元気になるメルマガ

  • 2013.08.15
  • 一般公開

南西の海の守りを急げ!

 今月11日、日本の西の国境の島、与那国島で町長選挙が行われまし
た。有権者数1,128人の選挙の争点は、自衛隊をこの島に配備する
かどうかでした。町民の関心は非常に高く、投票率は95・48%。結
論を言えば、自衛隊誘致を公約に掲げた現職の外間守吉氏が553票を
獲得し、対立候補の崎原正吉氏に47票差で勝ちました。

 これで自衛隊の配備は着実に進むと思います。この島の周辺海域、そ
して沖縄を含む南西諸島海域への中国の侵出振りを見れば、一刻の猶予
もならないというのが実感です。ここでちょっと与那国島の現状を確認
しておきましょう。九州南端の鹿児島から沖縄本島まで約500キロメ
ートルあります。与那国島はそこからさらに約500キロ、つまり九州
南端から1,000キロ強も離れたところに位置しているのです。

 南西諸島が散らばるこの広大な海には豊かな漁場が広がり、その海底
には天然ガスなど豊富な資源が埋蔵されています。加えてこの海には非
常に重要な戦略的意味があります。この海を中国がおさえれば彼らには
比較的容易に台湾を手中におさめることが出来るようになります。台湾
をとれば南シナ海を中国の内海にすることも比較的容易に可能になりま
す。つまり、太平洋の西半分とインド洋を支配するという中国の野望が
現実に近づくのです。

 にも拘わらず、安全保障面から見るとこの大事な海域には空白ばかり
が目立ちます。空白というのは、本来日本が守りを固めておかなければ
ならないにも拘わらず、その体制が出来ておらず、もし中国が侵出して
きたら半ば以上お手上げ状態になりかねないという意味です。たとえば
陸上自衛隊は沖縄本島には配備されていますが、そこから先は全く配備
されていません。宮古島にはレーダー基地が置かれていますが実戦部隊
はいません。これでどのようにして、日本の海を取りにかかっている中
国の侵出を防ぐことが出来るでしょうか。


# 与那国島に中国の脅威

 こうした状況の中で2008年、与那国島から自衛隊を島に配備して
ほしいという声があがったのです。その頃私は与那国島を取材しました
。そこで与那国島の防衛協会副会長で牧場を営んでいる糸数健一さんに
お会いしました。糸数さんは毎日、自分の牧場の見回りをかねて、早朝
マラソンをします。マラソンの最後に、小高い丘の上から海を眺めます。
そのときにしばしば中国の船を見かけるというのです。

「目視出来るような近距離にいるんです。日本の海なのに、中国船が入
ってくる。それなのにこの島には自衛隊もいません。島を守るのは警官
が2名だけです。勿論、我々もいざとなれば島を守るために加勢します
が、どう考えても、日本が国としてもっと本腰を入れて防衛体勢を強化
しなければならないと思います。自衛隊を是非、この島に駐屯させてほ
しいと思います」

 本土の新聞やニュース番組では、自衛隊誘致への賛成派と反対派が与
那国をはじめ沖縄各地で反目し続けているというふうに対立構図で報道
されます。私もこの記事の冒頭で与那国島の選挙を「自衛隊誘致派の外
間氏と対立候補」と描写しました。でもそれは必ずしも正確ではないか
もしれません。なぜなら対立候補の崎原氏は当初こそ、自衛隊誘致に反
対と言っていましたが、それでは勝てそうにないと判断し、選挙戦終盤
になって「反対」を取り下げ、自衛隊を誘致するかどうかを決める住民
投票を実施すべきだという主張に転換したからです。


# 与那国島の決断

 町長に三選された外間守吉さんが私に言いました。

「町長選では経済と暮しが最大の争点でした。本土の人はなぜ安全保障
が最大の争点にならないのかと問いますが、国の安保を小さな町の町長
が論じても仕方がないです。自治体としては住民の安全と繁栄を保てる
ように、国と協力することが大事です。与那国島の人たちは、これまで
複数の選挙で自衛隊受け入れの意思表示をしてきました。自衛隊を受け
入れますよ、と。その点は、島の我々にとって、なんの疑問もないので
す」

 外間氏の発言の背景を辿ってみましょう。与那国町は前述したように
2008年に自衛隊を島に誘致することを町議会で可決しました。以来
、09年の町長選挙、町議会議員選挙をはじめ町内でさまざまな選挙が
行われましたが、すべての選挙で自衛隊誘致に賛成派の人々が勝利をお
さめてきました。今回も、票差は大きくありませんが、自衛隊配備賛成
派の外間氏が勝ちました。反対候補の崎原氏が選挙戦の途中から自衛隊
配備に反対とは言わなくなったことはすでに述べました。

