍事力を帝
国主義的価値観の実現に活用しようというのです。

 そのような中国は尖閣諸島についても南シナ海についても中国の「核
心的利益」、絶対に譲ることの出来ない国益だと語っています。

 日本に関していえば、沖縄本島を含む琉球諸島について中国の領有権
を主張する発言さえありました。これは2012年8月30日、民主党
政権の外務副大臣だった山口壮氏が北京を訪れた際、中国の傅瑩(ふえ
い)外務次官が語ったことです。

 ちなみに山口大臣はこの件を、胡錦濤国家主席の外交を預かる戴秉国
(たいへいこく)国務委員に指摘し、訂正の言葉を引き出しています。

 言葉でどのように表現するかしないか以前に、中国が考えていること
は、東シナ海を含めた海洋に対してどのような構えをつくり上げている
かを見れば推測出来ます。


驚くべき中国の新海洋戦略

 先述のように中国政府は漁船を一斉に新しく大きな船に造りかえまし
た。これらの漁船の果たす役割が日本の漁船のそれとは全く違うこと、
中国船は単なる漁船ではなく、中国の海洋侵略の先兵であることは、繰
り返し強調したいと思います。

 そのことは習近平総書記の下で一新された中国の海洋戦略を見れば明
らかです。もともと中国には五龍と呼ばれる海洋権益防御の組織があり
ました。国家海洋局の下で海洋の調査・管理をする「海監」、公安省の
下で海の治安を守る「海警」、農業省の下で漁民と漁場の管轄・管理を
する「漁政」、交通運輸省の下で航行安全を守る「海巡」、税関総署に
よる密輸取り締まり船です。

 この内、海巡を除く4部門を合体して中国海警局がつくられました。
トップの局長職には国家公安部次長が就任しています。副大臣が局長に
なったのです。この組織がいかに重視されているかを示していると言え
るでしょう。

 新組織は日本の海上保安庁法などを研究し尽くして作られたといわれ
ます。つまり、海保がどのような状況でどのような行動に出ることが出
来るのか、或いは出来ないのかを十分に研究し、日本の法体系の欠陥を
突けるような組織を作ったとみられています。結果、中国海警局は従来
の海洋権益防御のいかなる組織よりも強大な力を備えました。さまざま
な機能を有した船3,000隻を保有し、人民解放軍海軍の一部である
かのような軍事力を備えています。加えて、漁民を管轄下に置きました。


中国海警局創設の狙い

 大組織となり力も与えられた中国海警局はなにをするのか。彼らは恐
らく、尖閣周辺の日本海域での臨検を行うようになるでしょう。彼らは
まず中国漁船に立ち入り調査をするかもしれません。臨検を実施するこ
とで、その海域は中国領だと国際社会に見せつけ、中国の施政権が及ん
でいるとの印象を残すことが出来ます。漁船は彼らの管轄下にあります
から、特定の海域で操業するようあらかじめ指示することも可能です。
いわば臨検する状況を自作自演で創り上げ、中国の施政権を演出すると
いうわけです。

 次に考えられるのが日本漁船への取り調べと拿捕です。日本政府にと
っては日本の海で、たとえ対象が中国漁船であっても中国側が臨検する
こと自体が許せません。いわんや日本漁船の取り締まりなど、到底、認
めるわけにいきません。

 対応するのは海上保安庁です。海上保安庁の行動は自衛隊同様、憲法
や法律で極めて制限されています。攻撃的な取り締まりは殆ど不可能で
、専ら守るだけしか許されていませんから、中国海警局の攻勢に対処す
るのは容易ではありません。海保の手に余るような事態が発生すること
も考えられます。そのままの状態でいれば尖閣の海も島も奪われかねま
せん。

 それでも日本政府は、海警局と海保のぶつかり合いに海上自衛隊を出
すことは極力控えるでしょう。正体はともかく、相手は表面上は軍隊で
はなく海警局ですから、日本が先に軍を出したとなれば、ここぞとばか
りに中国は非難してくるでしょう。一方、日本が海保の活動にとどめて
いる限り、日米安全保障条約第5条は発動されません。つまり、中国は
米軍の介入を回避することが出来ます。

 海保だけが相手なら中国海警局が有利です。海自を出せば、日本が先
に軍事行動をとったとして中国は世界に日本非難の声を響かせます。こ
うして日本を牽制しつつ、中国海警局は3,000隻の船を活用して、
南西諸島を守る海保を圧倒することが考えられます。なんといっても海
保の大型船(1,000トン以上)はわずか6隻です。安倍政権は新た
に6隻を造り、計12隻、海保職員600人態勢を構築します。しかし
予算措置を見れば、新たな6隻を造るのに5年かかります。出てくるの
は嘆息ばかりです。

 中国をはじめ外国勢の脅威は日本国の予算に合わせて襲いかかるわけ
ではありません。予算の範囲内でしか対処しないのでは危機は防げませ
ん。だからこそ政治の意思が大事です。日本の対処法はすでに指摘した
ように、日本を取り囲む海全体の問題を尖閣など個々の島の問題に矮小
化しています。中国は尖閣を尻目に五島列島にも日本海にも侵出を続け
ています。日本こそ、日本周辺の海全体を眺めて対策を考えなければな
りません。そのためには海保と自衛隊を対象にした顕著な予算の増額に
加えて、自衛隊法の改正、さらに憲法改正が欠かせません。


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