闘うコラム大全集

  • 2013.04.04
  • 一般公開

基地問題、沖縄の本音と建前

『週刊新潮』 2013年4月4日号
日本ルネッサンス 第552回


普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設に向けて、3月22日、安倍政権が公有水面埋め立て承認申請書を沖縄県北部土木事務所に提出した。沖縄の2大紙、「琉球新報」も「沖縄タイムス」も翌日の朝刊で一斉に報じたが、紙面が反対論で埋め尽くされたのは予想通りだった。以降、「反対」を基軸に報道が過熱していくであろうことは、これまでの事例から容易に推測出来る。

歴史問題や軍事問題となると必ずといってよい程、沖縄2紙は驚くべき片寄りに陥る。今回の申請書提出に関する報道もまた然りである。両紙に共通するのは「木を見て森を見ない」報道である。たとえば申請書提出を「民主主義否定する暴挙」(琉球新報社説)、「この国はゆがんでいる」(沖縄タイムス社説)ととらえ、政府の申請書提出を、「『米国への誓い』優先」(沖縄タイムス2面)、「県民意思より同盟」(琉球新報3面)などとして、専ら、安倍晋三首相が先の訪米でオバマ大統領に約束したことを履行するためと位置づける。

両紙共に普天間飛行場をなぜ、県外でなく県内北部の辺野古に移す必要があるのかという説明を全くしない。というより、尖閣問題や中国の脅威が「在沖米軍基地の維持強化を図る論理に利用されている」(沖縄タイムス社説、2012年11月11日)という見方をとるために眼前の中国の脅威は二の次になるのである。

彼らは中国がいま、何をしようとしているかなど見ようとしない。中国は3月5日、国防予算案を前年度比で10・7%ふやして7,400億元余り(約11兆1,000億円)と発表した。習近平国家主席は「中国の夢をかなえるには強大な軍隊が必要」「(領土・領海などで)国家の核心的利益を絶対に犠牲にしない」と繰り返す。

習主席はまた3月17日の全国人民代表大会の閉幕に当たって、「戦争に打ち勝てる強い軍にするとの目標」を語った。全世界が注目する全人代で「戦争に勝てる軍」を目指すと明言するのは異例中の異例である。

木は見るが森は見ない

この中国の尋常ならざる強硬姿勢とその脅威に対処するための軍事的備えが、いまの日本には必要なのだ。普天間飛行場を県外でなく辺野古に移し、県内にとどめるのはそのためだ。海上保安庁と自衛隊の力で尖閣諸島と東シナ海を守り通すのが原則だが、米国との同盟関係を強化し、日米同盟の枠組みで危機に対処する構えが日本にとって死活的に重要であることを、沖縄2紙は報じない。

奇妙なのは、2紙共に、習主席が初の外遊でロシアを訪れプーチン大統領と首脳会談を行い、北方領土や尖閣諸島を念頭に両国の戦略関係を強化したことを同じ日の紙面で報じながら、中露の動きから日米同盟強化の必要性を導き出す分析力が欠落しているのである。今回の習・プーチン会談の記事も同様だが、両紙の国際報道は往々にして共同通信の配信記事を一字一句そのまま使用することで成立している。他社の配信に頼るために、そのニュースを理解して問題提起することが出来ないのであろうか。

木は見るが森は見ないために、両紙はニュースの全体像を描くこともない。普天間飛行場の辺野古への移設は米軍再編の一環であり、それに伴って米軍嘉手納基地以南の5施設・区域が返還され、米軍基地が現在沖縄の全面積の19%を占めている状態が12%へと大幅に減少することの意義もきちんと説明しない。

負担軽減は沖縄県民の願いであり、基地反対派も常に求めてきた。だからこそ安倍首相は日米首脳会談でもこの点をとり上げ、基地返還を日程も含めて具体的に明示すると語っている。だが、このように沖縄の要求が具体化し始めると、沖縄はなぜかそれを逆手にとる。たとえば、沖縄タイムスはこう報じた。

「政府側は今後、嘉手納より南の施設・区域返還など『負担軽減策』をてこに、知事の柔軟姿勢を引き出そうと躍起になるのは間違いない」(3月23日、朝刊2面)

県民負担を軽減しつつ、尖閣・東シナ海、沖縄防衛に努力することを非難がましく表現するのだ。国の防衛努力を評価せずに逆手にとる事例は与那国町の場合も同じである。

同町の外間守吉町長はかつて自衛隊誘致に奔走した人物だ。2009年6月30日には自民党の浜田靖一防衛大臣(当時、以下同)に、2010年1月12日には民主党の北澤俊美防衛大臣に、与那国町への陸上自衛隊誘致を、上京して陳情した。北澤氏は陳情を受けて与那国町を訪れたが、そのときの印象をこう語った。

「1日も早く自衛隊に来て欲しいということで、大歓迎されました。役場で用地の選定についても話し合い、具体的に決めました」

私も幾度か与那国島を取材し、経済的要因と中国の脅威という2つの理由で、1日も早い自衛隊誘致を望む町長らの言葉を聞いた。

ところがいま、外間町長は自衛隊に10億円の「迷惑料」を要求するのである。町長自身が熱心に足を運んで陳情したにも拘らず、いまになって「迷惑料」というのである。

真意を読みとる

こうしたことを見れば、沖縄は「奇々怪々」に見える。しかし、冷静に見れば解決の糸口も見えてくる。「冷静に見る」ことの第1歩は、沖縄2紙の報道の片寄りを知り、その報道が必ずしも沖縄の本音ではないと肝に銘ずることだ。第2に、知事や市長らの発言を注意深く読むことである。各自の発言を建前と本音の枠組みの中で分類し真意を読みとることだ。

普天間飛行場を抱える宜野湾市の佐喜眞淳市長は、埋め立て申請を「唐突」、「県外(移設)がベスト」としながら「市民が待ち望んでいるのは一日も早い返還。政府が責任をもって整理していくのが県民への誠意」(沖縄タイムス)と語っている。

この発言は、一日も早く普天間飛行場跡地を返還してほしいという点に尽きる。「県外がベスト」だが、そうでない場合も反対する姿勢ではないことが読みとれる。

普天間飛行場の移設先、辺野古区の大城康昌区長は、同じく沖縄タイムスに次の発言を寄せた。

「淡々とやってほしいと国に協力してきたのに、県や市の様子を気にしすぎて(提出が)長引いた。国は名護漁協が求める補償額をきちんと受け入れるべきだ」

埋め立て申請は遅すぎたといっているが、評価しているのである。漁協への補償額は漁協側の意向もあって明らかにされていないが決着した。
こうして見ると普天間を抱える側と、その移設を受け入れる側の柔軟性が見えてくる。安倍首相は揺るがずに辺野古への移設を進めるのがよい。それが結局沖縄の人々のためでもあることは、必ず、明らかになる。

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