 外間町長の指摘するように、島の人たちの多くが自衛隊を受け入れて
いるのは確かなのです。外間町長はこうした状況を受けて、言いました。

「選挙の終わったいま、自衛隊の配備は計画に従ってきちんと進めます」

 こうした状況を受けて、私は過日、陸上自衛隊の幹部に尋ねました。
陸自の計画を見ると、与那国島での調査をして、土地を借りて、宿舎を
作り、施設を作り、そこに実際に駐屯部隊を派遣するのは三年も四年も
先のことになる、けれどもそんなことでは間に合わないのではありませ
んか、と。中国の脅威は日本国の予算に合わせてやってくるのではない
わけですから、断固として尖閣諸島も日本の海も、住民の安寧も守り抜
くという決意が必要なのではありませんか、と。そのためには、陸自は
施設が完成しなくてもまずテントを張って、隊員を送り込んで、わが国
の西の国境から中国の動きを監視する、侵略は許さないということを行
動で示して中国に抑止力を働かせることが大事ではありませんか、と問
いました。

 するとその幹部は、自分たちもそう考えていること、中国の脅威は見
た目以上に日本に迫っていると考えなければならないことなどを指摘し、
構えは出来ていますと、断言しました。

 外間氏の言うように、与那国島の選挙も終わって晴れて自衛隊積極誘
致が承認されたいま、自衛隊配備を急ピッチで進めなければならないと
思います。


# 島の人々の心配

 日本の海の守りがあらゆる面で手薄であることは、すでに多くの日本
国民の知るところですが、その実態を知れば知るほど、心配になること
があります。それは守りが手薄ということが、単に自衛隊が配備されて
いないということにとどまらないからです。島々の、ある意味ではもっ
と深刻な問題は、経済的自立が難しく、若い人たちを中心に島の人口が
減り続けていることなのです。

 与那国島の場合、今年6月末で住民は子供も入れると1,550人、
人口減少の理由のひとつが中央政府の予算削減です。住民生活を支える
さまざまな施設が島からなくなっていきつつあるのです。

 たとえば高校です。高校がなくなったために、島の子供たちは中学を
修了すると石垣島などのより大きな島の高校に進みます。15歳で島を
離れる子供たち、これを島の人々は「15の旅立ち」と言います。15
歳で旅立った子供たちの多くは、石垣島やさらに遠い”本土“など、古里
の島以外の場所で就職し、結婚し、そして島には戻りません。

 病院も同様です。島に診療所はありますが、そこには産婦人科のお医
者さんはいません。結果としてお産はすべて石垣島など島外で行われま
す。

「島生まれ」がいなくなっているんですと、島で牧畜を営んでいる糸数
健一さんは嘆き、その一方で島で行われる素晴らしいお葬式のはなしを
して下さいました。

「大層不敬の言葉かもしれませんが、私は昭和天皇の大喪の礼を拝見し
たとき、全身に鳥肌が立つような思いに打たれました。与那国島で行わ
れる葬送の儀式と多くの点で似ていたからです。私はあの大喪の礼を拝
見して、私たち与那国島の人間は真に日本人なんだと電気に打たれたよ
うに実感しました」

 島の方々は亡くなった方々をこの上なく丁寧に心込めてお送りします。
お墓も立派な佇まいで並んでいます。島のお葬式から見る伝統の深さに
ついて、改めて詳しく語りたいと、糸数さんは言いました。

 それにしても高校がなくなり、島ではお産も出来なくなっているとい
うのは、なんと侘びしいことでしょうか。

 中央政府の予算削減は他の分野にも及んでいます。気象観測所も、法
務局も閉鎖されました。入国管理事務所も食肉処理施設も、合理化で閉
鎖されました。およそ一切の公的機関が島から消えて、島の衰退に拍車
をかけてきたのです。

「かつて我々はお祝いのときや寄り合いがあるときは牛を一頭捌いて、
皆で島自慢の与那国牛を食べていたものです。しかし、それも儘ならな
くなりました」

 こう、糸数さんは訴えます。

 実は与那国島には与那国牛という彼らが自慢する牛がいるのです。牧
畜は島の基幹産業のひとつですが、食肉処理施設が閉鎖されたために、
島の牛は高いコストをかけて石垣島に運ばれ、そこで処理されます。島
の人々が自分たちの育てた牛を食べるのにも、一旦島外に運び、そこで
処理して再び運び込まなければなりません。一手間も二手間も余計にか
かるようになったと、彼らはこぼします。これでは商品としても競争力
を失ってしまいます。

 こうした状況の下で、中国の船が島周辺にも度々出没するようになっ
たのです。その進出の度合いは年毎に月毎に激しくなっています。


# 島のこれから

 糸数さんは、町長選挙で自衛隊の島への配備がより鮮明になったいま、
自衛隊が一日も早く現地に展開し、生活や経済の面でも住民の不安解消
に貢献してほしいと、切望の言葉を語りました。

 8月15日現在で、尖閣諸島周辺には中国海警局の公船が4隻も入っ
ています。連続30日、中国の船が日本の領海や接続水域に入っている
のです。

 この異常事態に対処出来るのは、糸数さんの指摘するように、海上保
安庁であり、自衛隊です。沖縄本島にしか自衛隊が存在せず、他の島々
が空白のまま取り残されている事態を、一刻も早く改善しなければなり
ません。安倍政権は、来年度予算で自衛隊の予算を顕著に増やすと明言
しています。予算増額、人員の大幅増加に加えて、やはり、私は集団的
自衛権の早期容認を実現すべきだと思います。

 そして何よりも、島の人々の暮しが成り立っていけるように、こうし
た離島にはたとえば特別の税の優遇制度などの実施が必要だと思います。


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