元気になるメルマガ

  • 2013.05.16
  • 一般公開

思い込みを超えて歴史認識を考える

 
大東亜戦争は歴史になったか

 メディアが連日、安倍晋三首相の歴史認識を否定的に取り上げていま
す。韓国や中国の対日歴史批判は実は朝日新聞など日本国内メディアの
報道が誘導してきた面があります。

 それにしても歴史認識とはなんでしょうか、歴史をどう定義するので
しょうか、100年前のことは歴史なのでしょうか。では50年前、1
0年前のことはどうでしょうか。

 柳田國男の『遠野物語』を英訳したロナルド・モース氏は「物事が歴
史になるには3世代、90年かかる」と語ります。第2次世界大戦はそ
の意味でまだ歴史になりきっていないということでしょうか。

 恐らく、そうでしょうね。靖国神社に参拝するなと言われても、「靖
国で会おう」と言って死に別れた軍人たち、その友人、家族、ゆかりの
人々はまだ存命です。どこか自分とは切り離された歴史ではなく、わが
こととして受けとめざるを得ない切実さがあります。

「南京大虐殺」も同じです。「大虐殺」と批判されても、実際に南京で
戦った元軍人たちはそのようなことは一切ないと語ります。慰安婦を強
制連行して奴隷の如く扱ったと言われても、事実ではないと少なからぬ
存命の先人たちが訴えています。

 大東亜戦争は歴史になりきってはいないのです。歴史になりきってい
ない生々しさの残る事柄を無理矢理、歴史と見做し、「これが歴史の真
実だ」と突きつけ、認識を共有せよと言われているのが、いまの日本で
はないでしょうか。

 自分から完全に切り離しにくい問題であるからこそ、私たちは一所懸
命、事の本質、真実を見つけようとするのではないでしょうか。複雑な
事柄だけに、この問題に関しては多くの方々の多くの見方があります。
そこで今日は、考えるための材料をひとつふたつ提供したいと思います。

 まず、韓国ソウル大学経済学部教授の李 榮薫(イ・ヨンフン)氏が
書いた『大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ』です。
文藝春秋から出版されました。

 李教授は政治学の教授ではないこともあり、政治的イデオロギーから
比較的自由な地平に身を置いています。経済学の教授ですから歴史問題
を扱うにしても数字をはじめ客観的基準を重視します。議論の立て方は
比較的公正だと、私は思います。


韓国人の歴史観

 同書で李教授は、韓国では過去130年間の近現代史を以下のように
汚辱の歴史として教えていると説明します。

「宝石にも似た美しい文化をもつ李氏朝鮮王朝が、強盗である日本の侵
入を受けた。それ以後は民族の反逆者である親日派たちが大手を振った
時代だった。日本からの解放はもう一つの占領軍であるアメリカが入っ
て来た事件だった。すると親日派はわれ先に親米の事大主義者にその姿
を変えた。民族の分断も、悲劇の朝鮮戦争も、これら民族の反逆者たち
のせいだった」

 けれど、このような捉え方は間違っている、恨みに溢れる歴史認識を
超えて事実を見ることが大事であると李氏は主張します。そのような姿
勢で、李氏は慰安婦問題も論じています。調査の結果、李教授が辿り着
いた結論をいくつかご紹介しましょう。

 たとえば、いま韓国は、日本が13歳の少女までも慰安婦として強制
連行したと主張しています。日本が朝鮮の純潔な乙女を挺身隊という名
で動員し、日本軍の慰安婦としたというのです。そのような事実は存在
しないのですが、韓国側は飽くまでも主張します。


挺身隊と慰安婦は別々だった

 李教授はそもそも全く別物だった挺身隊と慰安婦が結びつけられ始め
たひとつのきっかけが、金廷漢(キム・ジョンハン)という作家が書い
た『修羅道』という小説だったと見ています。日本の軍需工場に就職し
た挺身隊の女性たちが「ことごとく日本の兵隊の慰安婦として中国の南
方に連れて行かれた」と小説には書かれています。挺身隊は慰安婦だと
考える韓国の人たちの集団記憶は、このようにして作られ始めたと李教
授はいうのです。

 この誤解は70年代、80年代に韓国人の心に醸成されていき、90
年代には誰も否定することが出来ないほど強固に定着しました。無論、
マスコミが大きな役割を果たしたのは言うまでもありません。

「マスコミが先を争って、幼い少女たちが挺身隊という名で慰安婦とし
て強制連行されたと報道する中、慰安婦の残酷な実相を告発する小説や
映画が次々とでてきました」と、李教授。

 幼い少女たちを慰安婦にした、強制したという限りなく罪深いイメー
ジが定着する中で、慰安婦の女性たちは酷い扱いを受けたという認識も
広がっていきました。実際に女性たちはどのように扱われていたのでし
ょうか。

 李教授は「記録によれば、わりあい自由に市街を出歩いた女性もいま
したが、大抵は行動の自由が奪われた奴隷のような境遇だったと考えら
れます」と書いています。

 しかし、「兵士(の料金)はおおむね一円から二円でした。兵士の月
給が七円から十円だったことを考えますと、慰安所の利用することは少
なからぬ負担だった」、驚くほどの大金を得た慰安婦の事例も「それほ
ど稀なことでもありませんでした」とも李教授は指摘しています。

