- 2024.09.12
- 一般公開
「南海トラフ70%」の“嘘”と島崎邦彦氏
『週刊新潮』 2024年9月12日号日本ルネッサンス 第1113回今年の新潮ドキュメント賞受賞作『南海トラフ地震の真実』(小沢慧一著、東京新聞)には驚いた。読み進む内に、わが国に巣食う無責任な学者・研究者たちへの猛烈な憤りが湧いてきた。彼らが専門性の壁のうしろに隠れて、根拠のない非科学的な論理を展開し、危機へのわが国の対応を歪め、日本社会と多くの国民に害をなしているからである。題名が示すように小沢氏は「30年以内に70%の確率で発生する」として広く警告されてきた南海トラフ地震説の真実を暴いた。真実は、70%説は「水増しがされ」た数字で、多くの地震学者は「『信頼できない』と考えて」いるというのだ。過日「南海トラフ地震臨時情報」が発出されたのは記憶に新しい。私は情報をチェックしながら、「いよいよ来るのか」という緊張感を抱いたが、日本中の多くの人も同様に感じたはずだ。旅行の予約は少なからずキャンセルされ、スーパーマーケットでは水やトイレットペーパーが品薄になった。岸田文雄首相は中央アジア・モンゴル首脳会合を欠席し、その判断の是非を問われた。政府の地震調査委員会が「30年以内、確率70%」と公表し、度々警告している中での混乱で経済的損失も少なくなかったはずだ。...