闘うコラム大全集

  • 2018.01.25
  • 一般公開

中国マネーの後には死屍累々

『週刊新潮』 2018年1月25日号

日本ルネッサンス 第787回


1月8日、成人の日のニュースに驚いた。東京23区の新成人、約8万3000人の内、1万人余り、8人に1人が外国人だというのだ。


とりわけ外国人比率が高いのが新宿区で46%、以下、豊島区38%、中野区27%、荒川区26%、台東区26%だった。国籍による内訳は示されていないが、留学生に占める比率などから、新成人の多くが中国籍の若者だと見てよいだろう。


日本が広く開かれた国であるとはいっても、区によっては新成人の約半分が外国人という現実の意味を、深く考えなければならない。とりわけ中国の人々はどこにいても、中国共産党の指導の下にある。その、中国はどんな方向に向かっているのか。


1月12日、中国共産党の政治局会議で「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」が中国憲法に盛り込まれることが確認された。


現役の主席の思想が憲法に書き込まれるのは毛沢東以来のことだ。習氏は自らを毛沢東に並ぶ権力の座に押し上げ、中華民族が「世界の諸民族の中にそびえ立つ」ことを目指している。その手段は強い経済力と強い軍事力である。貧しい国には返済しきれない程の巨額の資金を提供し、返済が滞ると国土や港を取る。相手国で中国への反発が高まりそうになると、金の力で、或いは知識人や留学生を総動員して、政治の力で封じ込める。軍事的圧力もかける。


だが、そのような中国の帝国主義的横暴に世界各国が、小さなアジアの国々も含めて、気づき始めている。最も警戒心の薄いのが日本ではないだろうか。その意味で以下の事例を日本人は心に刻んでおきたい。


昨年11月、25億ドル(約2750億円)に上るネパールのブディガンダキ水力発電所の建設計画が突然、キャンセルされた。利益の殆んど全てが中国企業に吸い取られ、ネパールは得るものがないという理由からだった。


欧州連合(EU)は、中国企業によるハンガリーからセルビアに至る高速鉄道建設計画に関して、ハンガリーがEUのルールに反して中国企業と契約したとして調査を開始、事業は中断に追い込まれた。


破綻への道


親中派のアウン・サン・スー・チー氏が率いるミャンマーでも異変が起きている。中国企業が取りかかった30億ドル規模の石油精製工場建設を、ミャンマー側が拒否したのだ。


パキスタンは中国を「鉄の兄貴」(Iron Brother)と呼ぶが、中国が力を入れていたディアメル・バシャ・ダム建設計画を中断した。中国がダムの所有権を要求したのが理由だ。


同ダムは、パキスタンとインドが領有権を争う戦略的に重要な地域、カシミール地方に立地するが、これを中国は自国領にしようと企んだと思われる。


トランプ米大統領が今年1月4日に軍事援助を停止したこともあり、パキスタンは中国への傾斜を強めるが、彼らは元々中国への依存度が高く、総額600億ドル(約6兆6000億円)のさまざまなプロジェクトを組んでいる。その中で中断されたのは前述のダムだけではない。


ホルムズ海峡の出入口を睨むグワダル港は事実上中国海軍の拠点にされたが、そこに空港建設計画が浮上した。加えて中国西部からカラチを経てグワダルに至る鉄道建設も計画されていた。だが、いずれの計画についても昨年11月、両国の話し合いは物別れに終わった。中国依存度の高いパキスタンでさえ中国のプロジェクトに「ノー」と言ったことに世界は驚いた。


タイは150億ドル(約1兆6500億円)の高速鉄道計画を2016年に一旦中断し、昨年7月、タイ企業の受注分を増やすとともに中国の技術による建設が決まった。


中国が計画し、貸し付け、圧倒的に中国企業が受注するこれらインフラ事業は、受け入れ国が抵抗すればわずかに修正されるが、根本的な修正は一切あり得ない。貧しい国々は潤沢な貸付金に目が眩み、破綻への道だとわかっていても踏みとどまれない。


タンザニアがそのいい例だ。バガモヨ市の港建設を含めて彼らは中国から110億ドル(約1兆2100億円)という巨額資金を借り入れた。プロジェクト遂行にはタンザニア政府が2.8億ドル(約308億円)、総額の2.5%を負担しなければならない。だが、タンザニア政府はそれさえも捻出できない。金利や元金の支払いは不可能だろう。つまり、事実上借金地獄に落ちたのである。これから、タンザニアに何が起きるか。スリランカの事例から容易に見てとれる。


スリランカ政府は中国資本を借り入れて建設した要衝の港、ハンバントタの経営に行き詰まり、株の80%を99年間中国企業に譲った。事実上の売却である。中国はイギリスに香港を99年間支配され、期限が来たとき取り戻した。そんな力が99年後のタンザニアやスリランカにあるだろうか。


中国による政治工作


小国が奪われ続けるこうした事例が中国の進出する先々で起きている。


オーストラリアのターンブル首相は、押し寄せる中国の影響力に対処するために、昨年12月、外国人による政治献金を禁止する法案を議会に提出した。地元メディアは中国が組織的に豪州政治への浸透工作を行っていると報じ、その一例として野党労働党のサム・ダスチャリ上院議員が党の政策に反して、中国の南シナ海での領有権主張を支持する発言をしたことを伝えた。


産経新聞も昨年11月21日、豪州で、政治家や留学生を利用した中国による政治工作が活発化していることを報じている。ブランディス司法長官は中国共産党がロビー団体や財界人などを駆使し、地方や連邦政府に組織的な工作を仕掛けていると懸念を表明した。豪州の大学で学ぶ20万人近くの中国人学生が、在豪の中国大使館や領事館の指示を受け、中国に不利な内容の授業内容に集団で抗議をするなど、露骨な中国擁護活動を頻繁に展開しているというのだ。


貧しく力の無い国々に対して、中国政府は極悪サラ金業者のように振る舞い、他の国々には巧妙に政治的影響力を及ぼそうとする。或いは軍事力の行使も厭わない。


資金と技術が欲しい中国は、日本に笑顔で一帯一路への協力を呼びかけているにも拘らず、尖閣諸島の接続水域には軍艦と攻撃型原子力潜水艦を同時に侵入させる。3隻の公船もその後領海に侵入した。関係改善を求めながらなぜこんなことをするのかと問うのは愚問である。中国はそういう国である。その中国の資本に国土を買い取られ、多数の人口が流入しつつあるという現実を、日本はもっと警戒しなければならないだろう。

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