「中国の漢口には日本女性百三十名と朝鮮女性百五十名が収容された大
規模な慰安所がありましたが、そこに慶子という名前の朝鮮人慰安婦が
いました。彼女はすでに三万円を貯めていたのですが、貯金が五万円に
なったら京城(ソウル)に戻って小料理屋をするという夢を持っていま
した。この話を聞いた司令官は『なんとたいしたオナゴであるか』と表
彰したといいます」

 一九四二年当時、他家の賄い婦勤めをすると、ひと月に十一円の給料
だったそうです。 しかし、いくら経済的に潤っても、慰安婦の境遇は
悲惨です。李教授は慰安婦という「性奴隷の制度」を作った日本に対し
て「日本軍と日本政府はこのような犯罪行為に対して、直接に手を下し
ていないとしても、犯罪行為を教唆した責任は免れません」と厳しい批
判を浴びせています。


朝鮮戦争でのこと

 同時に教授は、軍による管理売春は朝鮮戦争当時にも存在したと、意
外なことも指摘しています。

「ソウル、春川、春州、江陵、束草などに慰安部隊が設置されていまし
た。ソウルの慰安所は、現在中区にあるペク病院から双龍ビルへ行く坂
道にありました。公式報道によれば、一九五二年にソウルの三か所と江
陵の一か所に収容された慰安婦は全部で八十九名だったといいます。そ
して、その年に慰安所を訪れた兵士の総数は二十万四千名あまり」だっ
たというのです。

 さらに「一九六二年段階で登録されていた二万名以上の慰安婦が、六
万五千名の米兵に性的なサービスを提供していました」とも率直に書い
ています。

 だからといって李教授が日本に免罪符を与えているわけではありませ
ん。「公式名称が同じだからといって、米軍の慰安婦を日本軍の慰安婦
と同一視することはできないと思います。日本軍の慰安婦は行動の自由
が奪われた性奴隷でした。それに比べれば米軍の慰安婦は自由な身分で
あり、あくまでも自発的な契約でした」というのです。

 李教授の指摘に思わず嘆息せざるを得ません。そしてあの時代、戦争
、貧困、女性への蔑視などの中でどれほど多くの女性が苦悩の中で喘い
でいたかに心が痛みます。


在米韓国人学者の見方

 もうひとり、ここで触れたい研究者がいます。私の恩師、ジョージ・
アキタ先生です。先生が間もなく出版予定の著書「日本の朝鮮統治は公
平だった」(仮題)の中で、サンフランシスコ州立大学人類学のC・サ
ラ・ソウ教授の研究の一端を紹介しています。ソウ教授は韓国系米国人
で漢字名は蘇貞姫です。

「ソウは、大半の女性たちは周旋業者に騙されて売春を始めたとの主張
は間違っているとの立場を取る。ほとんどの場合、従軍慰安婦になる過
程は開かれたものであり、当該の女性(とその家族)は、自分の行く先
が売春宿であることを認識していた」とアキタ先生はソウ教授の著書を
引用しています。

「当時、おびただしい数の朝鮮人女性が、父親または夫によって売春宿
に売られたり、あるいは一家を貧困から救うために自ら進んでその道を
選んだりしていた。朝鮮の儒教的父権社会にあっては、女性は使い捨て
可能な人的資源として扱われたのだった」

「これらの女性はほとんどが朝鮮人の仲介人に買われたが、日本人の周
旋業者も多かった」

「ここでわれわれは慰安婦集めのあらゆる過程で朝鮮人の存在が重大な
鍵を握っていたことを認識する。朝鮮の男性は女性の家族構成員を朝鮮
人の斡旋業者に売り、それら業者が彼女たちを売春宿に売ったのである
。朝鮮の女性は構造的暴力の犠牲者であり、父権主義的な朝鮮社会にお
いて家庭では発言権を奪われ、植民地制度ゆえに自らの苦境に抗う機会
はほとんどなかった」と、ソウ教授は書いています。

 彼女はまた「日本兵が日本人、あるいは朝鮮人の軍慰安所の経営者に
対して、自らが受けた性的サービスの代価をきちんと支払った、と軍慰
安所に関するほとんどの記述が記している点に注目」し、「女性たちに
賃金を支払うか否かは、経営者次第だった」ことも明記しています。


歴史に取り残された日本人女性

 一方、アキタ先生は「議論の中でしばしば無視されてきたのが、多く
の日本人慰安婦である」と指摘します。

「日本人売春婦たちとて、朝鮮人の売春婦たちと同様の犠牲を払わされ
ていたのである。彼女らの多くは貧困家庭の出で、家長によって売春宿
に売りに出されている。しかし、国際社会はこれらの女性たちが味わっ
た塗炭の苦しみについて、なぜか憤慨しない」と。

 慰安婦問題には本当に複雑な事情がつきまといます。それだけに出来
るだけ多くの人のはなしに耳を傾け、幅広い資料を読むことが大事です。

 ここでご紹介した2人の韓国人学者の研究が何らかの形で皆さん方の
お役に立てばと思います。こうした地道な研究から、韓国や中国の主張
が思い込み、または捏造であることが自ずと明らかになる日が必ず来る
と、私は考えています。

                           櫻井よしこ


※記事、画像等の許可なき転載複写並びに二次的利用はお断りいたします。

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